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驟雨
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数週間後、すっかり怪我も回復した私たちは、如月町へ向かうことにした。
「気をつけるんだよ」
「3人で帰ってこいよ」
文さんと源さんが、豪快に笑って見送ってくれた。
「はい。行ってきます」
「行ってくる」
そう答えて背を向ける。
「行ってらっしゃい」
2人の言葉にもう一度頷き歩き出す。
さぁ、最終決戦の始まりだ。
ここは、雨が降り続ける如月町。周りには、人の姿は無い。建物は全てボロボロに荒れていた。
「ひどいね」
「ああ。予想外の荒れ具合だ」
瓦礫の中を歩いて行く。
「…いた」
視線の先。漆黒の外套が風に揺れる。ソレはゆるりとこちらを振り返る。
「やはり来たか」
「ええ。お前を倒し、恭さんを取り戻す」
「覚悟しやがれ。憑鬼」
刀と短刀を構える
「ははっ。言っただろ?アイツはもういない」
「「黙れ」」
2つの声が重なる。さあ、踏み込め。
前のめりに憑鬼の懐に飛び込み、短刀を振り上げる。狙うは首元。
憑鬼が一歩下がる。
「ほお、前よりはやるようになったか」
その勢いのまま短刀を振り下ろし、追い込む。
「ちょこちょこと目障りな」
憑鬼の肩越しに玲の姿を見つける。口元に笑みが浮かぶ。
「…ふふ。引っかかった」
「おらぁっ!」
玲は、上空から思い切り頭をめがけ、刀を振り下ろす。
「くっ、上からか」
攻撃の重さに顔をしかめながらも、かろうじて刀を止める。鼓膜を震わす金属音。
「お前が恭さんと同じ力を持っているなら、1人では勝てない。でも2人のスピードとパワーを合わせたら、ちょうど互角になる」
腕を上げたことで空いた、憑鬼の腹部辺りに飛び込む。バランスを崩した彼を押し倒す。
玲が刀を振り上げた。
そして、その刀は憑鬼の身体を地面に縫い付けた。
動きが緩む。
その隙に私は彼の身体に馬乗りになった。上半身は玲。下半身は私が押さえ込む。
憑鬼は顔色も変えず、抵抗もしなかった。
私たちの、鼓動も呼吸も驚く程乱れていた。
憑鬼の胸元をめがけて、突き刺しかけた短刀が。添えた手が。ガタガタと忙しなく震え出す。
「…恭さん…」
「なあ、戻ってくれよ…」
玲の縋るような声。憑鬼を押さえ込む手が震えていた。
そこで、憑鬼は心底愉快そうに口元を歪めた。
「はははっ、どうした。早く我にトドメを刺せ。お前らがどんなに願ったって、もうその人格が戻ることはないのだからな」
恭さんとと全く同じ顔で、恭さんと全く違う言葉が吐き出されていく。
うるさい。うるさい。
「戻ってよ…ねぇっ」
ますます震えが大きくなる。ダメだダメだ。
殺したくないの。3人で帰るの。
私の願いは、ただ1つ。
「…甘っちょろいクソガキ共が」
「!」
その言葉に目を見開くと同時に、身体が吹き飛ばされる。
憑鬼の強烈な蹴りが叩き込まれた。
叩きつけられた壁から、身体を起こそうとすると、即座に飛んでくる無数の刃で、身体を壁に縫い止められる。
身動きが取れない。
「愚かな奴らだ。やはりお前らでは我に勝てないな」
ゆっくりと憑鬼が近づく。
「何とでも言えば良い」
叫べ。私たちの声はきっと、あの人に届く。
「ああ。好きに言えよ。俺は…」
「私はっ…!」
「「夜月恭哉を信じる」」
お願い。お願いだ。届いてくれ。
「ははははっ。信じたところで何も届きやしない。せいぜい仲良くあの世で暮らせ」
迫る刀。風を切る音が鼓膜を貫いた。
「気をつけるんだよ」
「3人で帰ってこいよ」
文さんと源さんが、豪快に笑って見送ってくれた。
「はい。行ってきます」
「行ってくる」
そう答えて背を向ける。
「行ってらっしゃい」
2人の言葉にもう一度頷き歩き出す。
さぁ、最終決戦の始まりだ。
ここは、雨が降り続ける如月町。周りには、人の姿は無い。建物は全てボロボロに荒れていた。
「ひどいね」
「ああ。予想外の荒れ具合だ」
瓦礫の中を歩いて行く。
「…いた」
視線の先。漆黒の外套が風に揺れる。ソレはゆるりとこちらを振り返る。
「やはり来たか」
「ええ。お前を倒し、恭さんを取り戻す」
「覚悟しやがれ。憑鬼」
刀と短刀を構える
「ははっ。言っただろ?アイツはもういない」
「「黙れ」」
2つの声が重なる。さあ、踏み込め。
前のめりに憑鬼の懐に飛び込み、短刀を振り上げる。狙うは首元。
憑鬼が一歩下がる。
「ほお、前よりはやるようになったか」
その勢いのまま短刀を振り下ろし、追い込む。
「ちょこちょこと目障りな」
憑鬼の肩越しに玲の姿を見つける。口元に笑みが浮かぶ。
「…ふふ。引っかかった」
「おらぁっ!」
玲は、上空から思い切り頭をめがけ、刀を振り下ろす。
「くっ、上からか」
攻撃の重さに顔をしかめながらも、かろうじて刀を止める。鼓膜を震わす金属音。
「お前が恭さんと同じ力を持っているなら、1人では勝てない。でも2人のスピードとパワーを合わせたら、ちょうど互角になる」
腕を上げたことで空いた、憑鬼の腹部辺りに飛び込む。バランスを崩した彼を押し倒す。
玲が刀を振り上げた。
そして、その刀は憑鬼の身体を地面に縫い付けた。
動きが緩む。
その隙に私は彼の身体に馬乗りになった。上半身は玲。下半身は私が押さえ込む。
憑鬼は顔色も変えず、抵抗もしなかった。
私たちの、鼓動も呼吸も驚く程乱れていた。
憑鬼の胸元をめがけて、突き刺しかけた短刀が。添えた手が。ガタガタと忙しなく震え出す。
「…恭さん…」
「なあ、戻ってくれよ…」
玲の縋るような声。憑鬼を押さえ込む手が震えていた。
そこで、憑鬼は心底愉快そうに口元を歪めた。
「はははっ、どうした。早く我にトドメを刺せ。お前らがどんなに願ったって、もうその人格が戻ることはないのだからな」
恭さんとと全く同じ顔で、恭さんと全く違う言葉が吐き出されていく。
うるさい。うるさい。
「戻ってよ…ねぇっ」
ますます震えが大きくなる。ダメだダメだ。
殺したくないの。3人で帰るの。
私の願いは、ただ1つ。
「…甘っちょろいクソガキ共が」
「!」
その言葉に目を見開くと同時に、身体が吹き飛ばされる。
憑鬼の強烈な蹴りが叩き込まれた。
叩きつけられた壁から、身体を起こそうとすると、即座に飛んでくる無数の刃で、身体を壁に縫い止められる。
身動きが取れない。
「愚かな奴らだ。やはりお前らでは我に勝てないな」
ゆっくりと憑鬼が近づく。
「何とでも言えば良い」
叫べ。私たちの声はきっと、あの人に届く。
「ああ。好きに言えよ。俺は…」
「私はっ…!」
「「夜月恭哉を信じる」」
お願い。お願いだ。届いてくれ。
「ははははっ。信じたところで何も届きやしない。せいぜい仲良くあの世で暮らせ」
迫る刀。風を切る音が鼓膜を貫いた。
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