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収穫祭祝賀の夜が明け、辺境リーヴェル領代理邸の庭園。凛とした空気に包まれた朝の庭園。薄氷の残る噴水の縁に、セリナは静かに腰掛けていた。昨夜の祝賀舞踏会で交わされた誓いとワルツの余韻は、まだ胸の奥で微かに震えている。
(星の下で踊ったときの温もりが、忘れられない……)
柔らかな琥珀色の灯火が二人の影を長く延ばし、鼓動を高鳴らせた。傍らには、冷えた夜露で濡れた草葉が朝陽を浴びてきらめいている。
セリナは手元に置いた小さな水瓶を手に取り、ゆっくりと水を口に含む。清冽な水が身体に染み渡り、思考は昨夜から今朝へと移りゆく。
(ここまで歩んできた道は、決して平坦ではなかった。辺境の復興、村人の信頼、そして…アレイスター様との絆)
言葉にせずとも、心の中で深い感謝が渦巻いている。しかし同時に、胸の奥には小さな不安も残る。
(王都では、まだ私を“影の令嬢”と呼ぶ声があるはずだ。あのレオニス王太子との因縁を、忘れた者などいない……)
薄紅の雲が東の空を染める頃、庭園の小径の石畳をかすかに響く足音が近づいた。セリナが顔を上げると、そこには深緑のマントではなく、冬の光を受けた銀色の朝露をまとったリーナが立っていた。
「おはようございます、セリナ様」
リーナは静かに微笑む。肌寒い朝に、彼女の白いマントが凛と映えていた。
「リーナ様、おはようございます。こんなに早くから…」
セリナは立ち上がり、ほのかな花の香りが漂う方へリーナ様を招いた。
「やはり、この庭園だけは朝露のうちに手入れをしておきたくて」
リーナが垣根を撫でるように剪定する指先には、慈しみの色がにじんでいる。
二人は並んで歩き始める。足元の苔むした石畳はしっとりと濡れ、草花が可憐に咲き残っていた。鳥のさえずりが遠くから聞こえ、朝の日射しが葉の隙間を黄金色に染める。
「昨夜は、本当に素敵でした」
リーナが静かに口を開いた。セリナは一瞬立ち止まり、遠くを見つめる。
「ええ…あなたたちのおかげで、心から楽しむことができました」
「あの誓いの場面、お二人の眼差しがとても輝いていて見ているこちらまで温かい気持ちになりましたわ」
リーナの言葉には、先日の茶会での計算とは違う、心からの祝福がこもっていた。
セリナは微笑みつつも、眉を少し寄せた。
「でも……私はまだ胸の奥で迷っているのです。王都の噂は本当に消えたのでしょうか。あのレオニス王太子との過去は…」
遠くで噴水が水を滴らせる音だけが、二人の言葉の間に静かに響いた。リーナは優しくセリナ様の腕に触れた。
「私も、完璧に過去の汚名を払拭したわけではありません。でも、清らかな朝を迎えられることこそ、過去を乗り越えた何よりの証です」
リーナの目には、深い信頼が灯っている。
「リーナ様……」
セリナはそっと呼び止め、隣に立つリーナを見つめた。冷たいと思われた自分が、救われた瞬間だった。
「私たち二人の信頼が、この領地の未来を支える光になります。どうか、その事実を胸に刻んでください」
リーナは笑顔で言い、セリナの手を取って軽く握り締めた。セリナもすっと笑みを返す。
「ええ、あなたとなら…勇気を持って前へ進めそうです」
二人は噴水前に戻り、朝日のきらめく水面を見やった。噴水の水滴が陽光を反射して煌めき、まるで小さな星々が波紋に乗って踊っているかのようだ。
(友情と信頼――それこそが、この先の道を照らす灯火になる)
セリナは心の中でそっと呟き、リーナと並んで庭園を後にした。
これが、二人だけの朝のひそやかな誓いだった。
(星の下で踊ったときの温もりが、忘れられない……)
柔らかな琥珀色の灯火が二人の影を長く延ばし、鼓動を高鳴らせた。傍らには、冷えた夜露で濡れた草葉が朝陽を浴びてきらめいている。
セリナは手元に置いた小さな水瓶を手に取り、ゆっくりと水を口に含む。清冽な水が身体に染み渡り、思考は昨夜から今朝へと移りゆく。
(ここまで歩んできた道は、決して平坦ではなかった。辺境の復興、村人の信頼、そして…アレイスター様との絆)
言葉にせずとも、心の中で深い感謝が渦巻いている。しかし同時に、胸の奥には小さな不安も残る。
(王都では、まだ私を“影の令嬢”と呼ぶ声があるはずだ。あのレオニス王太子との因縁を、忘れた者などいない……)
薄紅の雲が東の空を染める頃、庭園の小径の石畳をかすかに響く足音が近づいた。セリナが顔を上げると、そこには深緑のマントではなく、冬の光を受けた銀色の朝露をまとったリーナが立っていた。
「おはようございます、セリナ様」
リーナは静かに微笑む。肌寒い朝に、彼女の白いマントが凛と映えていた。
「リーナ様、おはようございます。こんなに早くから…」
セリナは立ち上がり、ほのかな花の香りが漂う方へリーナ様を招いた。
「やはり、この庭園だけは朝露のうちに手入れをしておきたくて」
リーナが垣根を撫でるように剪定する指先には、慈しみの色がにじんでいる。
二人は並んで歩き始める。足元の苔むした石畳はしっとりと濡れ、草花が可憐に咲き残っていた。鳥のさえずりが遠くから聞こえ、朝の日射しが葉の隙間を黄金色に染める。
「昨夜は、本当に素敵でした」
リーナが静かに口を開いた。セリナは一瞬立ち止まり、遠くを見つめる。
「ええ…あなたたちのおかげで、心から楽しむことができました」
「あの誓いの場面、お二人の眼差しがとても輝いていて見ているこちらまで温かい気持ちになりましたわ」
リーナの言葉には、先日の茶会での計算とは違う、心からの祝福がこもっていた。
セリナは微笑みつつも、眉を少し寄せた。
「でも……私はまだ胸の奥で迷っているのです。王都の噂は本当に消えたのでしょうか。あのレオニス王太子との過去は…」
遠くで噴水が水を滴らせる音だけが、二人の言葉の間に静かに響いた。リーナは優しくセリナ様の腕に触れた。
「私も、完璧に過去の汚名を払拭したわけではありません。でも、清らかな朝を迎えられることこそ、過去を乗り越えた何よりの証です」
リーナの目には、深い信頼が灯っている。
「リーナ様……」
セリナはそっと呼び止め、隣に立つリーナを見つめた。冷たいと思われた自分が、救われた瞬間だった。
「私たち二人の信頼が、この領地の未来を支える光になります。どうか、その事実を胸に刻んでください」
リーナは笑顔で言い、セリナの手を取って軽く握り締めた。セリナもすっと笑みを返す。
「ええ、あなたとなら…勇気を持って前へ進めそうです」
二人は噴水前に戻り、朝日のきらめく水面を見やった。噴水の水滴が陽光を反射して煌めき、まるで小さな星々が波紋に乗って踊っているかのようだ。
(友情と信頼――それこそが、この先の道を照らす灯火になる)
セリナは心の中でそっと呟き、リーナと並んで庭園を後にした。
これが、二人だけの朝のひそやかな誓いだった。
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