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「あなたはお留守番よ。」
「ふっ?」
「大人しくしているのよ。」
「ふふん?」
何で?と聞こえる。
何でって・・・。連れて行く訳ないでしょうに。
暫くするとブレンダがクロヒメを迎えに来てくれた。
中々離れないクロヒメ。
そのうち、アンも駆けつけてくれた。
私から引き離すのに、かなりの時間を要したが、なんとかピザート家の正門から出発する事が出来た。
「クロヒメにも困ったものね。」
「それだけ、お嬢様と一緒に居たいのでしょう。」
「帰ったら、ブラッシングしてあげないとね。」
貴族街の門へ着くと、いつも通りにリリアーヌは私を妹と偽った。
「平民街の方で、A級冒険者のヘスティナが待ってるんだぞ?お前の妹ってのに、もう無理があるだろっ!」
門番の人にリリアーヌが怒鳴られていた。
「頑張りました。」
「いや、おまっ。俺たち平民が頑張ったって、個別にA級冒険者なんて、雇えるわけないだろ。」
「実は、今回はお嬢様が私の妹に成りすましています。」
「はあ?」
「安全の為です。それとも何かあったら、あなたが責任をとれるのですか?」
「うっ・・・。」
結局、今回もゴリ押しで。
平民街側の門では、ヘスティナとレントン商会の職人が待っていた。
「お待ちしておりましたお嬢様。今回はレントン商会が馬車を用意しておりますので、そちらで参りましょう。いやあ、兄さんも奮発したなあ。」
職人でもある会頭の妹が、にこやかに私たちを出迎えた。
「普段は、どうやって宝石拾いに?」
「乗合馬車です。」
「そうなんだ。」
ふむ、A級冒険者に馬車の用意と、大丈夫かレントン商会。元取れるの?
少しだけ心配になった。
2頭立ての馬車に4人で乗り込み、いざ出発。
「エンリさん、最近の鉱山の様子は?」
馬車が走り出すと、ヘスティナさんがレントン商会の職人に聞いた。
へえ・・・エンリさんって名前なのか。
初めて知った。
まあ、普通、お店の人が名前を名乗る事なんてないもんね。
「様子というと?」
「宝石拾いには、クズやニートが集まるそうですから、治安は悪いのかと。」
「それは一昔前の話ですよね?」
「そうなのですか?」
「ええ、一昔前にテセウスの涙の話が再燃して、盛り上がったそうです。数十年に一度、そういったブームが沸き起こるみたいです。しかし、今は、そんな事もなく鉱夫と宝石関係の業者くらいしか居ません。」
「鉱夫ですか。」
鉱夫と言えば、荒くれ者のイメージが私にもある。
ヘスティナさんも、同じようだ。
「国の許可を得た鉱夫ですから、心配は無用ですよ。今回は、私の師匠も鉱夫として滞在していますし、絡まれるなんて事は、まずありません。」
「エンリさんの師匠がドワーフという事でしたね。」
「ええ、ドワーフの一団が居る場所で、無法を働く様な馬鹿は居ないと思います。」
「了解しました。」
二人の会話が終わるのを待って、私は疑問を口にした。
「テセウスの涙って何?」
「テセウスというのは、大昔に居たとされる盗賊です。」
エンリさんがテセウスの涙について説明してくれた。
「テセウスという盗賊がある国の秘宝を盗み、鉱山に隠したそうです。別件で捕まり、死罪を免れるために、秘宝の事を告げたのですが、何処の国も盗まれたという事実が存在しませんでした。結局、テセウスは涙を流しながら処刑された為、いつしか、その秘宝の事をテセウスの涙というようになったそうです。」
「盗まれた事実が無いの?」
「ええ、そう言い伝えられています。恐らく死罪を免れる為に嘘をついたのだろうと。」
「へえ。」
「そんな与太話を信じて、クズやニートが一攫千金を求め鉱山に宝石拾いに行った時代が、あったのですが、もちろん見つかる筈もなく、旅費と入鉱料で借金が嵩み、首が回らなくなる事から、クズやニートをどん底に突き落とす幻想の宝とも呼ばれています。」
「テセウスの涙が、幻想の宝か。どんな物なのかしら?」
「え?」
「だってどんな物なのか、わからないと探しようがないんじゃない?」
「確かにそうですね。実在しない物ですから、どんな物かもわからず、探していたんじゃないでしょうか?」
「なんとまあ・・・。」
もっと違う事に労力を使えばいいものを・・・。
私は呆れてしまった。
「一説には、魔水晶だと言われています。」
ヘスティナさんが答えてくれた。
「魔水晶なんですか?」
エンリさんが聞き返した。
「ええ、そういう噂があります。」
「魔水晶ってどういうもの?」
「魔水晶にも色々ありますが、テセウスの涙は、無色透明と言われています。」
まじかっ、何かエルフが言うと真実っぽい。
「エルフの伝承ですか?」
再びエンリさんが聞いた。
「いえ、冒険仲間から聞いた話です。」
「それじゃあ信憑性はありませんね。」
「ええ、あくまでも噂ですから。」
うーむ、テセウスの涙か。
欲しいとは思わないが、見てみたいかも?
道中は、そんな与太話に花を咲かせた。
「ふっ?」
「大人しくしているのよ。」
「ふふん?」
何で?と聞こえる。
何でって・・・。連れて行く訳ないでしょうに。
暫くするとブレンダがクロヒメを迎えに来てくれた。
中々離れないクロヒメ。
そのうち、アンも駆けつけてくれた。
私から引き離すのに、かなりの時間を要したが、なんとかピザート家の正門から出発する事が出来た。
「クロヒメにも困ったものね。」
「それだけ、お嬢様と一緒に居たいのでしょう。」
「帰ったら、ブラッシングしてあげないとね。」
貴族街の門へ着くと、いつも通りにリリアーヌは私を妹と偽った。
「平民街の方で、A級冒険者のヘスティナが待ってるんだぞ?お前の妹ってのに、もう無理があるだろっ!」
門番の人にリリアーヌが怒鳴られていた。
「頑張りました。」
「いや、おまっ。俺たち平民が頑張ったって、個別にA級冒険者なんて、雇えるわけないだろ。」
「実は、今回はお嬢様が私の妹に成りすましています。」
「はあ?」
「安全の為です。それとも何かあったら、あなたが責任をとれるのですか?」
「うっ・・・。」
結局、今回もゴリ押しで。
平民街側の門では、ヘスティナとレントン商会の職人が待っていた。
「お待ちしておりましたお嬢様。今回はレントン商会が馬車を用意しておりますので、そちらで参りましょう。いやあ、兄さんも奮発したなあ。」
職人でもある会頭の妹が、にこやかに私たちを出迎えた。
「普段は、どうやって宝石拾いに?」
「乗合馬車です。」
「そうなんだ。」
ふむ、A級冒険者に馬車の用意と、大丈夫かレントン商会。元取れるの?
少しだけ心配になった。
2頭立ての馬車に4人で乗り込み、いざ出発。
「エンリさん、最近の鉱山の様子は?」
馬車が走り出すと、ヘスティナさんがレントン商会の職人に聞いた。
へえ・・・エンリさんって名前なのか。
初めて知った。
まあ、普通、お店の人が名前を名乗る事なんてないもんね。
「様子というと?」
「宝石拾いには、クズやニートが集まるそうですから、治安は悪いのかと。」
「それは一昔前の話ですよね?」
「そうなのですか?」
「ええ、一昔前にテセウスの涙の話が再燃して、盛り上がったそうです。数十年に一度、そういったブームが沸き起こるみたいです。しかし、今は、そんな事もなく鉱夫と宝石関係の業者くらいしか居ません。」
「鉱夫ですか。」
鉱夫と言えば、荒くれ者のイメージが私にもある。
ヘスティナさんも、同じようだ。
「国の許可を得た鉱夫ですから、心配は無用ですよ。今回は、私の師匠も鉱夫として滞在していますし、絡まれるなんて事は、まずありません。」
「エンリさんの師匠がドワーフという事でしたね。」
「ええ、ドワーフの一団が居る場所で、無法を働く様な馬鹿は居ないと思います。」
「了解しました。」
二人の会話が終わるのを待って、私は疑問を口にした。
「テセウスの涙って何?」
「テセウスというのは、大昔に居たとされる盗賊です。」
エンリさんがテセウスの涙について説明してくれた。
「テセウスという盗賊がある国の秘宝を盗み、鉱山に隠したそうです。別件で捕まり、死罪を免れるために、秘宝の事を告げたのですが、何処の国も盗まれたという事実が存在しませんでした。結局、テセウスは涙を流しながら処刑された為、いつしか、その秘宝の事をテセウスの涙というようになったそうです。」
「盗まれた事実が無いの?」
「ええ、そう言い伝えられています。恐らく死罪を免れる為に嘘をついたのだろうと。」
「へえ。」
「そんな与太話を信じて、クズやニートが一攫千金を求め鉱山に宝石拾いに行った時代が、あったのですが、もちろん見つかる筈もなく、旅費と入鉱料で借金が嵩み、首が回らなくなる事から、クズやニートをどん底に突き落とす幻想の宝とも呼ばれています。」
「テセウスの涙が、幻想の宝か。どんな物なのかしら?」
「え?」
「だってどんな物なのか、わからないと探しようがないんじゃない?」
「確かにそうですね。実在しない物ですから、どんな物かもわからず、探していたんじゃないでしょうか?」
「なんとまあ・・・。」
もっと違う事に労力を使えばいいものを・・・。
私は呆れてしまった。
「一説には、魔水晶だと言われています。」
ヘスティナさんが答えてくれた。
「魔水晶なんですか?」
エンリさんが聞き返した。
「ええ、そういう噂があります。」
「魔水晶ってどういうもの?」
「魔水晶にも色々ありますが、テセウスの涙は、無色透明と言われています。」
まじかっ、何かエルフが言うと真実っぽい。
「エルフの伝承ですか?」
再びエンリさんが聞いた。
「いえ、冒険仲間から聞いた話です。」
「それじゃあ信憑性はありませんね。」
「ええ、あくまでも噂ですから。」
うーむ、テセウスの涙か。
欲しいとは思わないが、見てみたいかも?
道中は、そんな与太話に花を咲かせた。
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