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親友2

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3人の手当てをした保険医は言った。
「病院へ行かないと駄目ね。」
「やっぱり、あいつら殺してくる。」
立ち上がろうとした真斗を保険医が止めた。
「病院へ行かなきゃいけないのは、あなたよ。」
「これ位、問題ない。」
「大ありよ。拳が潰れてるでしょ。」
「俺はいい、それより勇気の方は?」
「それこそ、大した傷じゃないわ。」
「そうか。」
真斗はようやく落ち着いて座った。
「で、あいつらって誰?」
「3年が5人ほど屋上で死んでます。」
浩一が答えた。
「息の根は止めたの?」
保険医が聞いた。
「死んでねえよ。あれ位で人は死なない。」
勇気が答えた。
「あのねえ、ほっといたら死ぬでしょうがっ!」
はあとため息をついて、保険医は立ち上がった。
「他の先生に頼んで3年生を救護に行くから、あなた達は帰りなさい。間壁君は病院へ行くように。」
3人は、言われたとおりに下校した。
病院へ行こうとしなかった真斗だったが、勇気が無理やりに連れて行って、何とか治療はすんだ。

3年の番格が、学校へ登校してきたのは、それから1週間後、あちこちに治療跡が見受けられ痛々しかった。
そんな3年の教室に、真斗は唯一人、乗り込んだ。
3年の教室が凍り付く。
この中学で、真壁真斗を知らない者は居ない。
「な、何の用だ・・・。」
恐る恐る番格が言う。言葉を発せられたのは3年の意地だろう。
「文句があるなら俺にいえ。仕返しがしたかったら全部俺に向けろ。勇気に手を出したら、今度は殺す。」
とても普通の中学生が出せるような殺気ではなかった。
「お、お前たちとは二度と関わらない・・・。」
「ならいい。」
そう言って、真斗は3年の教室を後にした。

「最初から真斗に言えば良かったじゃねえか。」
浩一が勇気に苦情を言った。
「うるせえなあ。2年のトップは俺だろがっ!」
「何のトップだよ。お姫様か?」
「ほう、浩一君言っては、いけない事をいいやがったな。」
ぽきぽきと鳴りもしない指を鳴らす仕草を勇気はした。
「す、すまん。謝る。謝るから。」
「もう遅い、謝って済んだら警察はいらんだろうっ!」
「何やってんだ、お前ら?」
今にも飛び掛かりそうだった勇気だったが、真斗の登場で事なきをえた。
「た、助かった真斗。」
浩一がホッとする。
「何処行ってたんだよ、お前は。」
「ちょっと野暮用があってな。」
「またか、またなのか?」
浩一が言う。
「なんだよ、またって?」
「告白だろ、どうせ。」
「ちげえよ。そんなに何度も告白されてないだろ。」
「嫌味か?一度も告白されたことない俺への・・・。」
「告白だったら、俺より勇気の方が多いだろう?」
「それは男の数を入れたらか?」
ぷっと笑いを吹き出す浩一。
「やっぱり、お前は殺すっ!」
「ご、ごめんって・・・。」
襲い掛かる勇気から逃げるように、浩一は真斗の背後に隠れた。
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