優しい時間

ときのはるか

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第四章 そして天使はまい降りた

そして天使はまい降りた(6)【第四章 完結】

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「ううううっ!」

 声にならない瞬の抗議の声が上がる。

 瞬はまだ口に含んだまま目が挙動不審に動き、それを出していいのか飲み込んだらいいのかを模索しているようだった。

 飲めと言われているのは分る。

 だが急にそんな事を要求されても頭の中が混乱してしまい、喉が上手く動かない。

 見かねた榊が再び瞬の頬に手を掛けると、瞬の身体が固まった。

 また唇でも抉じ開けられるのかと身構える瞬の鼻を榊はキュッと摘まんだのだった。

 息が詰まって思わずゴクリとそれを飲み込んでしまった。

 ケホッケホッ!と瞬が僅かに咳き込だが命に別状がある訳でもないので榊は動じない。

「自分の匂いと味をよく覚えておくといい。知ってるか?初物を食べると寿命が七十五日延びるらしい。これで俺も瞬も七十五日寿命が延びたかもしれないな」

「初物を食べたら寿命が延びるなんて…聞いた事ないです」

 榊にしてはめずらしく気の利いた冗談を言ったつもりだったが、瞬には受け入れてもらえなかったようである。

 今まで榊が仕えていた主人は瞬にとってはおじいちゃんの年代なのかもしれない、だが榊にはその年の差も安心できて居心地は良かった。

 そんな彼が枕語りによく季節の言葉や慣用句や教訓めいた古い言葉を榊に教えてくれた。
 今ではあまり使う事が無い古い言葉かもしれないが風刺が効いていて、意味が分ると面白かった。

 瞬にもこれから少しずつ教えてやろうかとも思う。

 だがその前に瞬の初物をもう一ついただくつもりでいた。
 
「瞬の初物をもう一つもらおうと思っている。だが、今日は嫌だというなら急ぎはしない」

「後ろで迎え入れること…ですか?」

「そうだ。以前知りたがっていただろ?」

「…はい」

「前だけでいいなら、これで十分瞬は大人になったといえる。だから後ろの孔は無理しなくてもいい。でも瞬はずっとそこに受け入れたかったんじゃないのか?」

 榊の指がそっと瞬の秘所に押し当てられた。

 自分でもそこをヒクつかせているのが分る。

 そうしていつも榊の言葉と指は瞬の身体を支配していくのだった。
 榊の優しく響く声と瞬の全てを知り尽くした巧みな指先に、瞬の身も心も震える。
 ずっと榊にそこを躾て欲しかった。

 『そこに受け入れたいのか?』と聞かれたら『そうだ』とはっきり答えたかった。

 だが、さすがにそればかりは自分の口からは言いにくい。

 それなのに瞬の身体は正直で、軽い後ろのタッチだけなのに、さっき逝ったばかりの瞬のペニスはまたはしたなく頭を持ち上げ始めてしまうのだった。

 そんな瞬の本音を榊が見抜かない訳が無かった。
 
「瞬の身体は口より正直だな。嫌じゃないってここが言っている」

「ひっ…あん…」

 後ろの孔にローションが足されたようで榊の長い指はすんなりと瞬の中へ押しいってきた。

 久しぶりの感触だった。

 ずっと想像でしかなかった榊の指先が今また瞬の中に埋め込まれていた。
 
 榊の指先にかかれば、瞬の心の奥底に押し隠して来たものだろうと、暴かれるのはあっという間の事だった。
 堪えようとしてもその優しい指先が触れた先から、まるで電流が流れるような刺激が伝わって来る。

「ほら瞬の身体は嘘をつかない。私が瞬をそう躾たのだから当然だよ…」
 
 榊は含ませた指を瞬の良いところを避けるように擦り上げる。
 焦らされた瞬は、思わず自分からそこに指を擦り付けたくなる衝動に駆られていた。

 風呂場で散々そこを解され、しまいにはシャワーヘッドを外したホースを後ろの孔に含まされ、お湯をたくさん流し込れた。それで腸内清浄も簡単に済まされていたのだった。

 瞬だってわかりきっていた。
 ここに来たのは、榊に全部してもらう為だった。
 堂島が最後まで出来なかった事も、全部榊にしてもらい、瞬は大人になる。
 それが主人である堂島が最後にコミュニティに依頼した瞬の躾だった。

 いつでももうそこに榊を迎え入れられる。その為の準備も整っていた。
 それなのにまだ榊は確かなものを挿れてくれなかった。

 ただ大好きな榊の指だけはどんどん増やされていたようである。

 そこに榊の指が何本入っているのかは瞬にはわからない。
 途中で意識が何度も飛びかけて数える事は困難になってしまった。
 その感覚だけに囚われているとかなり深いところまで榊の指が入って来るのが分かる。下手すると榊の手首までそこに入ってしまいそうで怖かった。

 今、瞬が居るのは榊のベッドではない。一階処置室の分娩台のようなあの椅子の上だった。

「懐かしいだろ瞬…あの施設の部屋みたいで」

「ひっもう…無理…お腹苦しい…嫌ぁ…そこばっかり擦らないで…榊…もう…気が変になっ…る…」

「瞬…素直ないい子なら自分で言わなきゃ入れてあげないよ。そう教えただろ、ほら自分で言ってごらん」

 瞬はまだ自分の口からは言えていなかったのだった。

 その代わり瞬の身体は榊の言葉に先走るように反応してくれていたから問題ではない。

 だが、そんな可愛い瞬が必死に何かを言おうとすると、それを言わせなかったのも榊だった。

 瞬が何か言いかけると榊は刺激を与えて来るのだった。
 指先だけでなく、直接何かを言いかけた瞬の唇を榊の唇が塞いでしまう。

 荒々しい口付けに瞬の頭の中に用意した言葉もどこかにぶっ飛んでしまうのだった。


「うっ…はぁはぁ…もう…挿れて…」

 散々焦らしてはいたが、きちんと瞬の限界を知っている榊だった。
 離れていようと瞬を躾けたあの日々の事を忘れた事は無い。

 榊は瞬の限界を見極め、わざと最後は言う余裕を与えてやった。

 それにあまり初回から飛ばしてしまうと先々セックスが嫌いになられても困る。

 初物をいただくという事は、その恩恵に預かる分、大切にいただかなければならないという事だった。

 それにこれは正式な躾の依頼でもある。

 仕事であるなら尚の事、瞬にも堂島にも後悔させたくはない。

「よく言えました、瞬のここも大人にしよう」

 瞬の柔らかくなった蕾に榊の大人のペニスがあてがわれ、ゆっくりとそこに埋め込まれて行った。

 そして長く可愛らしい瞬の嬌声が誰もいない深夜の診察室に響き渡っていくのだった。




 
【第四章 そして天使はまい降りた・完】
 





 
【あとがき】
 
ここまでお読みいただきありがとうございました。
『優しい時間』ようやく完結しました!
長らくのお付き合いありがとうございます。

アホのようにエロい調教施設物を書こうと思ったりしたのが間違いで、途中でしんどくなったりしましたが、何とかハッピーエンドに結びつけたかな?(笑)
 
もともと主人と瞬はくっつける気は無かったのでご主人さまと瞬ちゃんのお話の展開を楽しみにされていた方には申し訳ありません。

この後ちょっとだけエピローグを付けたいと思っています。

だってまだ実は榊は仕事としてしか瞬を抱けていないんです。
気付いていましたか?(笑)

なので
プライベートとしての
二人のお話を書きたいなと思っているのですが、
よろしければあと少しお付き合いください!

ちょっとお時間かかるかもですが、
気になってくださったら
お気に入りか、しおりを挟んでお待ちいただけると嬉しいです。
 
ときのはるか こと・・・Rink
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