竜達の番

mokia

文字の大きさ
43 / 49
息を継ぐ者

狭い世界

しおりを挟む
 グライオスは産まれてから10歳に成るまでは幸せだった。父を見たことは無いけど、母は自身を大切にしてくれたし、乳母や母の使用人達は皆優しかった。

「母様、ここから先は何が有るの?」

「グライオス、そちらに行っては行けないわ。」

 グライオスの世界は家とそれを囲う塀のなかで存在していた。塀の外からは色々な声が聞こえて来た。騒がしい声、何かの爆発音、音楽もたまに。母は外の世界のことは大きくなったら分かるとしか言わなかった。
 母の表情はなぜか悲しげだったが。

 乳母がこっそり教えてくれた、外の世界は危険だからここから出ては行けないと。だからグライオスは忠実に言い付けを守り続けた。なぜか知っていたのだそう言われた時に守らなければひどい目に合うと。

 グライオスは屋敷に有る本は全て呼んだ、母が読むはずの無い軍記などもあったが、何が自身の糧になるか解らなかったから。文字は母から習い、書けるようにも読めるようにも5歳の時には成っていた。乳母はグライオスの事を天才等と言っていたが他にすることがない。本を読み始めてからはストレッチもするようになった。体が柔らかい方が良いと書いていたから。

 グライオスは屋敷の中に有った知識は全て吸収していった。暇に明かせて母の得意な刺繍さえも出きるように成った。

 グライオスが10になる頃母の元気が段々無くなって行った。いつも悲しげにグライオスを見る。何も母は言わなかったが、グライオスは何故か別れが近付いて居るように思えた。

「母様」

「グライオス、ごめんなさい」

 誕生日があと少しで来る頃、母がグライオスに謝罪した。

「何」

「ごめんなさい」

 母は謝るばかりで答えはくれなかった。グライオスはどうすればいいか解らず、ただ母を抱き締めた。

 そして、グライオスの誕生日が来た。

「グライオス、お誕生日おめでとう。」

「母様、ありがとう。」

「グライオス様、おめでとうございます。」

「皆、ありがとう。」

 屋敷の皆に誕生日をお祝いされた午後、グライオスの思わぬ人物がやって来た。

「息災かエレーヌ、5番目も」

「当主様、息災にございます。」

 母が頭を下げたので、グライオスも頭を下げた。

 誰だ、この人?

「5番目、あー、名前は」

「グライオスにございます。」

「ではグライオス、お前は今日から我が軍の養成所に入って貰う。母と別れを告げよ。」

 グライオスは驚いたが声を上げなかった。母が最近謝って居たのはこのためかと納得した為だ。

「グライオス」

「はい、母様」

 呼ばれて母を振り返る。

「息災で、後、今日から母上と呼んで頂戴ね。」

「はい、母上。母上も息災で。」

 グライオスは当主様と呼ばれた男を見た。自分と同じ色を持つ男は多分自分の父親なのだろうと。しかしグライオスは父親の存在を知らなかったので、母と同様に当主様と呼ぶことにした。

「当主様、お、私はどこに行けば良いのでしょうか?」

「お前は我が辺境伯家自慢の騎士隊の育成施設に入って貰う。15である程度の力が着けば騎士団入団後後継者候補に入る。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

縁結びオメガと不遇のアルファ

くま
BL
お見合い相手に必ず運命の相手が現れ破談になる柊弥生、いつしか縁結びオメガと揶揄されるようになり、山のようなお見合いを押しつけられる弥生、そんな折、中学の同級生で今は有名会社のエリート、藤宮暁アルファが泣きついてきた。何でも、この度結婚することになったオメガ女性の元婚約者の女になって欲しいと。無神経な事を言ってきた暁を一昨日来やがれと追い返すも、なんと、次のお見合い相手はそのアルファ男性だった。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...