創作

ひさめ

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ある少女の遺書

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彼の鱗は、きっと光に翳せば美しく輝いただろうと思います。

水面に揺れる大魚のように雄々しく、けれどその目は淡い優しさを浮かべていて。
きっと私は、あの目に強く惹かれたんだと。
今となってはもうここから逃げ出す術など一つもありませんが、それでも彼に出会えたことだけは幸せだったんです。

あの低く甘い声で「×××」と私の名を呼んでくれる度に、何度心を踊らせたことか!
いつだって彼は私を愛してくれて、そんな優しい彼のことを私も愛していたんです。
穏やかにお互いのことを語り合い、手を繋いで笑い合うだけで、どんな困難も乗り越えられると信じていました。


私たちは、恋人でした。






ここ最近、どうしてか彼の姿をさっぱり見かけません。
誰に聞いても「知らないな」「見ていないよ」「分からない」と言われ、目撃情報は一切無し。
まるで最初から居なかったみたいで、私は酷く混乱しました。

手の震えや頭痛、どんどん強くなる不安感。

もはや1日でも彼と触れ合うことが出来なければ、私はマトモに呼吸することすら不可能な程彼に溺れていたんです。

そうしてどんどん弱っていくうちに、頭の隅から声が聞こえてくるようになりました。
その声は無機質に、ただひたすら同じことを繰り返すのです。

「もう疲れてしまった」
「あなたが居ないなら生きる意味なんて無い」
「ごめんなさい」
「苦しい、辛い、痛い」
「殺して、ころして、助けて」

頭が痛い。
こんなことを書くのも、おかしいのでしょうか。
私はいつからこんな風になってしまったんだろう?

ああ、会いたい。
一目見るだけでいい。
あなたに会いたい。

ごめんなさい。
許して、こんな私を。
もう何もわからないの。


どうかこの手紙を読んだら、私を殺してください。
何度も、何度でも。
きっとあなたを悲しませてしまうから。
ごめんね。
愛しています。

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