秘密の多い私達。

堂島うり子

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第3章

社長の本領

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 キスをしても何もなかったようにするのは切り替えるため。
私が彼を叔父さんとあまり呼ばなくなったものそのため。
 呼び方が多すぎて言い間違いをしそうだから「社長」で統一してる。

 愛しい人をずっと社長呼びって複雑なんだけど仕方ない。

「丘崎咲子さん。ですよね」
「え?ええ、はい。そうです」

 翌日。会社の入り口でやたら体がゴツいオジサンに声をかけられた。
スーツじゃないラフなジャケット姿でよく外に出る人なのか色が黒く。
その筋の人なのかと一瞬焦ったけど警察手帳を見せられて。

 こっちへ来てくださいと言われて人の通りの少ない場所へ。

「この会社で先日起きた毒混入事件でですね」
「止めろ。上司に電話して苦情を言わせてもらう」

 あれ。だいぶ前に家を出て既に社長室に居るはずの人が居る?

「そちらから出てきてくれて手間が省けたよ」
「あの」
「君はもういいから行きなさい。就業時間に遅れる」

 何かなんだか分からないけど社長が来て非常に悪い空気のまま
私はエレベーターへ向かった。

 気になる。とっても気になる。

 今まで彼があんなに他人を睨む姿なんて見たこと無い。

「何も違法は行為はしてない。こっちも仕事中なんだ。
互いに忙しい身の上だろうにそんな怖い顔をするのは止めてほしいねぇ」
「君の担当じゃないだろう」
「違う。けど、後輩に変わってもらったんだ。現場がお前の会社だって聞いて」
「しつこいな」
「いやあ。それほどでも」
「……、言いたいことがあるのなら聞こう。応えるかは別として」


 声をかけられた事で危うかったがなんとかギリギリ間に合った仕事。
だったけど、今はそれよりも気になるあの怖い見た目の刑事。
社長となにか関係?があるようだった。
 それも仲良しには見えない感じで。

 私は周囲を気にしつつ「一緒にお昼食べましょう^^絶対絶対ね」という
短いメッセージを社長のプライベート用のアドレスに送っておいた。
 これを見てないということはないはず。

 もし駄目でも理由を添えて返事が来るけどお昼休憩まで何も無かった。

「あれ。今日は弁当なし?もしかして社食?それともコンビニ?」
「ちょっと用事があってそっち片付けてからにしようと思って。
どうぞ気にしないで先に食べてください」
「わかった。でも、無理そうなら言ってね」
「ありがとうございます」

 まさか今から社長に会いに行くとは言えないので嘘をついて席を立つ。
お弁当入のカバンを持っていざエレベーターへ乗り込み上階へ。
 社長室へ向かうには秘書課を通らないといけなくてそこがまた難関。

 何かされるって訳ではないけど、新人が毎回嘘をついて通るとなると
確実に怪しい。から、社長室のあるフロアの1つ下の階。
 会議に使う小さな部屋が並ぶだけの静かなフロアで待ち合わせ。

「お疲れ様です。あれ。お弁当は?」
「食べる気がおきない」
「駄目ですよ昼からも仕事あるんだから」

 使用してないからどこも暗いけど明るいのがひとつ。
ドアを開けると既に社長が座っていて机にはコーヒーのカップのみ。
 その隣りに座って自分のお弁当箱を広げる。

「気になるんだろう。あの刑事。彼が前に話した同級生だ」
「やっぱり」

 タイプが違いすぎて同級生って言われてもピンとこないけど。

「私はどういう立場であろうとも犯罪とは関わりたくない」
「考え方を変えてみて。犯罪で困ってる人を助けたいとかいう気持ちは?」
「無い」
「即答した」
「それで静かに一生暮らせるなら手を貸すことは厭わないさ。
けどそうじゃないだろう。生きている間に問題は次々と発生する。
そして嫌なものを見る。聞かされる。そんなのは絶対に嫌だ」
「……、解決して救われた人の笑顔を見たら少しは変わるかも」
「解決しようとも失われたものは結局埋められないんだよ」
「私は失いそうになった所を貴方に救われた。私は幸せ」

 そう言ってそっと彼の手にふれる。

「だけど君を一生幸せに……、いや、止めておく」
「創真さん。私後悔しないから。本人が言ってるんだから信じて」

 その手を握り返されて、優しくおでこにキスをされる。

「君の気持ちは分かってる。よく、分かってるんだよ。
あの男は羨ましいと言ったが私には無駄な能力だ」

 彼は自分の過去はあまり明かさない。略歴くらいは分かっても。
その理由は私の家とも絡んでくるから口にしたくない気持ちはよく分かる。
 きっとそれ以外にも見たくない聞きたくない辛い過去があったんだと思う。

 ここで下手な事を言って傷つけるのも良くないし。
 もっと上手く言えたらいいけど。

「……おにぎりどうぞ」

 これくらいしか言えない。

「ありがとう」
「そうだ。意識がもどって話せるようになったんですよね。
もう聞いたのかな。あの刑事さんは何か言ってましたか?」
「その件だけど。夕方彼女の様子を見に行ってくるよ。
だから戸締まりの確認はちゃんとするように」
「はい」
「君の食べっぷりを見ていると食欲が湧いてきた。何か買ってくる」

 そう言って部屋を出ていく。

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