秘密の多い私達。

堂島うり子

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番外編

7:とある出張した日 後編

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 夜の街を歩くのはそれほど特別な事じゃない。
デートで食事をして帰る時、会社の飲み会、女子会。
 でも土地勘のない場所では初めてだから少し緊張する。

 もし彼とはぐれたらどうやってホテルに戻ろう。とか。
 いい歳をしてそんな不安感を抱く。

 出張先に彼が来てくれて一緒で嬉しいと思ってるのに。

「どうした?何だか不安そうだね」
「もしはぐれて迷子になったら大変だなと思って」
「大丈夫。咲子の場所は分かる」

 彼の場合は文字通りの意味なんだろうな。
GPS持ってなくても私の居場所を探るなんて簡単そう。
 物凄く頼れるような、ちょっと怖いような。

 駅から歩いて5分くらいと聞いていたけど思った以上に早く到着。
私のために選んでくれるお店は毎回高級すぎない、
 でも落ち着いている良い雰囲気のレストラン。味も保証付き。

 だから今回のお店もきっと美味しい。

「創真さん?どうしたんですか?」

 気分よくお店に入ろうとしたらじっと立っていた創真さんに腕を掴まれた。
 キツくじゃなくて優しく、でもしっかりと。

「ここは止めよう」
「ええ!?お店は眼の前なのに」
「止めよう」
「は、はい」

 静かに言うとそれ以上の説明もなく手を引かれて別の店に。
予約をした店でなく飛び入りなので非常に明るくてカジュアルで、
 言ってしまえば煩い大衆的なレストランに入った。

「ワイン飲む?」
「はい」

 個室と言っても声がダダ漏れで静かさは無いけれど。
それほど高くはないワインでまずは乾杯。安っぽい店でお値打ちな
 ワインでも上品ないい男が持つと一気に高級に見える罠。

 やっぱりカッコいいな。と見とれていると。

「……するべきか……べきか」

 相手はスマホを手に何か唸り始める。

「創真さんが悩んでる姿なんて珍しい。何を悩んでますか?
もしかして今夜お泊りするかしないか?」
「少し席を外すよ。電話してくる」
「え。あ。はい」

 はあ、と深い溜め息をして個室を出ていく。
仕事の電話?プライベートだったら誰なんだろう。
 気になるけれど本人は居ないので戻るまで何もできず。

 料理は来たけど食べるわけにもいかず、待つこと10分。

もし仕事の電話で急遽帰るなんて話になったらどうしよう。
これってもしかして歓迎会に参加したほうが良かったパターン?

「ごめん咲子」
「もう飲んじゃったんですからね。帰るにもタクシー代はくださいね。多めに」
「え?帰る?……帰りたいの?確かに2人で過ごすには適さない店だけど」
「だって創真さんお仕事の電話じゃ」
「違う。警察に電話してた。
私が協力していたのはとある事件の犯人探しだったんだけど」
「今の店に居たんですねっ」
「それはもう片付いた。……なんというか、嫌な気配がした」
「気配」
「姿を見た訳ではないけどね。久しぶりに気分が悪くなるほどの悪意の塊だった。
相当数の人間を不幸にしてる。今にも恨みの声が聞こえてきそうで。
あんな空間で食事は無理だ。もかしたら何か犯罪が起こるかもしれないし」
「……」
「君を楽しませたかったのに本当にごめん。必ず埋め合わせするから」
「すぐに言って欲しかったです。事件の話は怖いけど。でも、私は助手志望です。
そっちの情報だってしっかり共有して欲しい」
「助手じゃない。それに何があっても君を危険から遠ざける」
「だからそんな重たい事情を全部1人で抱えると?そんなの嫌です」

 事件関係の話は殆してくれない。知らない所で刑事と組んで事件を解決している様子。
彼はその手のプロじゃない。本人が望んでしてることでもない。
 生き死にが関わってて楽しい話じゃないのに、きっと内心は辛いはずなのに。

「助手をしなくても咲子が側に居てくれたらそれでいい。どうでもよくなるから」

 そう言ってそっと私の手を握る。温かい手。

「今後も何があったのかの話はしてください。手伝えなくても、話はして」
「わかった。…努力する」
「ちなみにどうやって私を楽しませてくれる予定です?」
「興味ある?」
「もちろん」
「わかった。では、まず食事にしよう」
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