隣の席の美少女はクイズを出します

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隣の席の美少女はクイズを出します

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「ねぇ、天崎さん」
「ここで問題です」
「ですよね~」

 俺の隣の席の美少女、天崎あまざき湯奈ゆなに話しかけるとクイズを出される。彼女はどうやら、両親が離婚したことにより、男が怖くなり、クイズを出すようになったと女子と話してるとこを盗み聞きした。

 けど、俺の困ったことは、

「2025年現在グレートブリテン及び北アイルランド連合王国議会庶民院においての第3党を答えて下さい」

 そうです。俺の問題はこれなのです。この天崎さんが出すクイズが中々に難しいことです。イギリスの正式名称を言う人なんてこのクラスでは天崎さん以外いないと思う。
 
「それって日本語でいい?」
「はい、大丈夫です」
「自由民主党だ」
「正解です、お話しましょうか」

 俺は頷く。彼女と話すには一苦労するが、終わればかなり楽しい。

「最近どうだった?」
「今、貴方話してる内容、授業関係ある?」
「断じてない!」
「なら、この話はやめ…」
「あ、やめて下さい!お願いします」

 俺の誠心誠意の土下座を見せた。
  
 彼女と話終わると、リセットされてしまう。だからできる限り1回で、終わらせないといけない。まあ、女子はクイズ出されないのだが。

「暁~、座れ」
「は、はい」

 なんとか話を繋げれた~。

 先生に怒られるのは当たり前だが、やはり彼女と話す為の犠牲は致し方ない。こうすれば、彼女とは話し続けれ……って、寝てる!!!

 え、天崎さんが寝てるのは珍しいくないか?周りは授業に集中して、気づいてないけど。

「天崎さん、起きてる~?」

 あ~、反応ない。これは完全に寝てますね。

「では、この問題を天……」

 やばい、これは先生に当てられてしまう。

「先生!それ、俺が解きます!」
「お前、化学苦手なのに克服したのか?」
「大丈夫です!!!」

 天崎さん、昨日寝られなかったんだな。なら、寝させないと。化学と言ってもあのぐらい簡単だな。

 俺は板書にスラスラと途中式を書き、答えを導いた。よし、これで。

「まあ、暁、やる気を出してくれたのは非常に有り難いのだが、解く問題は問5だぞ」
「え」

 クラス中に笑いが出る。

    え~問4だと思ってたのに。天崎さんと話してた時に聞き逃したか。しまった。

 俺は席へ戻る。天崎さん、まだ寝てたのか。

「ありがとうね、暁くん」

 ん、天崎さんの声がしたのは気のせいだよな?当の本人、小さないびきかいてるし。  天崎さんの寝顔、滅茶可愛い。クラスが美少女と騒いでる理由も今分かった気がする。

 先生の授業が終わり、昼休みとなった。クラスの男子らは天崎さんをどうにかして、デートに誘い込もうとしていたが、クイズが正解できなくて断れている。

 ここにいても、うるさいだけだし、屋上へ行くか。

「貴方、ここにいたの?」

 何で、天崎さんがいるんだ?さっきまで男子ばか共と話し合ってただろ?まさか、分身か?

「天崎さん、何故ここに?」
「外の空気を吸いにね」

 あれ、クイズ出さないんだ。まあ、有難いからいいけど。天崎さんは購買の方を見ている。そして、ぼそりと「いいな~」と言う。

 彼女からなにかを羨ましそうにしているのは、初めてではないが、とにかく珍しいのだ。

「天崎さん、いってみる?」

 天崎さんはこちらの方をむく。嬉しそうに「いいの?」と言う。

 彼女は俺の手を引っ張り、購買へ向かう。

「あ、ちょっと天崎さん」

 俺は手を引っ張る天崎さんを止める。彼女と今並んでしまったら、あらぬ誤解を生んでしまう。その為、俺は遠くから見張ることにした。

 天崎さんは購買に並んだ。1部は見蕩れて去ってしまったが、何事もなく買えたようだ。

「暁君も並ばなくて本当に良かったの?」
「大丈夫だよ」

 天崎さんはクイズをまだ出してないので、いつ出されるか俺は待っているだけだ。

「暁君、問題出していい?」
「え、いいけど」
「何で、そんなに驚いてるの?」

 天崎さんは普段答える相手の名前は出さないし、「クイズを出していい?」なんて言わない。

「ちょっと、違ったから……かな?」
「ふうん」

 どうしたんだ、今日の天崎さん。雑草でも食べたのか?

「暁君ってさ、私と話したがるのは何で?」
「え、どうして聞くの?」
「私以外と絡んでいるのを見た事がないから」

   確かに、俺は天崎さん以外と絡んでいない。元々、俺は他人と関わりたくない性格であった。天崎さんもその対象であった。

 だけど、天崎さんがクイズを出さないと何も答えてくれないと噂がたった為、実験に出た。そしたら、本当だった。

 段々と話すうちに楽しくなり、関わりたくなった。だけど天崎さんを恋愛対象としては見ていない。

 小さい頃、公園で会った女の子だけが恋愛対象だ。あの子、今どうしてるのかな。

「ん、どうしたの?暁君」
「いや、何でもないよ」

 けど、天崎さんに声似てるんだよな。気のせいか。似てる人は世界中に何百人もいるしな。

 天崎さんは教室へ戻った。

 5限目の授業が終わり、帰宅時間となった。

 天崎さんは何か慌てている。

「どうしたの?天崎さん」
「ここで、問題です」

 え、慌ててるから話しかけたのに、問題出されるの?

「世界の珍しい法律1つとその国を答えなさい」

 うわ~、慌ててるから、なんか簡単だな。

「ブドウ畑の上にUFOを着陸してはいけない、フランスだ」
「正解です。用件は?」
「天崎さんが慌てているから」

 天崎さんは慌ててる理由を話す。どうやら、小さい頃に男の子に貰った御守りが無くなっているみたいだ。

「わかった、探すよ」
「え、あ、ちょっと暁君、何してるの!?」

 俺は普段天崎さんを狙っている男子の机を漁る。絶対によくない事だが、非常時なので仕方ないとしよう。

 1人目の机でその御守りがあった。だけど、御守りはボロボロであった。

「天崎さん、あった……よ」
「ありがと……え」

 天崎さんは体育座りをし、泣く。俺は天崎さんの手を握り、言う。

「その御守りの大事さは分かっている。修復は難しいかも知れない」
「……嫌です」
「その子の所へ行こう」

 天崎さんは顔を見上げる。そして、ぼそかに「えっ?」と言う。

「会えるかもしれないから、明日行こうよ。休みだし」

 天崎さんは「ウンウン」と頷く。

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 休日、天崎さんと一緒に御守りをくれた子を探す。

 公園で待ち合わせをしている。まだ、天崎さんは来てない。

「暁君、おはようございます」
「おはよう、天崎さん」

 今日は探すのに時間がかかると思う為、9時からの待ち合わせであったが、まさか8時に来るとはな。

「暁君、一体何時からそこにいるんですか?」
「え、7時だけど?」
「早いですね」

 ちょっとした雑談を交わしていると、タクシーが来た。

「じゃ、天崎さん乗ろうか」

 天崎さんは戸惑っている。別にタクシーに乗ることぐらい大したことないんだけどな。

「し、失礼しま…す」

 天崎さんは俺の隣に座るが、まだ落ち着かないみたいだ。まあ、異性と2人きりだから仕方ないか。

「天崎さん、その子がいた場所覚えてる?」
「あ……右往町うおうまちです」
「運転手さん、右往町までよろしくお願いします」

 運転手は頷き、発進する。天崎さんは俯いたままである。仕方ない、クイズで元気出してもらおう。

「天崎さん、クイズ出せる?」
「あ……」 

 あ~駄目だな。完全に緊張している。

「天崎さん、ここで問題です」
「え?」
「祇園精舎の‪”‬ハエ‪”‬の声、諸行無常の響きあり」
「それがどうしたんですか?」
「今、俺は間違ったことを言っています。その箇所を答えて下さい」

 天崎さんは笑う。

「ハエですよね?」
「正解です」

 天崎さんの緊張はこれによりとけた。そして、右往町へ着いたみたいだ。

「暁君、私の家に少し寄っていい?」
「え?いいけど」 

 天崎さんの家、この近くなんだ。俺もここに住んでることは一旦黙っておこう。 

 ……でっか!?まじか。金持ちだという噂は聞いていたけど、まじの金持ちだったのか。

「湯奈、その人は?」
「同じクラスの人です」 
  
 天崎さんはこちらを見る。

「どうも、天崎さんと同じクラスのあかつき 翔也しょうやです。以後お見知り置きを」
「挨拶ありがとう、湯奈、もしかして進路決まった?」

 進路?天崎さんはそのまま進学と言ってきた気がするが、まだ迷っていたのか?

「父上、その進路については残りの期間も含め、決めます」
「そうですか」

 よく分からんけど、天崎さんが決定している事だし。……え?今、父上って言った?お母さんじゃないの!?、サラサラとした髪、そして薄い金髪、透き通った声。お父さんなの?

「天崎さん、お父さんなの?」 
「うん、私のお父さんだよ。お父さんは今、とあるキャラのコスプレにハマってこうなってるの」

 ああ、そうですか。とりあえず俺はこの話は一旦置いておく事にした。

「で、進路って就職か進学のことだよな?」
「違います。1人暮らしするか、このままここで暮らすかの選択です」

 2択なんだ。けれど、それで迷うのか?俺は既に1人暮らしだから、選択されてもという感じにはなってしまうが。

「1人暮らしは支援金が少額。ここで暮らせば支援金は全額」
「それなら、暮らせば?」 
「私は自力で生きてみたいけど、支援金がね」

 なるほど。どうやら、天崎さんの家族は意志より家族を大切にしろと言うことか。はあ、こりゃ言っちゃ悪いけど、ダメ親だ。

「期限はいつまで?」
「明日までです」

 天崎さんが言うには2週間前に言われたことみたいだ。もうちょい時間やれよ。

「じゃあ、探そうか。その子を」

 天崎さんは頷く。そして、俺の手を引っ張る。さっきと違い、俺の心臓が激しく動いた。

「行こうか、暁君」
「あ、うん」

 俺達はショッピングモール等を探したが、御守りをくれたらしき子はいなかった。今日はあの子との約束がある為、諦める訳にはいかない。

 あ、御守りこれあの子の為に買って行こう。時間が経ち、もう夕方である。

「天崎さん、明日も来るから」 
「明日も来てくれるの?」 

 俺は頷く。期限の時間は明日の22時までだからな。明日は18時にあの子との約束があるから18時までだが、仕方ない。

「ではまた明日」
「ありがとう、暁君」

 また俺の心臓が激しく動く。一体、何故動くんだ?俺は、もう天崎さんを恋愛対象として、見てしまったのだろうか。あの子との約束があるのに……。

    ~~~~~~~~~~~~~~~

 朝、起きてすぐに天崎さんの家へ向かう。

「あ、暁君」

 天崎さんは何故かパジャマ姿。ここ外だよな?俺は周りを見渡す。うん、外だ。

「天崎さん、何でパジャマなの?」

 私服かもしれないけど、聞いてしまった。天崎さんは無言で赤らめる。

「可愛い」

 天崎さんは「え?」と言う。俺は一体何を言っているんだ?自分から口に出すなんて。

「あ、えっと天崎さん。ここで問題です!」
「着替えてくるので、少々お待ちを」
「は、はい」

 やべ、問題を考えないといけない。スマホで調べる。なぞなぞでいいや。

「戻りました。で、暁君。問題言ってみて?」
「1トンの鉄と1トンの紙はどちらが重いですか?」
「答えはどちらも同じです」
「正解です」

 俺は拍手を送る。天崎さんは笑う。

「けど今日は17時までしか探せないけど良い?」
「はい」

 今日はお店とかではなく、近所を探す。歩いていると、アイスクリーム屋さんがある。それを天崎さんが食べたそうにしている。

「天崎さん、何味食べる?」
「は、え?いや、大丈夫です」
「え、だってもう買っちゃったし」
「は、早いですね」

 苺味を選んでしまったが、まあ、大丈夫だろう。

「はい、どうぞ。天崎さん」
「あ、ありがとうございます」

 天崎は少しだけアイスクリームを舐める。

「暁君、食べますか?」

 ん、食べる?あ~、間接キスなんてしたら俺の心がどうなってしまうか分からないので、やめておこう。

「大丈夫だよ、全部食べて」
「あ、ありがとうございます」

 17時のチャイムが鳴る。あの子との約束がある為、俺は天崎さんに挨拶をし、約束の公園に向かう。

 公園に着くと、天崎さんがブランコに座っている。誰かと待ち合わせでもしているのか?

「あ、暁君、どうしているんですか?」
「約束してるからね。天崎さんこそ、何で?」 
「あの子との約束です」

 天崎さんは過去の事を話す。小さい頃、天崎さんは家族以外と関わることができなかった。

 だけど、1度だけ家を飛び出した時にある男の子と出会ったらしい。初めは緊張していたけど、その子がクイズを出した。天崎さんはその時、不正解してしまった。 もう一度天崎さんはクイズを頼んだ。

 だけどその子は『10年後にまた来るよ』と言い残した。

「会えるといいね」
「はい」

 18時15分になった。

「「来ない……か」」 

 天崎さんが帰ろうとした。

「天崎さん、もう帰るの?」
「はい、暁君も?」
「あの頃の子が来なかったからね、茶髪で、髪があの頃にしては地面に髪がつくほど長かったな」

 天崎さんは困惑する。

「暁君、覚えてないの?」

 覚えてないと言われても、今の天崎さんは黒髪でストレートヘア。あの子とは全然違う。

「その子の名前は?」
「苗字しか言われなかったからな。天宮だと思う」

 天崎さんは頬を赤らめ、自分に指をさす。俺達はとりあえずブランコに座る。

「ここで問題です」
「あ~、ドンと来い」 
「相手に対して強い興味や好奇心を抱く感情の事をなんと言いますか?」
「簡単だよ、好意だ!」
「不正解です」

 え、好きという意志だから好意じゃないの?不正解なの?

「好意は人に対して親しく思う気持ちや好ましく思う気持ちです」
「答えは?」
「好き」

 俺は自分の心をようやく理解した。天崎さんとしても天宮としても好きだったんだ。

「天崎さん、俺もだよ。だから天崎さん、俺の家で一緒に暮らさない?」
「ありがとう、暁君」
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