9 / 20
よく当たる占い?
しおりを挟む
「……あの、藤島さん。その、疑いをかけるようで申し訳ないのですが……本当に、こんな所にあるのでしょうか?」
「……はい、冬樹先輩。美穂の話によれば、そのはずなのですが……」
それから、二週間ほど経て。
少し控えめに問い掛ける僕に、少し不安そうに答える藤島さん。尤も、前を歩く彼女は僕の方へと顔を向けるだけ。そして、それもそのはず――僕らが今いるのは、人ひとり分ほどの幅しかない路地の中なのだから。
『――あの、冬樹先輩。もし良ければ、明日占いに行きませんか?』
『……へっ?』
昨夜、勤務後のこと。
休憩室にて、雑談の最中ふとそう尋ねる藤島さん。彼女曰く――大学の友人から、大変よく当たる占い屋さんがあると教えてもらったとのこと。
……ただ、それはそれとして。
『……あの、藤島さん。その……良いのですか?』
『……何がですか?』
『あっ、いえ……それなら良いのですが』
一応、そう問い掛けるもキョトンとした表情で尋ね返す藤島さん。……いや、今ここには他にもスタッフがいるんだけど、聞かれても良いのかなって……まあ、彼女が問題ないなら良いんだけど。
ともあれ、そういうわけで目下、彼の占い屋さんへと二人向かっているわけだけど……えっと、ほんとにいるんだよね? もちろん、藤島さんを疑いたいわけじゃない。ないのだけども……それでも、こんな狭く薄暗い路地の中で営業している人がほんとにいたら、きっと相当な変わり者で――
「――あっ!」
「……へっ?」
そんな失礼も甚だしい思考の最中、不意に弾んだ声を発する藤島さん。そんな彼女の後方から、ひょっこり顔だけ出してみると――
「――うるさいねえ、近くで大声を出すんじゃないよ嬢ちゃん」
「あっ、すみませんつい…………えっ?」
前方から届いた気怠げな声に、ハッとして謝意を告げる藤島さん……だったが、ふと言葉が止まる。尤も、声を発していないだけで、僕の反応も大方彼女と同様のもので。というのも――
「……えっと、すみません。一応、お伺いしたいのですが……今、嬢ちゃんと仰いました?」
「……ああ、それがどうしたんだい?」
「……いえ、何と言いますか……」
そう、ありありと困惑を浮かべた表情で呟きを洩らす藤島さん。……うん、分かるよ藤島さん。だって――
「……どう見ても、貴女の方が子どもだよね?」
「誰が子どもじゃ!」
そんな藤島さんの問いに、顔を真っ赤にして反論する黒いローブの女の子。うん、何と言うか……容姿と口調のギャップが半端ないね。
……まあ、それはともあれ。
「ところで、貴女がよく当たると評判の占い師ちゃんで良いのかな?」
そう、少し腰を落とし尋ねる藤島さん。まあ、彼女も分かった上で一応確認しているだけなのだろうけど。偏見かもしれないけど……黒いローブというこの身形からして既に占い師っぽいし、そんな彼女の前には何やらそれっぽい盤が置いてあ――
「……そうじゃが、だがその前に――その、あからさまに子ども扱いした口調と表情を止めるのじゃ。我はもう煙草もお酒も嗜める、立派なレディーなのじゃから」
「「嘘でしょ!?」」
少女からの衝撃が過ぎる発言に、思わずハモる僕ら。えっ、嘘でしょ!? 煙草もお酒もということは、どれだけ下に見積もっても20代……えっ、藤島さんより歳上!? 正直、どれだけ上に見積もっても中学生くらいにしか見え――
「……あの、立派なレディーな占い師さま。もし宜しければ、いったい如何なるアンチエイジング対策をなさっているのか是非ご教示を――」
「藤島さん!?」
そう、深く頭を下げ教えを乞う藤島さん。いや、貴女も十分若いですよ? 間違っても実年齢より上には見えないし。……まあ、それでもやっぱり気になるものなのかな。
「――さて、改めて確認じゃが、お前たちは占い希望ということで良いんだね?」
「……はい、お願いします」
その後、ややあってそう尋ねる占い師さんに対し、少し項垂れた様子で答える藤島さん。恐らくは、先ほどの彼女の問いに対する占い師さんの返答が原因なのだろう。
『――アンチ、エイジング……なんじゃそれは?』
……うん、よもや概念ごと知らなかったとは。ということは、何の対策もなしにこの容姿……いや、然程意外でもないか。美容や健康に関して僕に語れることなんてほぼ皆無だけども……それでも、どう考えても何かしらの対策でどうにかなる水準じゃないしね。
「……じゃが、その前に一つ――見ての通り、我が相棒は我を挟んでお前たちの反対側にある。……言いたいことは分かるな?」
「「…………えっと」」
すると、些か躊躇うように尋ねる占い師さん。相棒とは、彼女の前にあるあの占い道具のことで間違いないだろう。……ただ、それはともあれ……うん、どうにも嫌な予感が――
「……なので、悪いとは思うのじゃが……もう一度、反対側からこっちへ回ってきてくれんか?」
「「…………はい」」
……うん、なんか分かってたけども。
「……はい、冬樹先輩。美穂の話によれば、そのはずなのですが……」
それから、二週間ほど経て。
少し控えめに問い掛ける僕に、少し不安そうに答える藤島さん。尤も、前を歩く彼女は僕の方へと顔を向けるだけ。そして、それもそのはず――僕らが今いるのは、人ひとり分ほどの幅しかない路地の中なのだから。
『――あの、冬樹先輩。もし良ければ、明日占いに行きませんか?』
『……へっ?』
昨夜、勤務後のこと。
休憩室にて、雑談の最中ふとそう尋ねる藤島さん。彼女曰く――大学の友人から、大変よく当たる占い屋さんがあると教えてもらったとのこと。
……ただ、それはそれとして。
『……あの、藤島さん。その……良いのですか?』
『……何がですか?』
『あっ、いえ……それなら良いのですが』
一応、そう問い掛けるもキョトンとした表情で尋ね返す藤島さん。……いや、今ここには他にもスタッフがいるんだけど、聞かれても良いのかなって……まあ、彼女が問題ないなら良いんだけど。
ともあれ、そういうわけで目下、彼の占い屋さんへと二人向かっているわけだけど……えっと、ほんとにいるんだよね? もちろん、藤島さんを疑いたいわけじゃない。ないのだけども……それでも、こんな狭く薄暗い路地の中で営業している人がほんとにいたら、きっと相当な変わり者で――
「――あっ!」
「……へっ?」
そんな失礼も甚だしい思考の最中、不意に弾んだ声を発する藤島さん。そんな彼女の後方から、ひょっこり顔だけ出してみると――
「――うるさいねえ、近くで大声を出すんじゃないよ嬢ちゃん」
「あっ、すみませんつい…………えっ?」
前方から届いた気怠げな声に、ハッとして謝意を告げる藤島さん……だったが、ふと言葉が止まる。尤も、声を発していないだけで、僕の反応も大方彼女と同様のもので。というのも――
「……えっと、すみません。一応、お伺いしたいのですが……今、嬢ちゃんと仰いました?」
「……ああ、それがどうしたんだい?」
「……いえ、何と言いますか……」
そう、ありありと困惑を浮かべた表情で呟きを洩らす藤島さん。……うん、分かるよ藤島さん。だって――
「……どう見ても、貴女の方が子どもだよね?」
「誰が子どもじゃ!」
そんな藤島さんの問いに、顔を真っ赤にして反論する黒いローブの女の子。うん、何と言うか……容姿と口調のギャップが半端ないね。
……まあ、それはともあれ。
「ところで、貴女がよく当たると評判の占い師ちゃんで良いのかな?」
そう、少し腰を落とし尋ねる藤島さん。まあ、彼女も分かった上で一応確認しているだけなのだろうけど。偏見かもしれないけど……黒いローブというこの身形からして既に占い師っぽいし、そんな彼女の前には何やらそれっぽい盤が置いてあ――
「……そうじゃが、だがその前に――その、あからさまに子ども扱いした口調と表情を止めるのじゃ。我はもう煙草もお酒も嗜める、立派なレディーなのじゃから」
「「嘘でしょ!?」」
少女からの衝撃が過ぎる発言に、思わずハモる僕ら。えっ、嘘でしょ!? 煙草もお酒もということは、どれだけ下に見積もっても20代……えっ、藤島さんより歳上!? 正直、どれだけ上に見積もっても中学生くらいにしか見え――
「……あの、立派なレディーな占い師さま。もし宜しければ、いったい如何なるアンチエイジング対策をなさっているのか是非ご教示を――」
「藤島さん!?」
そう、深く頭を下げ教えを乞う藤島さん。いや、貴女も十分若いですよ? 間違っても実年齢より上には見えないし。……まあ、それでもやっぱり気になるものなのかな。
「――さて、改めて確認じゃが、お前たちは占い希望ということで良いんだね?」
「……はい、お願いします」
その後、ややあってそう尋ねる占い師さんに対し、少し項垂れた様子で答える藤島さん。恐らくは、先ほどの彼女の問いに対する占い師さんの返答が原因なのだろう。
『――アンチ、エイジング……なんじゃそれは?』
……うん、よもや概念ごと知らなかったとは。ということは、何の対策もなしにこの容姿……いや、然程意外でもないか。美容や健康に関して僕に語れることなんてほぼ皆無だけども……それでも、どう考えても何かしらの対策でどうにかなる水準じゃないしね。
「……じゃが、その前に一つ――見ての通り、我が相棒は我を挟んでお前たちの反対側にある。……言いたいことは分かるな?」
「「…………えっと」」
すると、些か躊躇うように尋ねる占い師さん。相棒とは、彼女の前にあるあの占い道具のことで間違いないだろう。……ただ、それはともあれ……うん、どうにも嫌な予感が――
「……なので、悪いとは思うのじゃが……もう一度、反対側からこっちへ回ってきてくれんか?」
「「…………はい」」
……うん、なんか分かってたけども。
0
あなたにおすすめの小説
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる