5 / 53
後輩とのお食事
しおりを挟む
「……うわ、すっげぇ。こんな高そうなとこ来るの初めてっすよ、俺」
「……そう、気に入ってくれて何よりだわ」
それから、30分ほど経て。
そう、目を輝かせ話す美男子。こういう表情をしてくれるだけでも、ここに連れてきた甲斐があるというもので。……うん、ほんと良かった。キャンセルするの忘れてて。
さて、私達がいるのは広々とした玄関口――25階建ての高層タワーにて、来客を迎える玄関口で。……うん、未だに慣れない。まあ、私自身こういう日にしか来ないわけだし。
『……えっ、マジっすか!? やった、タダで飯にありつける! それもフレンチ!』
良かったら、一緒に食事でもどうかしら――予定の有無を確認した後そう尋ねると、目を輝かせそう口にする戸波くん。まるで子どものようなその反応に、さっきまで暗鬱を一瞬忘れ思わず笑みが洩れてしまう。
ともあれ、そういうわけで今向かっているのはこのタワーの21階に位置する高級フレンチ店――繰り返しになるけど、こういう日にしか来ない何とも敷居が高……そういえば、本来の意味は違ったっけ? この表現。……うん、まあいっか。
……ところで、それはそうと――
「……それにしても、やっぱり随分と見違えるものなのね」
「……へっ?」
「貴方のその格好よ。普段、まず着ないでしょう。そんなきっちりした服」
「……ああ、確かに。以前、友達の結婚式で1回着ただけですしね。正直、今でもちょっと窮屈っす」
「……全く、貴方らしいわね」
エレベーターを降り会場へ向かう最中、今更ながらそう伝えてみる。何のことかと言うと、彼の姿――普段はまずお目にかかれない、漆黒の燕尾服を纏った姿のことで。
と言うのも、ここは高級店であるからしてドレスコードが存在する。なので、急に誘っておいて申し訳ないけれど、彼にはここに来るまでにいったん家に戻り然るべき服装に着替えてもらっていたわけで。……いや、ほんと持ってて良かった。彼が出席したという、その結婚式のお友達に感謝ね。
……さて、それはそうと――
「……ん? どうかしました先輩?」
「あ、いえ……」
そう、首を傾げ尋ねる戸波くん。そして、そんな彼に目を逸らし答える私。いや、答えてないか。ただ……うん、流石に言えないよね。……その、普段と違う彼の姿に胸が――
「……それにしても、いつもですけど……いつも以上にいっそう綺麗ですね、今日の先輩」
「……っ!? ……そ、そう……」
「ええ、とっても!」
そんな彼の不意打ちに、いっそう鼓動が速まる私。うん、分かっている。彼同様、平時よりきちんとした服装をしてる私を褒めてくれただけ。別に、深い意味なんてない。分かってるけど……全く、心臓に悪い。
「……そう、気に入ってくれて何よりだわ」
それから、30分ほど経て。
そう、目を輝かせ話す美男子。こういう表情をしてくれるだけでも、ここに連れてきた甲斐があるというもので。……うん、ほんと良かった。キャンセルするの忘れてて。
さて、私達がいるのは広々とした玄関口――25階建ての高層タワーにて、来客を迎える玄関口で。……うん、未だに慣れない。まあ、私自身こういう日にしか来ないわけだし。
『……えっ、マジっすか!? やった、タダで飯にありつける! それもフレンチ!』
良かったら、一緒に食事でもどうかしら――予定の有無を確認した後そう尋ねると、目を輝かせそう口にする戸波くん。まるで子どものようなその反応に、さっきまで暗鬱を一瞬忘れ思わず笑みが洩れてしまう。
ともあれ、そういうわけで今向かっているのはこのタワーの21階に位置する高級フレンチ店――繰り返しになるけど、こういう日にしか来ない何とも敷居が高……そういえば、本来の意味は違ったっけ? この表現。……うん、まあいっか。
……ところで、それはそうと――
「……それにしても、やっぱり随分と見違えるものなのね」
「……へっ?」
「貴方のその格好よ。普段、まず着ないでしょう。そんなきっちりした服」
「……ああ、確かに。以前、友達の結婚式で1回着ただけですしね。正直、今でもちょっと窮屈っす」
「……全く、貴方らしいわね」
エレベーターを降り会場へ向かう最中、今更ながらそう伝えてみる。何のことかと言うと、彼の姿――普段はまずお目にかかれない、漆黒の燕尾服を纏った姿のことで。
と言うのも、ここは高級店であるからしてドレスコードが存在する。なので、急に誘っておいて申し訳ないけれど、彼にはここに来るまでにいったん家に戻り然るべき服装に着替えてもらっていたわけで。……いや、ほんと持ってて良かった。彼が出席したという、その結婚式のお友達に感謝ね。
……さて、それはそうと――
「……ん? どうかしました先輩?」
「あ、いえ……」
そう、首を傾げ尋ねる戸波くん。そして、そんな彼に目を逸らし答える私。いや、答えてないか。ただ……うん、流石に言えないよね。……その、普段と違う彼の姿に胸が――
「……それにしても、いつもですけど……いつも以上にいっそう綺麗ですね、今日の先輩」
「……っ!? ……そ、そう……」
「ええ、とっても!」
そんな彼の不意打ちに、いっそう鼓動が速まる私。うん、分かっている。彼同様、平時よりきちんとした服装をしてる私を褒めてくれただけ。別に、深い意味なんてない。分かってるけど……全く、心臓に悪い。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜
来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———
しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」
100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。
しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。
戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。
しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。
そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。
「100年間、貴女を探し続けていた———
もう二度と離れない」
ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア)
——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。
「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」
ユリウス・フォン・エルム(エルフ)
——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。
「お前は弱い。だから、俺が守る」
シグ・ヴァルガス(魔族)
——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。
「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」
フィン・ローゼン(人間)
——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。
それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。
忠誠か、執着か。
守護か、支配か。
愛か、呪いか——。
運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。
その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。
——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
同期に恋して
美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務
高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部
同期入社の2人。
千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。
平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。
千夏は同期の関係を壊せるの?
「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。
【完結】この胸に抱えたものは
Mimi
恋愛
『この胸が痛むのは』の登場人物達、それぞれの物語。
時系列は前後します
元話の『この胸が痛むのは』を未読の方には、ネタバレになります。
申し訳ありません🙇♀️
どうぞよろしくお願い致します。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる