恋愛短編集〜ファンタジー編2〜

暦海

文字の大きさ
9 / 15
遣らずの雨

願い

しおりを挟む
「…………あの、どうして……」


 そう、覚束ない口調で尋ねる私。……いったい、どうしてここに? だって、雨は先ほど降ったばかり……なのに、今彼がここにいるのは甚だ不可解で――


「……やはり、そういうことでしたか」
「……へっ?」

 そんな困惑の最中なか、ポツリと呟く翠明すいめいさま。……そういうこと? それは、いったいどういう――


「……心から強く願うことで、実際に雨を降らせる能力ちからがある……先日、貴女はそのように仰っていましたね。澄玲すみれさま」 
「……へっ? あ、はい……なので、きっとこの雨も私の願いにより……」
「……ですが、だとしたら今の状況に些か説明がつかないかと。何故なら、本来なら私は今頃とうにこの村を後にしているはずですし、澄玲さまご自身もそのようにお考えだったかと思われます。ならば、私が戻って来ることを願ってくださっていたとしても、もはや雨が降ることを願う理由はないものかと」
「……確かに、そうですね……」

 すると、柔和に微笑みそう告げる翠明さま。……確かに、それはそうかも。仮に雨が降っても、もう戻って来ることはない――確かに、私はそのように考えていたのですから。……だとしたら、偶然? ……いえ、でもは私が願った際のものとほぼ同様ですし……いえ、それ以前にどうして翠明さまはお戻りに――


「……日照りで困っていた方々を救うべく、雨を願うことで本当に……もちろん、それか貴女の本心であることは疑う余地もありません。貴女は、本当に優しく暖かなお心の持ち主なので」
「……へっ? あっ、いえそんなことは……」
「……ですが、そもそもそれは誰の望みだったのでしょう? その時々の状況にて、最も雨を欲していたのはどなただったのでしょう」
「……誰の、望み……っ!! ……まさか」

 すると、柔和に微笑みそう口にする翠明さま。……誰の、望み……それは、もはや考えるまでもなく、あまりにも明確で――


「……ええ、澄玲さま。恐らくですが……貴女のお能力ちからはご自身の願いではなく、に応じ雨を降らせるという能力ものです」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

あなたが後悔しても、私の愛はもう戻りません

藤原遊
恋愛
婚約者のアルベルトは、優しい人だった。 ただ――いつも、私より優先する存在がいただけで。 「君は分かってくれると思っていた」 その一言で、リーシェは気づいてしまう。 私は、最初から選ばれていなかったのだと。 これは、奪われた恋を取り戻す物語ではない。 後悔する彼と、もう戻らないと決めた私、 そして“私を選ぶ人”に出会うまでの、静かな恋の終わりと始まりの物語。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

最近のよくある乙女ゲームの結末

叶 望
恋愛
なぜか行うことすべてが裏目に出てしまい呪われているのではないかと王妃に相談する。実はこの世界は乙女ゲームの世界だが、ヒロイン以外はその事を知らない。 ※小説家になろうにも投稿しています

恋した悪役令嬢は余命一年でした

葉方萌生
恋愛
イーギス国で暮らすハーマス公爵は、出来の良い2歳年下の弟に劣等感を抱きつつ、王位継承者として日々勉学に励んでいる。 そんな彼の元に突如現れたブロンズ色の髪の毛をしたルミ。彼女は隣国で悪役令嬢として名を馳せていたのだが、どうも噂に聞く彼女とは様子が違っていて……!?

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

【完結】恋の終焉~愛しさあまって憎さ1000倍~

つくも茄子
恋愛
五大侯爵家、ミネルヴァ・リゼ・ウォーカー侯爵令嬢は第二王子の婚約者候補。それと同時に、義兄とも婚約者候補の仲という複雑な環境に身を置いていた。 それも第二王子が恋に狂い「伯爵令嬢(恋人)を妻(正妃)に迎えたい」と言い出したせいで。 第二王子が恋を諦めるのが早いか。それとも臣籍降下するのが早いか。とにかく、選ばれた王子の婚約者候補の令嬢達にすれば迷惑極まりないものだった。 ミネルヴァは初恋の相手である義兄と結婚する事を夢見ていたというに、突然の王家からの横やりに怒り心頭。それでも臣下としてグッと堪えた。 そんな中での義兄の裏切り。 愛する女性がいる? その相手と結婚したい? 何を仰っているのでしょうか? 混乱するミネルヴァを置き去りに義兄はどんどん話を続ける。 「お義兄様、あなたは婿入りのための養子縁組ですよ」と言いたいのをグッと堪えたミネルヴァであった。義兄を許す?許さない?答えは一つ。

処理中です...