94 / 131
二学期です。
しおりを挟む
「――おはよう、皆。こうして一人も欠けることなく皆の顔が見られて、本当に嬉しいよ。今日からまた宜しくね」
それから、一週間ほど経て。
教壇にて、柔らかな微笑で話し掛ける先生。そんな彼の言葉に、改めて心が躍る。と言うのも、言わずもがなかもしれないけど今日は始業式――待ちに待った、二学期始業式の日で。やった、また登校できる! また教室でみんなと勉強できる! 日坂くんや織部《おりべ》さんにまた会える! 毎日、斎宮さんに会える!
「いやー久しぶりだね! ここで、こうして新里と会うの」
【はい、斎宮さん。この日を心待ちにしておりました】
「うん、あたしも!」
それから、暫くして。
久方ぶりの空き教室にて、テンション高めにやり取りを交わす僕ら。こうしてまたここで話せることも嬉しいし、斎宮さんも同じ気持ちでいてくれることでいっそう嬉しくなる。
その後、他愛もない話に花を咲かせているとほどなく日坂くんが来訪。これまて久しぶりに三人で話したり卓球をしたりと大変楽しく充実した時間を……うん、こんな日がまたずっと続くといいな。
……ところで、それはそれとして――
「……ところでさ、新里。最近、織部さんと話した? もしくは、ちょっとした連絡とか……」
【……いえ、最近は何も……】
「……そっか」
それから、二週間ほど経て。
空き教室にて、少し躊躇う様子で切り出す斎宮さん。恐らくは、今日のどこかで話そうと思っていたのだろう。
そして、僕もずっと気にかかっていたことで。と言うのも――夏休みに入る二週間くらいから、すっかり空き教室に姿を見せなくなっていて。
さて、改めて説明すると――七月上旬のある日を境に、彼女はめっきり空き教室に姿を見せなくなって。尤も、夏休みを挟んでいるので実質は前後合わせて四週間くらいなんだけど……それでも、それだけの期間、彼女が姿を見せなかったことはそれまでなくて。
ちなみに、夏休みに関してだけど――迷惑かなとは思いつつ何度か連絡をしてみても、応答は一切なく。……まあ、僕が嫌われてるだけなら構わない。すごく悲しいけど、それなら仕方がないわけで。
だけど……きっと思い上がりでなく、それはないかなとも思う。と言うのも、学校には来ているみたいで、校舎内で出会すことも時々あるんだけど、その際の印象から嫌われてるようにはとても思えなくて。なので、そこに関してはホッと安堵を……うん、ほんと嫌になるね。こんな浅ましい自分が。
……ただ、それはそれとして――
「……やっぱり、心配だよね」
「……はい、とても」
そう、言葉の通り心配そうに呟く斎宮さん。そんな彼女に、僕も全面的に同意を示す。もちろん、ここに来るも来ないも織部さんの自由……寂しくはあるけど、来ないこと自体は仕方がない。
だけど、校舎で会った際――話していないと言ったものの、厳密には会話一つしていないというわけではないのだけども――その際、織部さんの様子がそれまでと異なって……具体的には、どこか元気がないように見受けられて。
……うん、分かってる。余計なお世話だって、分かってる。だけど……それでも、彼女のために何か出来ることがあれば、と思わずにはいられなくて。
それから、一週間ほど経て。
教壇にて、柔らかな微笑で話し掛ける先生。そんな彼の言葉に、改めて心が躍る。と言うのも、言わずもがなかもしれないけど今日は始業式――待ちに待った、二学期始業式の日で。やった、また登校できる! また教室でみんなと勉強できる! 日坂くんや織部《おりべ》さんにまた会える! 毎日、斎宮さんに会える!
「いやー久しぶりだね! ここで、こうして新里と会うの」
【はい、斎宮さん。この日を心待ちにしておりました】
「うん、あたしも!」
それから、暫くして。
久方ぶりの空き教室にて、テンション高めにやり取りを交わす僕ら。こうしてまたここで話せることも嬉しいし、斎宮さんも同じ気持ちでいてくれることでいっそう嬉しくなる。
その後、他愛もない話に花を咲かせているとほどなく日坂くんが来訪。これまて久しぶりに三人で話したり卓球をしたりと大変楽しく充実した時間を……うん、こんな日がまたずっと続くといいな。
……ところで、それはそれとして――
「……ところでさ、新里。最近、織部さんと話した? もしくは、ちょっとした連絡とか……」
【……いえ、最近は何も……】
「……そっか」
それから、二週間ほど経て。
空き教室にて、少し躊躇う様子で切り出す斎宮さん。恐らくは、今日のどこかで話そうと思っていたのだろう。
そして、僕もずっと気にかかっていたことで。と言うのも――夏休みに入る二週間くらいから、すっかり空き教室に姿を見せなくなっていて。
さて、改めて説明すると――七月上旬のある日を境に、彼女はめっきり空き教室に姿を見せなくなって。尤も、夏休みを挟んでいるので実質は前後合わせて四週間くらいなんだけど……それでも、それだけの期間、彼女が姿を見せなかったことはそれまでなくて。
ちなみに、夏休みに関してだけど――迷惑かなとは思いつつ何度か連絡をしてみても、応答は一切なく。……まあ、僕が嫌われてるだけなら構わない。すごく悲しいけど、それなら仕方がないわけで。
だけど……きっと思い上がりでなく、それはないかなとも思う。と言うのも、学校には来ているみたいで、校舎内で出会すことも時々あるんだけど、その際の印象から嫌われてるようにはとても思えなくて。なので、そこに関してはホッと安堵を……うん、ほんと嫌になるね。こんな浅ましい自分が。
……ただ、それはそれとして――
「……やっぱり、心配だよね」
「……はい、とても」
そう、言葉の通り心配そうに呟く斎宮さん。そんな彼女に、僕も全面的に同意を示す。もちろん、ここに来るも来ないも織部さんの自由……寂しくはあるけど、来ないこと自体は仕方がない。
だけど、校舎で会った際――話していないと言ったものの、厳密には会話一つしていないというわけではないのだけども――その際、織部さんの様子がそれまでと異なって……具体的には、どこか元気がないように見受けられて。
……うん、分かってる。余計なお世話だって、分かってる。だけど……それでも、彼女のために何か出来ることがあれば、と思わずにはいられなくて。
0
あなたにおすすめの小説
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる