お后さまの召使い

暦海

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羨望の的?

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「――ねえねえ、前から聞いてるけど伊織いおり先生ってほんとに彼女いないの?」
「うん、前から言ってるけどほんとにいないよ」
「じゃあさ、立候補して良い? あたし」
「あっ、ずるいよ陽菜ひな! 先生、だったら私も!」
「いやいや、藤本ふじもとさんも早川はやかわさんも、僕なんかよりもっと素敵な人がお似合いだよ」
「またまたぁ、先生ったら謙遜しちゃって!」


 京都府内の公立高、平陽へいよう高校――その校舎三階に在する、二年四組の教室にて。
 ある平日のこと。
 放課後、教壇にて教え子の女子生徒とそんなやり取りを交わす。基本コミュ障で、尚かつ歳の差もあり距離感が掴めない僕にこうして気さくに話し掛けてくれるのは本当に有り難い。そして、彼女達のようにコミュ力が高い人は本当に羨ましいと改めて……いや、この言い方は良くないかな。きっと、彼女達にも積み重ねて来たものがあるのだろうし。


「ところでさ、先生ってほんと綺麗だよね。化粧品、とかも使ってる感じないし……と言うか、化粧品使ってもこんな綺麗にならないよね」
「ほんとだよね。男性なのに、って言ったら偏見っぽくなっちゃうけど……でも、女性でも見たことないよ、こんな綺麗な人。普段、どんなケアしてるの?」
「……綺麗、だなんてそんな……でも、ありがとう二人とも。そうだね、何かしてると言うか……うん、健康的な生活は心がけてるかな」


 その後、僕をじっと見つめそう告げてくれる藤本さんと早川さん。綺麗だなんて、僕には過分にして勿体ないお言葉だけど――もしも僕の行動の中で美容に何かしらの貢献要素があるとしたら、それはきっと日々意識している健康的な生活の他なくて。



 
「…………これ、かな?」


 それから、一時間ほど経て。
 そう、ポツリと零す。そんな僕がいるのは、校舎の一階に在する図書室。理由は、二日後の授業のための資料を探すため。……まあ、本来ならもっと早くに準備出来たら良かったんだけど……その、言い訳ながらわりと忙しくて。

 ともあれ、目的の資料――平安時代の文化についての書籍を見つけることに成功。まあ、もちろんその関連の本はこれだけじゃないんだけど……どうしてか、このタイトル……と言うか、この本自体に直観的にこれだと思えて。それに、上手く言えないけど……どうしてか、この本からはどうにも抗いがたい魔力のような……うん、何を言ってるんだろうね僕は。もしかして、わりと疲れてるのかな?

 ともあれ、準備を終えたら今日はゆっくり休むことを決意しつつそっと本に手を添える。そして、決して傷めぬようそっと引き抜き――


 ――――パッ。


「…………へっ?」




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