お后さまの召使い

暦海

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ここはどこ?

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「……ここ、は……」


 そう、ポツリと呟く。そんな僕の視界には、雲一つない青い空。そして、背中側には柔らかな――恐らくは、砂の感触。……えっと、どゆこと? 僕はただ、本を取ろうとして……それで、急にパッと辺り一帯が光に包まれて……うん、どゆこと?

 ともあれ、大いに困惑しつつもゆっくりと身体を起こす。すると、映ったのは息を呑むほどに彩り豊かで広大な庭園。そして、心地良く鼓膜を揺らす小鳥のさえずりや虫の鳴き声。そんな、さながら桃源郷のような世界に僕はただただ茫然と……いや、まあ行ったことないけども、桃源郷。

 だけど、驚くべきはそこだけでなく――ぐるりと視線を移すと、庭園を囲うように映るは遠目からでも分かる鴻大こうだいで荘厳な数多の建物。そして、その中でも一際目を引く朱を基調とした鮮やかな建物――その左右には、それぞれ見事に咲き誇る橘と桜……ひょっとして、ここは――


「…………へっ?」


 卒然、微かに届く短い声。ハッと振り返ると、そこには――


「…………あの、貴方は……?」


 薄桃色を基調とした、見るも優雅な衣装を纏う一人の少女――そんな彼女が、僕をじっと見ながら茫然と佇んでいて。


 しばし、茫然とする二人。眼前には、10代半ばとおぼしき清麗な少女。背中まで伸びる艷やかな黒髪に、吸い込まれそうなほどに深く澄んだ瞳、そして陶器のように透き通る肌。それはまるで、この世のものとは思えな……いや、それはともあれ――

「……あっ、その、僕は決して怪しい者ではなく――」

 そう、慌てて口にする。……まあ、説得力皆無であることは重々承知だけども……それでも、今僕に出来るのはとにかく潔白を証明することだけで――


「……随分と」
「……へっ?」
「……随分と、不思議な服装をなさっていますね。いったい、どちらから来られたのでしょう?」
「……へっ? あっ、その……」

 すると、僕の弁解を気にした様子もなくそう問い掛ける少女。そんな彼女の言葉を受け、自身の身体へ目を向ける――こちらは図書室の時そのままの、仕事用の黒のスーツへ。……えっと、これが不思議? まあ、この雅な場にはそぐわない気もするけど……でも、不思議な服装とはいったい――

 ……いや、そんなことより今は返事だ。でも、どちらからと言うのが正解なのか――


「……ところで、初見から感じてはいましだが……随分と、綺麗なお顔をしていらっしゃいますね」
「…………へっ? あっ、ありがとうございます……」

 そんな具合に頭を悩ませていると、不意に届いたのは思いも寄らない称賛のお言葉。それも、キラキラと無邪気に目を輝かせて。……いや、貴女の方がお綺麗だと思いますが、それはともあれ――


「――ともあれ、貴方もそのように察せられますが、私の方も思いも寄らない状況に大変困惑しております。なので――是非とも、詳しくお話を聞かせていただけますか?」
「……へっ? あ、はい……」

 すると、柔和に微笑みそう問い掛ける少女。そんな彼女に、たどたどしく答え頷く僕。えっと、何はともあれ……うん、ひとまず助かった、のかな?

 


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