6 / 14
ちょっぴり怖い?
しおりを挟む
「ときに桐壺さん。そちらが、例の新しい女房さん?」
「ええ、藤壺さま。こちらは伊織――とある素敵な縁に恵まれ、昨日より私に仕えてもらっています」
「……あっ、その……ただ、今ご紹介に与りました伊織と申します。宜しくお願いします、藤壺さま」
「……ふふっ、随分と綺麗な御方。ええ、宜しくね伊織さん。わたくしは藤壺――誠に畏れ多くも、帝さまの皇后という立場なのですよ」
「……皇后、さま……」
その後、ほどなく莞爾とした笑顔で仰る少女。……皇后、さま……ということは、正妻――即ち、数多の后さまの中でも最上位に位置する少女ということ。そして、そんな彼女は月夜さまとはまた違った何処か妖艶な魅力が――
「――おや、伊織。何やら随分と見蕩れているように見えるのは、果たして私の気のせいでしょうか?」
すると、隣からにこっと満面の笑みでそう問い掛ける月夜さま。それは何とも可憐で素敵な笑顔、なのだけども……だけど、心做しかその笑顔はちょっぴり怖く……いや、見蕩れてはいませんよ? ただ、すっごく綺麗だなと思っただけで。
……ただ、それはともあれ――
「……あの、藤壺さま……?」
そう、ポツリと呟く。と言うのも――そんなやんごとなき少女が、まるで何かを探るようにじっと僕を見つめているから。……まずい、やっぱりバレ――
「……随分と、髪が短いようですが……何か、よんどころなきご事情が?」
「……へっ? あっ、その、ぼ……いえ、私は本来数ならぬ一介の庶民に過ぎず、よもやこのような高貴な場に参上――あまつさえ、このような素敵な御方にお仕えさせていただけることになろうとは露思わず、最近バサリと切ってしまって……」
「……そう、そのようなご事情が。まあ、よほど急なことだったのでしょうね。お気の毒に」
「……ご気遣い、痛み入ります藤壺さま」
すると、そんな恐怖の最中ややあって問いを掛ける藤壺さま。そして、何ともたどたどしい僕の説明に多少なりとも理解を示してくださったようで……ふぅ、良かった。とりわけ髪に関しては誰かに問われる可能性が高いと思っていたので、苦しいながらも一応言い訳を用意しておいたのだけど……うん、何とかごまかせたようで。
ところで、僕が纏っているこの衣装――いわゆる女房装束についてなのだけど、単という上半身用の下着の上に、袿という上着を数枚重ねて着ている。そして、下半身には袴を着用。あと、細かい所を言えば他にも色々とあるのだけど……でも、くどくなりそうなのでひとまずこの辺りにしておきます。
ともあれ、何が言いたいのかというと――僕自身、全く経験がないほど何枚もの衣服を重ね着ているので幸い身体のラインはほぼ隠せているということ。そして、改めてだけど髪に関しては――これまた幸い、そろそろ切ろうと思っていた頃だったので少し長めに残っていて。なので、どうにか短めの女性に見えないこともないようで……うん、ほんと良かった。あと二日ほど平安に来るのが遅かったら、きっと……まあ、それでもご指摘を受けるくらいには圧倒的に短いんだけども。
……ただ、それはそれとして――
「……あの、どうかなさいましたか月夜さま」
「ふふっ、何でもありませんよ伊織」
ふと、隣へ問い掛ける。隣で、頗る嬉しそうな笑顔を浮かべる月夜さまへと。でも、急にどうして……いや、何でもいいか。当然ながら、彼女が嬉しいのであれば何も問題などないのだし。
「ええ、藤壺さま。こちらは伊織――とある素敵な縁に恵まれ、昨日より私に仕えてもらっています」
「……あっ、その……ただ、今ご紹介に与りました伊織と申します。宜しくお願いします、藤壺さま」
「……ふふっ、随分と綺麗な御方。ええ、宜しくね伊織さん。わたくしは藤壺――誠に畏れ多くも、帝さまの皇后という立場なのですよ」
「……皇后、さま……」
その後、ほどなく莞爾とした笑顔で仰る少女。……皇后、さま……ということは、正妻――即ち、数多の后さまの中でも最上位に位置する少女ということ。そして、そんな彼女は月夜さまとはまた違った何処か妖艶な魅力が――
「――おや、伊織。何やら随分と見蕩れているように見えるのは、果たして私の気のせいでしょうか?」
すると、隣からにこっと満面の笑みでそう問い掛ける月夜さま。それは何とも可憐で素敵な笑顔、なのだけども……だけど、心做しかその笑顔はちょっぴり怖く……いや、見蕩れてはいませんよ? ただ、すっごく綺麗だなと思っただけで。
……ただ、それはともあれ――
「……あの、藤壺さま……?」
そう、ポツリと呟く。と言うのも――そんなやんごとなき少女が、まるで何かを探るようにじっと僕を見つめているから。……まずい、やっぱりバレ――
「……随分と、髪が短いようですが……何か、よんどころなきご事情が?」
「……へっ? あっ、その、ぼ……いえ、私は本来数ならぬ一介の庶民に過ぎず、よもやこのような高貴な場に参上――あまつさえ、このような素敵な御方にお仕えさせていただけることになろうとは露思わず、最近バサリと切ってしまって……」
「……そう、そのようなご事情が。まあ、よほど急なことだったのでしょうね。お気の毒に」
「……ご気遣い、痛み入ります藤壺さま」
すると、そんな恐怖の最中ややあって問いを掛ける藤壺さま。そして、何ともたどたどしい僕の説明に多少なりとも理解を示してくださったようで……ふぅ、良かった。とりわけ髪に関しては誰かに問われる可能性が高いと思っていたので、苦しいながらも一応言い訳を用意しておいたのだけど……うん、何とかごまかせたようで。
ところで、僕が纏っているこの衣装――いわゆる女房装束についてなのだけど、単という上半身用の下着の上に、袿という上着を数枚重ねて着ている。そして、下半身には袴を着用。あと、細かい所を言えば他にも色々とあるのだけど……でも、くどくなりそうなのでひとまずこの辺りにしておきます。
ともあれ、何が言いたいのかというと――僕自身、全く経験がないほど何枚もの衣服を重ね着ているので幸い身体のラインはほぼ隠せているということ。そして、改めてだけど髪に関しては――これまた幸い、そろそろ切ろうと思っていた頃だったので少し長めに残っていて。なので、どうにか短めの女性に見えないこともないようで……うん、ほんと良かった。あと二日ほど平安に来るのが遅かったら、きっと……まあ、それでもご指摘を受けるくらいには圧倒的に短いんだけども。
……ただ、それはそれとして――
「……あの、どうかなさいましたか月夜さま」
「ふふっ、何でもありませんよ伊織」
ふと、隣へ問い掛ける。隣で、頗る嬉しそうな笑顔を浮かべる月夜さまへと。でも、急にどうして……いや、何でもいいか。当然ながら、彼女が嬉しいのであれば何も問題などないのだし。
0
あなたにおすすめの小説
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる