12 / 14
偶然
しおりを挟む
「――ところで、伊織。心做しか、帝さまからのお呼びがない夜のみ体調を崩されているようですけど――果たして、これは偶然でしょうか?」
「……あ、えっと、その……」
それから、一週間ほど経た朝のこと。
柔らかな陽が優しく差し込む麗らかなお部屋にて、可憐に微笑み尋ねる麗しき少女。……だけど、どうしてか全く笑っている気がしない。お部屋の雰囲気とは対照的に、何とも穏やかならぬご心中のようでして。
さて、月夜さまの仰っていることとは……まあ、説明するまでもないかな? 今しがたのお言葉通り、帝さまからのお呼びがない――言い換えれば、彼女が淑景舎でお眠りになる夜のみ僕の体調が悪くなることにたいそう疑念を抱いていらっしゃるようで。……まあ、そりゃそうだよね。毎回、そんなピンポイントで悪くなるわけないだろうし。
「……ひょっとして、ですが……伊織は、嫌なのでしょうか? 私と、そういう行為をするのが」
「いっ、いえ滅相もございません月夜さま!」
「……でしたら、どうして毎回……それとも、他の方々の方が良いとか。例えば、藤壺さまとか梨壺さまとか」
「いえ、そういうわけでもなく……」
その後、僕をじっと見つめ尋ねる月夜さま。そんな彼女に、僕は慌ててお答えを……いえ、決して嫌というわけではなく……ただ、令和に生きる僕としてはやはり問題だと感じてしまうのと……あと、情けなくも単純にビビってまして。と言うのも……その、恥ずかしながらそういう経験が皆無なわけでして。
……まあ、それはともあれ……さて、何とお答えすべきか。もしも正解があるとすれば、それは彼女の要望に応えるということになるのだろうけど……うん、やはり今の僕には難しい。なので――
「……ご要望に添えず、大変申し訳ありません。……ですが、僕は誰より月夜さまを深くお慕いしております」
そう、目を見つめ告げる。吸い込まれそうなほどに深く澄んだ、その清麗な瞳を。……うん、答えになってないね。でも、今の僕に言えるのはきっとこれだ――
「……そ、そう、ですか。……まあ、今回のところは看過して差し上げます。ひょっとすると、本当に体調が優れないのかもしれませんし」
「……っ!! 寛大なお言葉、ありがとうございます月夜さま」
すると、ややあってそう口になさる月夜さま。心做しか、少し逸らしたそのお顔はほんのり朱に染まっているように見……いや、気のせいかな? まあ、それはともあれ、ひとまずはお許しいただけたようで……ふぅ、良かった。
「……あ、えっと、その……」
それから、一週間ほど経た朝のこと。
柔らかな陽が優しく差し込む麗らかなお部屋にて、可憐に微笑み尋ねる麗しき少女。……だけど、どうしてか全く笑っている気がしない。お部屋の雰囲気とは対照的に、何とも穏やかならぬご心中のようでして。
さて、月夜さまの仰っていることとは……まあ、説明するまでもないかな? 今しがたのお言葉通り、帝さまからのお呼びがない――言い換えれば、彼女が淑景舎でお眠りになる夜のみ僕の体調が悪くなることにたいそう疑念を抱いていらっしゃるようで。……まあ、そりゃそうだよね。毎回、そんなピンポイントで悪くなるわけないだろうし。
「……ひょっとして、ですが……伊織は、嫌なのでしょうか? 私と、そういう行為をするのが」
「いっ、いえ滅相もございません月夜さま!」
「……でしたら、どうして毎回……それとも、他の方々の方が良いとか。例えば、藤壺さまとか梨壺さまとか」
「いえ、そういうわけでもなく……」
その後、僕をじっと見つめ尋ねる月夜さま。そんな彼女に、僕は慌ててお答えを……いえ、決して嫌というわけではなく……ただ、令和に生きる僕としてはやはり問題だと感じてしまうのと……あと、情けなくも単純にビビってまして。と言うのも……その、恥ずかしながらそういう経験が皆無なわけでして。
……まあ、それはともあれ……さて、何とお答えすべきか。もしも正解があるとすれば、それは彼女の要望に応えるということになるのだろうけど……うん、やはり今の僕には難しい。なので――
「……ご要望に添えず、大変申し訳ありません。……ですが、僕は誰より月夜さまを深くお慕いしております」
そう、目を見つめ告げる。吸い込まれそうなほどに深く澄んだ、その清麗な瞳を。……うん、答えになってないね。でも、今の僕に言えるのはきっとこれだ――
「……そ、そう、ですか。……まあ、今回のところは看過して差し上げます。ひょっとすると、本当に体調が優れないのかもしれませんし」
「……っ!! 寛大なお言葉、ありがとうございます月夜さま」
すると、ややあってそう口になさる月夜さま。心做しか、少し逸らしたそのお顔はほんのり朱に染まっているように見……いや、気のせいかな? まあ、それはともあれ、ひとまずはお許しいただけたようで……ふぅ、良かった。
0
あなたにおすすめの小説
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる