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理由
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「……ところで、中将さま。姫さまには、どのようなところにお惹かれになったので……あっ、決してお二人を悪く言う意図などなく! ただ、どのようなところにと気になってしまっただけで……」
「ふふっ、そう焦らなくても分かっているよ、惟近。今までの私を見ていれば、そう思うのは無理からぬことだよ」
「……ご理解、ありがとうございます中将さま」
それから、数時間経た麗らかな小昼の頃。
和の雰囲気漂う中将さまのお部屋にて、自分で言って一人で焦る滑稽な僕に、少し可笑しそうに微笑み告げる中将さま。……ふぅ、誤解されなくて良かった。
ただ、どうしても気になってはしまって。と言うのも――中将さまはその麗しき美貌や寛厚なお人柄など、数え上げればきりが無い数多の魅力にてこれまでも数多の女性から想いを寄せられていた。それこそ、帝さまから直々に娘を、とのお申し出さえあって。
だけど、中将さまは全ての申し出をお断りなさっていた。……まあ、帝さま直々のお申し出をお断りするのは相当なリスクだとは思うのだけど……それでも、きっと中将さまの中では譲れない理由がおありで。
「……うーん、そうだね。容姿や人柄など、彼女の魅力は一言では表せないけれど……だけど、最も惹かれたのは、私と同じ類の幸せを願っていたところかな」
「……そう、なのですね」
「ん? これでは不満かな?」
「ああいえ、滅相もございません! とても中将さまらしい素敵な理由で――」
「ふふっ、冗談だよ。惟近はとても素直で何でも本気で受け取ってしまうから、つい揶揄いたくなるんだよ」
「……全く、人の悪い御方です」
すると、お言葉の通り揶揄うように微笑みお告げになる中将さま。……全く、人の悪い。まあ、そういうところも可愛らしいのだけど。
……ただ、それはそうと……同じ類を幸せを願っている、か。中将さまのお幸せとは、いったい……いや、僕が考えても仕方がないか。それより――
「……自分自身、力不足であることは重々承知しているつもりです。それでも……他ならぬ中将さまのお幸せのためなら、僕に出来ることは何でもする所存です」
「……うん、ありがとう惟近。力不足なんてとんでもない、大いに頼りにしているよ」
「……っ!! はい、もちろんです中将さま!」
そう、彼の瞳を真っ直ぐに見つめ告げる。すると、ふわっと微笑み答えてくださる中将さま。そう、僕が出来ること、すべきことは敬愛する恩人たる中将さまのお役に少しでも立つこと。中将さまのお幸せのために、少しでもお役に立つことの他ないのだから。
「……ところで惟近、申し訳ないのだけど……こちらを姫君の下に届けてはくれないだろうか」
「はい、もちろんです中将さま」
その後、ややあってお言葉の通り申し訳なさそうにそう仰る中将さま。だけど、申し訳なく思う必要などまるでない。そもそもこれは中将さまの従者たる僕の役目だし、何より中将さまのお役に立てることが嬉しいわけだし。
さて、どんなお役目かというと――中将さまの認めた文を、お相手たる姫さまの下へお届けすること。後朝の文と呼ばれる、男性が女性の下を訪れた翌日に届ける和歌を認めた文を。ちなみに、これは中将さまが直接お伺いするのを面倒がっているというわけではなく、こういうのは互いの従者を通してお届けすると決まっていて。なので、お渡しする相手は姫さまご本人ではなく彼女の従者――つまりは、光里さんということになるわけだけだけど……ともあれ、お任せください中将さま! 貴方の真摯な想いの籠もったこの恋文、必ずや姫さまへとお届け……いや、まあそんなに意気込みほどの難題じゃないんだけども。
「ふふっ、そう焦らなくても分かっているよ、惟近。今までの私を見ていれば、そう思うのは無理からぬことだよ」
「……ご理解、ありがとうございます中将さま」
それから、数時間経た麗らかな小昼の頃。
和の雰囲気漂う中将さまのお部屋にて、自分で言って一人で焦る滑稽な僕に、少し可笑しそうに微笑み告げる中将さま。……ふぅ、誤解されなくて良かった。
ただ、どうしても気になってはしまって。と言うのも――中将さまはその麗しき美貌や寛厚なお人柄など、数え上げればきりが無い数多の魅力にてこれまでも数多の女性から想いを寄せられていた。それこそ、帝さまから直々に娘を、とのお申し出さえあって。
だけど、中将さまは全ての申し出をお断りなさっていた。……まあ、帝さま直々のお申し出をお断りするのは相当なリスクだとは思うのだけど……それでも、きっと中将さまの中では譲れない理由がおありで。
「……うーん、そうだね。容姿や人柄など、彼女の魅力は一言では表せないけれど……だけど、最も惹かれたのは、私と同じ類の幸せを願っていたところかな」
「……そう、なのですね」
「ん? これでは不満かな?」
「ああいえ、滅相もございません! とても中将さまらしい素敵な理由で――」
「ふふっ、冗談だよ。惟近はとても素直で何でも本気で受け取ってしまうから、つい揶揄いたくなるんだよ」
「……全く、人の悪い御方です」
すると、お言葉の通り揶揄うように微笑みお告げになる中将さま。……全く、人の悪い。まあ、そういうところも可愛らしいのだけど。
……ただ、それはそうと……同じ類を幸せを願っている、か。中将さまのお幸せとは、いったい……いや、僕が考えても仕方がないか。それより――
「……自分自身、力不足であることは重々承知しているつもりです。それでも……他ならぬ中将さまのお幸せのためなら、僕に出来ることは何でもする所存です」
「……うん、ありがとう惟近。力不足なんてとんでもない、大いに頼りにしているよ」
「……っ!! はい、もちろんです中将さま!」
そう、彼の瞳を真っ直ぐに見つめ告げる。すると、ふわっと微笑み答えてくださる中将さま。そう、僕が出来ること、すべきことは敬愛する恩人たる中将さまのお役に少しでも立つこと。中将さまのお幸せのために、少しでもお役に立つことの他ないのだから。
「……ところで惟近、申し訳ないのだけど……こちらを姫君の下に届けてはくれないだろうか」
「はい、もちろんです中将さま」
その後、ややあってお言葉の通り申し訳なさそうにそう仰る中将さま。だけど、申し訳なく思う必要などまるでない。そもそもこれは中将さまの従者たる僕の役目だし、何より中将さまのお役に立てることが嬉しいわけだし。
さて、どんなお役目かというと――中将さまの認めた文を、お相手たる姫さまの下へお届けすること。後朝の文と呼ばれる、男性が女性の下を訪れた翌日に届ける和歌を認めた文を。ちなみに、これは中将さまが直接お伺いするのを面倒がっているというわけではなく、こういうのは互いの従者を通してお届けすると決まっていて。なので、お渡しする相手は姫さまご本人ではなく彼女の従者――つまりは、光里さんということになるわけだけだけど……ともあれ、お任せください中将さま! 貴方の真摯な想いの籠もったこの恋文、必ずや姫さまへとお届け……いや、まあそんなに意気込みほどの難題じゃないんだけども。
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