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……いや、どうなのだろう。
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「…………ふぅ」
それから、一時間ほど経て。
そう、ポツリと声を零す。今、僕がいるのはひどく柔らかな泥濘の中。もう慣れた道のはずなのに、足が沈んでなかなか前に進まない。……いや、これくらい何でもない……このくらい――
「…………あ」
それから、数十分後。
そう、茫然と声を洩らす。眼前には、この甚雨ですっかり氾濫した川が行く手を阻むように……いや、驚くことじゃない。むしろ、このくらいは全く以て想定内……うん、こんなの全然なんてことない!
その後、激流の中どうにか川を渡り切る。そして、泥濘に足を取られながら歩を進めかれこれ一時間――どうにか辿り着いたのは、もちろん五条家の邸宅。だけど、衣服はびしょ濡れで汚れだらけ――相手方にも、中将さまにも本当に申し訳ない。……だけど、それでも中将さまの御心だけはお伝えしなくては――
「…………惟近、さん……」
すると、ふと鼓膜を揺らす柔らかな声。見ると、そこには茫然と呟く可憐な少女。こんな状況で来るなんて思いも寄らなかったのが、大きく目を見開いたその表情からも明瞭に見て取れる。……まあ、僕だって中将さまのためでなければまず来なかっ――
……いや、どうなのだろう。もちろん、中将さまのためというのは間違いない。嘘偽りなく間違いないと断言できる。……ただ、彼のためだけかと問われれば、そこははっきりと断言できる自信はなくて。……だって、僕は――
「……はい。中将さまの真摯な御心をお伝えすべく、独断にて五条家へと参りました。ですが、その前に一つだけ……今宵もお逢い出来て、本当に嬉しく存じます……光里さん」
それから、一時間ほど経て。
そう、ポツリと声を零す。今、僕がいるのはひどく柔らかな泥濘の中。もう慣れた道のはずなのに、足が沈んでなかなか前に進まない。……いや、これくらい何でもない……このくらい――
「…………あ」
それから、数十分後。
そう、茫然と声を洩らす。眼前には、この甚雨ですっかり氾濫した川が行く手を阻むように……いや、驚くことじゃない。むしろ、このくらいは全く以て想定内……うん、こんなの全然なんてことない!
その後、激流の中どうにか川を渡り切る。そして、泥濘に足を取られながら歩を進めかれこれ一時間――どうにか辿り着いたのは、もちろん五条家の邸宅。だけど、衣服はびしょ濡れで汚れだらけ――相手方にも、中将さまにも本当に申し訳ない。……だけど、それでも中将さまの御心だけはお伝えしなくては――
「…………惟近、さん……」
すると、ふと鼓膜を揺らす柔らかな声。見ると、そこには茫然と呟く可憐な少女。こんな状況で来るなんて思いも寄らなかったのが、大きく目を見開いたその表情からも明瞭に見て取れる。……まあ、僕だって中将さまのためでなければまず来なかっ――
……いや、どうなのだろう。もちろん、中将さまのためというのは間違いない。嘘偽りなく間違いないと断言できる。……ただ、彼のためだけかと問われれば、そこははっきりと断言できる自信はなくて。……だって、僕は――
「……はい。中将さまの真摯な御心をお伝えすべく、独断にて五条家へと参りました。ですが、その前に一つだけ……今宵もお逢い出来て、本当に嬉しく存じます……光里さん」
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