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願い続けて
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――それから、一週間経て。
「…………やっぱり、ないか」
登校時、住宅街の一本道にて。
疎らに人が行き交う中、ポツリと呟きを洩らす僕。そんな僕の視線の先には、何の変哲もない白い壁。もちろん、何ら不思議なところはない……どころか、ずっとそうであったはずの光景だ。
だけど……そんな当然の光景が、今や僕にとってはこれ以上もなく違和感で。と言うのも――あの時、そこにあったはずの路地裏が、一度として僕の前に姿を見せないから。
あの日の呟き通り、僕は次の日も依月神社――より正確には、風奈さんの下を訪れるつもりでいた。だけど、登校時も下校時も例の路地裏は見当たらなった。まあ、あの日も登校時はなかったはずだから、朝の時点では何とも思わなかったけど――
ともあれ、残念ながら……非常に残念ながら、その日はそのまま帰宅。まあ、その日はたまたま休業してたのだろう。……いや、そもそも普段どこに対して開業してるのかも分からないけど……まあ、ともあれ明日になれば――
だけど、結局その翌日もあの路地裏は現れなかった。そして、明日は、明日こそはと願い続けて一週間――結局、今の今まで映っていたのは白い壁だけ。……はぁ、寂しい。
――それから、数時間経て。
「……なあ、ナメてんのお前?」
「……い、いえそんなことは……ですが、本当にもうなくて」
「あぁ? だったらもっと働けや。それか盗んで来いよ。ああ、でもバレても……あたしのことチクったら、てめえのことぶっ殺してやるからな」
「……そ、そんな……」
昼休みにて――さっと顔のすぐ横へと手を伸ばし、鋭く僕を睨みつけそう言い放つ女子生徒。彼女は花本さん――同じ一年三組で、クラスのリーダー格でもある生徒だ。そして、そんな彼女に何とも情けない声で答える僕。……いや、答えられてもいないか。
ともあれ、そんな僕らがいるのは校舎隅の非常階段。遠くから光景だけを見ると、ひょっとしたら青春のワンシーンのように映るかもしれないけど……まあ、僕に限ってそんなわけもなく。では、どういう状況かというと……まあ、言わずもがなかもしれないけど、いわゆるカツアゲをされている状況で。
さて、こういった状況は入学からおよそ一ヶ月後くらいから始まったのだけど、その理由は……まあ、本人に聞いたわけじゃないので定かじゃないけど、恐らくは僕が弱そうだったからだろう。まあ、実際弱いし。
ただ、一つ幸いとすれば両親に迷惑は掛けなかったこと。入学ほどなくアルバイトを始めていたから、今まで渡したお金は全て僕の稼ぎからで。
……だけど、それももうない。ずっとギリギリではあったけど、数日前に渡した分ですっかり底を尽きた。だから、もう――
「――っ!!」
「……いいから出せよ。じゃなきゃ……ほんとに殺すぞ?」
刹那、息が止まる。彼女が、僕の首を掴んで壁へと押し付けたから。……息が……息が……このままじゃ、ほんとに……だけど――
「――こんなところで、何してるのかな?」
「…………へ?」
朦朧とした意識の中、ポツリと声を洩らす僕。音になっているかも怪しい、本当に微かな声を。
……そして、流石に分かる。こんなにも霞んだ意識の中でも、流石に分かる。どうにか、声の方向――上方へと視線を移し、どうにか声を絞り出す。
「…………ふうな、さん」
「…………やっぱり、ないか」
登校時、住宅街の一本道にて。
疎らに人が行き交う中、ポツリと呟きを洩らす僕。そんな僕の視線の先には、何の変哲もない白い壁。もちろん、何ら不思議なところはない……どころか、ずっとそうであったはずの光景だ。
だけど……そんな当然の光景が、今や僕にとってはこれ以上もなく違和感で。と言うのも――あの時、そこにあったはずの路地裏が、一度として僕の前に姿を見せないから。
あの日の呟き通り、僕は次の日も依月神社――より正確には、風奈さんの下を訪れるつもりでいた。だけど、登校時も下校時も例の路地裏は見当たらなった。まあ、あの日も登校時はなかったはずだから、朝の時点では何とも思わなかったけど――
ともあれ、残念ながら……非常に残念ながら、その日はそのまま帰宅。まあ、その日はたまたま休業してたのだろう。……いや、そもそも普段どこに対して開業してるのかも分からないけど……まあ、ともあれ明日になれば――
だけど、結局その翌日もあの路地裏は現れなかった。そして、明日は、明日こそはと願い続けて一週間――結局、今の今まで映っていたのは白い壁だけ。……はぁ、寂しい。
――それから、数時間経て。
「……なあ、ナメてんのお前?」
「……い、いえそんなことは……ですが、本当にもうなくて」
「あぁ? だったらもっと働けや。それか盗んで来いよ。ああ、でもバレても……あたしのことチクったら、てめえのことぶっ殺してやるからな」
「……そ、そんな……」
昼休みにて――さっと顔のすぐ横へと手を伸ばし、鋭く僕を睨みつけそう言い放つ女子生徒。彼女は花本さん――同じ一年三組で、クラスのリーダー格でもある生徒だ。そして、そんな彼女に何とも情けない声で答える僕。……いや、答えられてもいないか。
ともあれ、そんな僕らがいるのは校舎隅の非常階段。遠くから光景だけを見ると、ひょっとしたら青春のワンシーンのように映るかもしれないけど……まあ、僕に限ってそんなわけもなく。では、どういう状況かというと……まあ、言わずもがなかもしれないけど、いわゆるカツアゲをされている状況で。
さて、こういった状況は入学からおよそ一ヶ月後くらいから始まったのだけど、その理由は……まあ、本人に聞いたわけじゃないので定かじゃないけど、恐らくは僕が弱そうだったからだろう。まあ、実際弱いし。
ただ、一つ幸いとすれば両親に迷惑は掛けなかったこと。入学ほどなくアルバイトを始めていたから、今まで渡したお金は全て僕の稼ぎからで。
……だけど、それももうない。ずっとギリギリではあったけど、数日前に渡した分ですっかり底を尽きた。だから、もう――
「――っ!!」
「……いいから出せよ。じゃなきゃ……ほんとに殺すぞ?」
刹那、息が止まる。彼女が、僕の首を掴んで壁へと押し付けたから。……息が……息が……このままじゃ、ほんとに……だけど――
「――こんなところで、何してるのかな?」
「…………へ?」
朦朧とした意識の中、ポツリと声を洩らす僕。音になっているかも怪しい、本当に微かな声を。
……そして、流石に分かる。こんなにも霞んだ意識の中でも、流石に分かる。どうにか、声の方向――上方へと視線を移し、どうにか声を絞り出す。
「…………ふうな、さん」
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