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……まあ、それはともあれ――
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「はい、陶夜くん」
「あ、ありがとうございます風奈さん」
それから、ほどなくして。
柔らかな風鈴の音が優しく響く風情漂う縁側にて、柔和な微笑で湯のみを差し出してくれる風奈さん。中身はもちろん、暖かなお茶……うん、いい香り。そして、お味は……うん、すっごく美味しい。
さて、どういう流れかと言うと――あの後、立ち去ろうとする僕をまあまあ少しお茶でもと縁側へと案内する風奈さん。そして、今に至……うん、説明するまでもなかったね。
「ところで、陶夜くんは高校生なんだよね? 学校生活はどんな感じ?」
「……へっ? あ、そうですね……」
すると、ふと隣からそう問い掛ける風奈さん。いや、別に驚くような質問じゃない。むしろ、ごく自然な話題と言えよう。
……ただ、それはそうと……うん、何と答えたものか。正直、盛り上がる気がまるでしない……と言うか、きっと普通に重苦しくなるだけで――
「…………へっ?」
そんな暗鬱な思考が、不意に止まる。何故なら――先ほどまで楽しそうに笑っていた彼女が、そっと僕の手を取りじっと僕の瞳を見つめていたから。
「……あの、風奈、さん……?」
予想だにしない風奈さんの行動に、ただただ茫然とする僕。……えっと、当然どうしたの――
「……なんでも、いいんだよ?」
「……へっ?」
「……別に、気を遣ってくれなくていい……今、陶夜くんが話したいことを、なんでも話してほしいな」
「……風奈さん」
そう、僕の手を取ったまま真っ直ぐ僕の瞳を見つめ話す風奈さん。その透き通る瞳に――悲愁が揺れるその瞳に、こんな僕でも流石に察せないはずもなくて。だから――
「……あの、風奈さん。その、実は――」
「…………そっか」
それから、しばらくして。
僕の話を聞き終え、小さく呟く風奈さん。お世辞にも楽しい話とは言えないはずだけど、それでもずっと真摯に耳を傾けてくれていたことが彼女の表情からもはっきりと分かって――
(…………そっか、それなら)
「……ん?」
「……ん? どしたの陶夜くん?」
「……あ、いえなんでも……」
すると、ポツリと声を洩らした僕に柔和な微笑で尋ねる風奈さん。そんな彼女に、少し戸惑いつつ返事をする僕。……今のは、いったい……いや、気のせいかな。
「もう帰っちゃうの? 陶夜くん。まだまだお話ししたいのに」
「すみません、風奈さん。これから、アルバイトがありまして。ですが、もしご迷惑でなければまたお伺いします」
「……アルバイト? ……ああ、うん、アルバイトねアルバイト! うん、それならしょうがない。うん、待ってるね!」
「はい、ありがとうございます」
それから、ほどなくして。
そんなやり取りと共に、笑顔で手を振り僕を見送ってくれる風奈さん。尤も、途中少し気になる反応はあったものの、それはともあれ僕も笑顔で……まあ、出来てるかどうかは分からないけど……笑顔でそっと手を振り鳥居を潜る。すると、
「…………あ」
ほどなく、僕の視界に映ったのは住宅街――路地裏に入る前にいた、あの閑散とした住宅街で。そして、もう路地裏はなくいつもの白い壁が……うん、どういう原理なんだろう。あと、こんなところ誰かに見られてたら大事だよね。幸い、今は誰もいないみたいだけど。……まあ、それはともあれ――
「……明日も、来ていいのかな」
そう、ポツリと呟く。そして、心做しか軽くなった足取りで再び帰路を歩いていった。
「あ、ありがとうございます風奈さん」
それから、ほどなくして。
柔らかな風鈴の音が優しく響く風情漂う縁側にて、柔和な微笑で湯のみを差し出してくれる風奈さん。中身はもちろん、暖かなお茶……うん、いい香り。そして、お味は……うん、すっごく美味しい。
さて、どういう流れかと言うと――あの後、立ち去ろうとする僕をまあまあ少しお茶でもと縁側へと案内する風奈さん。そして、今に至……うん、説明するまでもなかったね。
「ところで、陶夜くんは高校生なんだよね? 学校生活はどんな感じ?」
「……へっ? あ、そうですね……」
すると、ふと隣からそう問い掛ける風奈さん。いや、別に驚くような質問じゃない。むしろ、ごく自然な話題と言えよう。
……ただ、それはそうと……うん、何と答えたものか。正直、盛り上がる気がまるでしない……と言うか、きっと普通に重苦しくなるだけで――
「…………へっ?」
そんな暗鬱な思考が、不意に止まる。何故なら――先ほどまで楽しそうに笑っていた彼女が、そっと僕の手を取りじっと僕の瞳を見つめていたから。
「……あの、風奈、さん……?」
予想だにしない風奈さんの行動に、ただただ茫然とする僕。……えっと、当然どうしたの――
「……なんでも、いいんだよ?」
「……へっ?」
「……別に、気を遣ってくれなくていい……今、陶夜くんが話したいことを、なんでも話してほしいな」
「……風奈さん」
そう、僕の手を取ったまま真っ直ぐ僕の瞳を見つめ話す風奈さん。その透き通る瞳に――悲愁が揺れるその瞳に、こんな僕でも流石に察せないはずもなくて。だから――
「……あの、風奈さん。その、実は――」
「…………そっか」
それから、しばらくして。
僕の話を聞き終え、小さく呟く風奈さん。お世辞にも楽しい話とは言えないはずだけど、それでもずっと真摯に耳を傾けてくれていたことが彼女の表情からもはっきりと分かって――
(…………そっか、それなら)
「……ん?」
「……ん? どしたの陶夜くん?」
「……あ、いえなんでも……」
すると、ポツリと声を洩らした僕に柔和な微笑で尋ねる風奈さん。そんな彼女に、少し戸惑いつつ返事をする僕。……今のは、いったい……いや、気のせいかな。
「もう帰っちゃうの? 陶夜くん。まだまだお話ししたいのに」
「すみません、風奈さん。これから、アルバイトがありまして。ですが、もしご迷惑でなければまたお伺いします」
「……アルバイト? ……ああ、うん、アルバイトねアルバイト! うん、それならしょうがない。うん、待ってるね!」
「はい、ありがとうございます」
それから、ほどなくして。
そんなやり取りと共に、笑顔で手を振り僕を見送ってくれる風奈さん。尤も、途中少し気になる反応はあったものの、それはともあれ僕も笑顔で……まあ、出来てるかどうかは分からないけど……笑顔でそっと手を振り鳥居を潜る。すると、
「…………あ」
ほどなく、僕の視界に映ったのは住宅街――路地裏に入る前にいた、あの閑散とした住宅街で。そして、もう路地裏はなくいつもの白い壁が……うん、どういう原理なんだろう。あと、こんなところ誰かに見られてたら大事だよね。幸い、今は誰もいないみたいだけど。……まあ、それはともあれ――
「……明日も、来ていいのかな」
そう、ポツリと呟く。そして、心做しか軽くなった足取りで再び帰路を歩いていった。
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