玲瓏たる月の下、命懸けの恋を貴方と

暦海

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紋日

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「……はぁ、やってらんないわよねほんと。誰よ、こんなふざけた規則ルール決めたやつ。つりつりに値するわ」
「はぁ、ほんとよね。万が一にも正体が判明しようものなら、うしの刻参りで末代まで呪ってやるわよ」


 それから、二週間ほど経て。
 張見世はりみせの中にて、何とも物騒なやり取りを交わす先輩遊女の方々。改めてだけど、張見世とは中級、下級の遊女がお客さまの指名を待つ格子付きのお部屋で。ところで、会話の中で出てきた『つりつり』とは脱走を試みた遊女に対する刑罰のことだけど……内容に関してはあまりにむごいので、生憎ながら伏せさせていただきます。

 ……ただ、何とも物騒ではあるけれど、そのお気持ちが全く理解できないわけでもなく。と言うのも――本日は『紋日もんぴ』という、私達遊女にとって甚だ戦々恐々の日なので。


 それでは、そんな甚だ恐怖の日たる紋日についての説明を。毎月1日と15日、そして五節句などの特別な日などに設定され、私達遊女がこの日のための特別な衣装を纏い踊りを披露したりなど平時よりも華やかな雰囲気に――そして、なんと代金が平時の二倍になるという驚愕の日で。

 尤も、ここだけ聞けばお祭りのように楽しく、更には私達遊女の収入が上がる素晴らしい日のようにも思えるかもしれないけれど、全く以てとんでもない。利益を得るのはあくまで妓楼おみせであり、そもそも代金が二倍なのだからその日のお客さま自体が著しく減少するわけで。

 尤も、その日に収入が減るだけならまだマシなのかもしれないけれど……紋日に一人一人に定められた基準ノルマを達成しなければ、その差額ぶんはなんと自分で妓楼おみせに支払わなければならないという鬼のような規則ルールがあって。そして、支払それが不可だったら妓楼おみせに借金をすることになるという地獄のような日で。さっき、先輩方のことを物騒なんて言ったけど……でも、万が一にもその規則ルールを作った人が目の前に現れたら私だって呪ってしまうかも。


 ……だけど、やっぱり呪いまではしないかも。万が一にもその人が現れても、たいそう不快にはなるだろうし軽蔑もするだろうけど……それでも、呪う気持ちまではどうにか抑えられるかも。……だって、私は恵まれているから。と言うのも――



 
 
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