玲瓏たる月の下、命懸けの恋を貴方と

郭外の世界で

「……わぁ、すっごい綺麗！　きっと小野おのの小町こまちにも負けてないよ、深影みかげさん！　まあ、見たことないけど」
「……その、恐縮です鈴珠すずさん。鈴珠さんこそ、とても美しく見蕩れてしまいます」
「……あ、ありがと深影さん。……でも、それってこっちの方が好みってこと？」
「あ、いえそういうわけでは……その、どちらの鈴珠さんも大変麗しく素敵です」
「……ふふっ、冗談だよ。ありがと、深影さん」


　それから、半日ほど経て。
　晴れやかな空が広がる郭外そとの世界で、和やかにそんな会話を交わす私達。……きっと、こんな空は今までに幾度もあった。だけど、もう随分とご無沙汰な気がして。

　さて、今いるのは素朴な魅力漂う呉服屋さんの中。そこで、それぞれお互いの衣服ふくを選んでいて。――深影さんは女性用、私は男性用の服を纏いながら。
　

　さて、そろそろしつこいかもしれないけど、私達は決してバレてはいけない身――なので、出来うる限り正体を隠して生きる必要があるわけで。

　そこで、それぞれ異なる性別に扮することに。幸いと言うべきか、深影さんは男性的というより中性的な顔立ちなのでウィッグを使えば女性――それも、きっと小野小町もびっくりの美女が誕生し……いや、まあ見たことないんだけども、小野小町。
　一方、私の方は見た目も完全に女子なんだけど……まあ、私の年齢なら女の子みたいな外見の男の子もいるので、こちらもウィッグを使えばどうにか男の子として通すことも出来なくはない……よね？　

　さて、後は服装だけども……正直、こっちの方が大変で。と言うのも、深影さんは身体は完全に男性――それも、逞しい男性の身体それだし、私は完全に女子の身体それゆえ別の性別に扮するのはなかなかの難題で。

　……それでも、当然のこと避けては通れない道――なので、厚めの衣服ふくを重ね着ることでどうにかごまかすことに。あと、私は胸にサラシを……うん、きつい。