玲瓏たる月の下、命懸けの恋を貴方と

暦海

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出合茶屋

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「……やっぱり、ここしかないよね……」
「……そう、ですね……」


 それから、しばらく経たその日の宵の頃。
 そう、些かたどたどしく会話を交わす。そんな私達がいるのは、お洒落な木造二階建ての建物の前。料理茶屋という、文字通りこの辺りで人気のある料理屋さんらしいのだけど……でも、実際の用途は食事それだけでなく――いや、むしろ表向きには伏せられているもう一つの用途ほうが主要なくらいで。

 さて、ここは別名『出合茶屋』――主に、不倫の関係にある男女が密会のため使用する場所で。




「……それにしても、今日はほんと新鮮だったなぁ。こんなの、もう五年以上……いや、当時もしてなかったことばっかりで」
「……そうですね、鈴珠すずさん。僕は、とりわけ明葉めいようでの時間がとても印象に残っていて」
「ほんと!? うん、私も!」


 それから、一時間ほど経て。
 お部屋にて、藹々とした雰囲気で今日のことについて話を交わす私達。……そっか、深影みかげさんも……いや、もしかすると気を遣って言ってくれてるのかもしれないけど……うん、それでも嬉しいなぁ。

 ……ただ、生憎のこと喜んでばかりもいられなくて。と言うのも、この出合茶屋なのだけど……正直、高い。とりわけ、宿泊代が頗る高い。
 ……まあでも、それも当然で。と言うのも……改めてだけど、ここは主に不倫の関係にある男女の密会のための場所。そして、これまた改めてだけど……不倫に対する罪状は――死刑。となれば、高い額を支払ってでも利用したいという人は決して少なくないだろうし。

 なので、目下そのような関係にある私達も利用しているわけだけど……でも、流石にずっとは続かない。当面はつと思うけど、私達二人の貯蓄が尽きる前にどうにか居を――それも、なるべく経済的負担を抑えつつ、極めてバレづらい所に居を構える必要があるわけで。そして、そこで何らかの仕事をしつつ、バレそうになった際にはいつ何時なんどきでも出ていけるような……うん、色々と難度が高すぎるね。まあ、分かってたけど。


 ……だけど……うん、ひとまず措こう。措いてる場合じゃないのは分かってるけど、ひとまず措こう。昨日と今日でもう色々と疲れたし、その辺りは明日にでも考えよう。なので――


「……ねえ、深影さん。もう、そういう関係じゃないけど……その、どうかな?」
 





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