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理由
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「……お疲れさま、深影さん。すっごく心地好かった」
「……お疲れさまです、鈴珠さん。……はい、僕もすごく心地好かったです」
それから、しばらくして。
お互い呼吸を整えつつ、布団の中でそんなやり取りを交わす私達。……うん、すっごく心地好い。……まあ、状況を考えればこんなことをしてる場合じゃないのかもしれないけど……でも、こういう危機的な状況だからこそ、こういう幸せな時間が大切とも思うわけで。
さて、明日のためにもお互いそろそろ寝た方がいいのだろうけど……それでも、今更ながらどうして聞きたいことがあって――
「……ねえ、深影さん。なんで、私にここまでしてくれるの?」
そう、じっと見つめ尋ねる。……そう、今まで――それこそ、初めて会った日からずっと、ずっと聞きたかったこと。……なんで、縁もゆかりも無いはずの私にここまで――
「……以前、あの中に……」
「……へっ?」
「……以前、あの中に……吉原の中に、何ともみすぼらしい、茅葺き屋根の小さな庵があったのを覚えていらっしゃいますか? もう、五年も前のお話になりますが」
「……五年前に、茅葺き屋根の……あっ、うん。……いや、全然みすぼらしくなんてなかったけど……でも、覚えてるよ。本当に素敵で、しばらく見蕩れちゃってたくらいだし。でも、それがどう……っ!? ……あの、もしかして……」
刹那、脳裏に稲妻が走る。今の流れで、何の関係もなさそうな……そして、深影さんの職業は、大工……もしかして、あの庵って――
「……はい、恐らくはご明察かと。……あれは、僕が建てさせていただいた庵です」
「……そう、だったんだ……」
そんな卒然の――そして、衝撃の告白にただただ茫然とする私。……そう、だったんだ。あれは……見蕩れるほどに素敵なあの庵は、深影さんが――
「……あれは、美代さん……妻のご一家の命で建てさせていただいたのですが……その、恥ずかしながら酷評されてしまい、ほどなく燃やされてしまう運びとなりました」
「……そんな……ひどい……」
「……本来ならば、挫けていたと思います。自分でも脆弱だとは自覚していますが……ひょっとしたら、この職を辞していた可能性すらあって……」
「……深影さん」
そう、淡く微笑み告げる深影さん。……酷評? あれが? ……いや、それ自体は仕方がない。納得はいかないけど、評価は人それぞれだからそれは仕方がない。仕方がない、けど……それでも、自分で作らせた家をすぐに燃やしちゃうなんて、そんなの――
「……ですが」
すると、ふとそう口にする深影さん。そして、じっと私を見つめ言葉を紡ぐ。この上もなく柔らかな……そして、ともすれば雫が零れ落ちそうな愛しい笑顔で。
「……ですが、そうならずに済んだのは……これからも続けていこうと強く思えたのは、貴女がいたからです。恥ずかしいほどに未熟な……それでも、僕の全てを込めたあの庵を、この上もなく真摯な瞳で見つめてくださる貴女がいたから、僕はこれからも頑張ろうと思えた。だから……本当に、本当にありがとうございます……鈴珠さん」
「……お疲れさまです、鈴珠さん。……はい、僕もすごく心地好かったです」
それから、しばらくして。
お互い呼吸を整えつつ、布団の中でそんなやり取りを交わす私達。……うん、すっごく心地好い。……まあ、状況を考えればこんなことをしてる場合じゃないのかもしれないけど……でも、こういう危機的な状況だからこそ、こういう幸せな時間が大切とも思うわけで。
さて、明日のためにもお互いそろそろ寝た方がいいのだろうけど……それでも、今更ながらどうして聞きたいことがあって――
「……ねえ、深影さん。なんで、私にここまでしてくれるの?」
そう、じっと見つめ尋ねる。……そう、今まで――それこそ、初めて会った日からずっと、ずっと聞きたかったこと。……なんで、縁もゆかりも無いはずの私にここまで――
「……以前、あの中に……」
「……へっ?」
「……以前、あの中に……吉原の中に、何ともみすぼらしい、茅葺き屋根の小さな庵があったのを覚えていらっしゃいますか? もう、五年も前のお話になりますが」
「……五年前に、茅葺き屋根の……あっ、うん。……いや、全然みすぼらしくなんてなかったけど……でも、覚えてるよ。本当に素敵で、しばらく見蕩れちゃってたくらいだし。でも、それがどう……っ!? ……あの、もしかして……」
刹那、脳裏に稲妻が走る。今の流れで、何の関係もなさそうな……そして、深影さんの職業は、大工……もしかして、あの庵って――
「……はい、恐らくはご明察かと。……あれは、僕が建てさせていただいた庵です」
「……そう、だったんだ……」
そんな卒然の――そして、衝撃の告白にただただ茫然とする私。……そう、だったんだ。あれは……見蕩れるほどに素敵なあの庵は、深影さんが――
「……あれは、美代さん……妻のご一家の命で建てさせていただいたのですが……その、恥ずかしながら酷評されてしまい、ほどなく燃やされてしまう運びとなりました」
「……そんな……ひどい……」
「……本来ならば、挫けていたと思います。自分でも脆弱だとは自覚していますが……ひょっとしたら、この職を辞していた可能性すらあって……」
「……深影さん」
そう、淡く微笑み告げる深影さん。……酷評? あれが? ……いや、それ自体は仕方がない。納得はいかないけど、評価は人それぞれだからそれは仕方がない。仕方がない、けど……それでも、自分で作らせた家をすぐに燃やしちゃうなんて、そんなの――
「……ですが」
すると、ふとそう口にする深影さん。そして、じっと私を見つめ言葉を紡ぐ。この上もなく柔らかな……そして、ともすれば雫が零れ落ちそうな愛しい笑顔で。
「……ですが、そうならずに済んだのは……これからも続けていこうと強く思えたのは、貴女がいたからです。恥ずかしいほどに未熟な……それでも、僕の全てを込めたあの庵を、この上もなく真摯な瞳で見つめてくださる貴女がいたから、僕はこれからも頑張ろうと思えた。だから……本当に、本当にありがとうございます……鈴珠さん」
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