背徳の香りと破れぬ誓い

暦海

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誓い

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「……あの、ところで葉乃はのさん。僕は、本当に貴女といていいのでしょうか?」
「……いや、いいも何も、ここは貴方のお家なんだよ? そんなこと言われたら、あたしが出ていかなくちゃならないんだけど、それがいい?」
「あっ、いえそういう意味ではなく! ただ……僕は、貴女と共にある資格があるのかどうかと……僕は、貴女のことを覚えてすらいないのに……」


 リビングにて、あたしにココアを渡してくれた後そう口にする宵渡よいとさん。……もう、そんなこと気にしなくていいのに。そもそも、覚えてないのだってそもそもはあたしのせい――彼は、何一つ悪くないのだから。

 ……まあ、彼らしいけど。彼は、そういう人――そういう、優しい男性ひとだから。そして、そんな彼に仄かに微笑みつつ言葉を紡ぐ。


「……前からずっと言ってるけど、そんな悲しいこと言わないでよ、宵渡さん。あたし達、将来を誓い合った仲なのに」

「…………葉乃さん」


 そう、じっと見つめ告げる。……まあ、もちろん嘘だけど。本当であってほしいけど、生憎そんな約束はしていない。交わしたのは、あたしを決して裏切らないという誓いだけ。そして、未成年と将来を誓い合っていたなんて、記憶がなくとも本来はなかなかに信じがたいことだと思う。

 だけど、例の動画――あたし達の行為を収めたあの証拠動画が、なんと大いに役立って。あれのお陰で、彼はあたしと本当に交際を――将来を誓い合った、いわゆる真剣な交際を交わしていたというあたしの言葉を本当だと思い込んでくれている。

 尤も、記憶のない宵渡さんは、自身が本当は遊びのつもりだったんじゃないかと不安になっていたけれど……それは絶対にないと、あたしが強く言い聞かせた。遊びなんかじゃなくあたしを真剣に愛してくれていたと、強く強く言い聞かせた。彼が自分のことを信じられなくとも、記憶のない以上、当の相手たるあたしにそう言われてしまえば否定はできないだろうし。




「……それでさ、宵渡さん。今日はどうする?」
「……そうですね、今日は……」


 それから、一時間ほど経て。
 朝食の席にて、ほのぼのとそんなやり取りを交わすあたし達。彼とのこんな何気ない日常が、本当に心地好く――そして、本当に愛おしい。

 ……うん、ほんと幸せ。かつてのあたしは、もう彼の中にいないけれど……だけど、彼にとって今は亡き最愛の女性ひとも、もうその中の何処にもいない。だから、あとはそこに――今や空席となった彼の中に、あたしが入り住んでしまえばいいだけなんだから。……うん、我ながら酷いね。彼にとって大切な女性ひとが消えたことを喜んでいるのもそうだけど……そもそも、あたしのせいで彼がこうなってしまったというのに……ほんと、救いようもないほど酷い。


 ……ごめんね、宵渡さん。でも、これからはあたしが護るから。貴方がそうしてくれたように、これからはあたしが支え護るから。だから、どうか……どうか、ずっと……生涯、そばにいてくれませんか?


 


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