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高校生のわたし。
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私と彼が出会ったのは高校。
私は高校生で、彼は先生だった。
私は16歳。まだ恋なんてしたことなくて、これが私の初恋になる。
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高校1年生になった春、私は念願の制服に身を包んで入学式を迎えた。
クラスメイトの発表と担任の発表、胸中は期待と不安が入り混じっていて、でも一つ覚えてるのは、担任の髪型がキリギリスみたいだったこと。
入学式の後、私たちはクラスごとにホームルームをしたのだけれど、先生はきっと毎年言っている自分の名前をネタにした、たいして面白くない自己紹介をしていた。それが私と先生からの出会い。風が吹き荒れた雨の日だった。
先生と私の距離が縮まっていくのは、想定外に早かった。なんだか馬が合ったの。それに、先生はいつもタイミングがよかった。
今思えば全部幻だったんじゃないかって錯覚するほどに、先生は今でも何もなかったような顔をする。それが何だかたまに腹立たしくなったりするのが正直な気持ち。
高校1年生の頃は、私たちの関係は何も発展しなかった。だって、先生と生徒だから。
でもそれが変わり始めたのは、高校2年生のある日のこと。
学校の用事で、たまたま私の携帯から先生の職員室のパソコンにメールを送る用事があったの。その時にはすでに、私は先生のことが好きだった。だからこそ、メールのやり取りはその用件のみにしなければならないと思った。
けどその日の夜、先生からメールがきた。その件について。
私は律儀にお礼のメールを打って、でもそこから彼とのメールのやりとりが始まってしまった。
先生はパソコンのアドレスじゃなくて、すぐに携帯のアドレスと番号を教えてくれた。
他の子には秘密でね。と。
私は嬉しかった。
それからは、たわいもないことをほとんど毎日のようにメールして、でも職員室で会ったらお互い何も無いような顔して。
秘密の関係、私だけ特別なんだってことに溺れてた。
そのうち先生から夜中に電話がかかってくるようになった。飲み会の帰りとかにね。
でも先生には家庭があった。
先生か寒い寒いって言ってたから、あれは冬だった。
先生から夜中に電話がかかってきたの。コールがあってからちょっとだけ待って、切れないうちに電話に出る。
先生は家に帰る途中、寒い寒いと言いながらも、家に入らずに私と長電話。2時間はいってないかな?
私は両親に聞かれちゃまずいと思って、いつも布団を上からかぶってしゃべってた。けど長い時間話すぎて、布団の中は酸素不足。途中で空気の入れ替えタイムを作ってたのが懐かしい。
あの時期が一番可愛かったかもしれない。先生からの電話があったのに眠ってしまってた日なんかは、朝に履歴を見て、眠ってしまったことを本当に後悔してた。
だから私は、毎日片耳イヤフォンで寝てたの。いつでも先生からの電話に気付けるように。
先生は奥さんとの関係に悩んでるようなことをよく言ってた。今考えれば、子供が生まれて相手してもらえなくなって、ただ寂しかっただけなんだと思うけど、あの時は分からなかった。あの時は、私だけに話してくれる先生にただ純粋に恋をしてしまっていた。
高校3年生の文化祭の日の夜、先生覚えてる?
先生がわたしに言ったこと。
きっと覚えてないと思うんだけどね。
あの日もまた、夜中に電話がかかってきた。
文化祭の先生たちの打ち上げ終わりに。
いつも通り布団をかぶって電話に出て、私たちは話していたね。
あの日先生は、いつも以上に酔っ払ってた。だから言ったの?あんなこと。
俺はお前のこと好きだけど、お前は俺のこと好き?
初めて誰かに好きって言われて、動揺して、しかも好きな人に。
でも経験不足な私は、
嫌いじゃない。
としか答えられなかった。
そしたら先生が、
お前はずるいわ。
俺も男なの忘れんといて。
って。
そんなこと言わないでよ。
私はウブな高校生。そりゃあ、勘違いするよ。先生も私のこと好きなのかもって。
あの日の夜の電話のことは、今でもずっと忘れられない。
先生、なんでいつも気があるようなことばっかり言ったの?
私が眠れないって言ったら、
右手、手繋いでるって思ってみ?って。
お前の声、なんか安心するんよなって。
夏祭りの日、今日は浴衣着ていくってメールしたら、
お前の写真ないやん。まぁでも、お前は見てーーって写真は送ってくるやつじゃないよな。って。
今思い出しても恥ずかしさでどうにかなりそうだけど、私、先生に1回だけハグしたよね。
先生が落ち込んでて、私にはそれしかできなかったんだけど、なんであんな大胆なことできたんだろ。
怒ってない?とかメールしたの懐かしいね。
高校を卒業してからは、2人で映画にも行ったし、よくご飯に行ってたね。
あの日までは。
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大学生になった私は、やっと先生と外で会えるようになった。
1番デートみたいだったのは、映画館?それともバー?
映画館行った時は、同級生の妹がたまたま同じ映画を観てて、数日後にそれが発覚。何だかすごくこわくなったのを覚えてる。
でもあの日、私は悲しかった。
映画が終わった後、きっとそんな大事な用事でもないくせに、そうあれはきっと口実。
一本電話かけないといけないから。
って、その場で一旦解散。そして夜ご飯を食べるレストランの最寄り駅まで別々で向かった。2度目の待ち合わせは、駅の改札口。
誰かに見られたら困るからなんだろうなって想像はついたけど、本当はダメなことなんだなって思うと、足取りはやっぱり重くなった。
その日の夕食は最悪。私は嫉妬でいっぱいになり、早々解散。
ねぇ先生、私が子どもだったの?あれは仕方がないことだったの?
そんな風に思っても、やっぱり好きが勝ってしまう。そしてまた私は、意味のない、デートと呼んでいいかも分からない食事を繰り返した。
最も最悪なあの日の話をする前に、私が今でも後悔しているあの夜のことを。
あの日たしか、イタリアンレストランで夜に食事をした後、小さなバーに行った。
私はまだ19歳だった。
そこで私が飲んだのは、今までの人生の中で1番美味しい葡萄ジュース。
先生のワインも一口もらったけど、あの時の味は忘れられない。とても美味しかったから。
先生とはいつも向かい合って座ってた。けどあの日は真横だったの。
その日の私は、花柄の少し透けたトップスに、下はデニムの短めのスカート。精一杯のおめかしだった。
ワインを飲んでいる途中、左側に座ってた先生の手が、私の左太腿を撫でた。
そんなことは初めてだったから、私は緊張してしまって。ろくに顔も見れず、ただその時間は過ぎていった。
先生はその後お手洗いに行って、そして私たちはいつも通り別れた。
今の私なら、ホテルにでも誘ってるかもしれない。でもあの時の私はそんなことできなかった。
でも、今本当に後悔してる。
初めては先生が良かった。
だって、あれから何度か恋愛はしたし、好きな人を作ろうと努力したけど、先生を超える人はいないから。
これを読んでくださっている方は、きっと批判すると思う。よくない関係だから。
けど、私は2番目でも、3番目でもよかったの。ただ、好きだった。
そして私と先生の関係がついに途切れる日がやってくる。
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それは、20歳の誕生日を迎えた1ヶ月後のことだった。
誕生日の前に、先生とメールしてた。
誕生日、何が欲しい?
ってメールが来て、
先生と一緒に話せることが嬉しいから、それだけで十分。
なんて返信をした。
誕生日の3日後だったかな、会う約束をしてたの。けど、家族の、奥さんの体調が良くないってメールが来て、ドタキャン。
その時に女の勘?ってやつかな。すぐにあることが頭をよぎった。
誕生日から3週間後くらい、2回くらいのドタキャン後に先生と夜会うことになった。
あの時もイタリアンだったね。
私はその日、先生に会いに行くのが何だかすごく嫌だった。心がざわついていたから。
デザートまで食べ終わっても、先生は20歳のお誕生日おめでとうなんて言わなかった。
その代わりに、
お前には話しとかないといけないことがある。
2人目ができた。
兄弟をつくりたかったから、病院に行って、それで…。
その後の言葉は割愛。
聞き分けの良い、真面目な私は、
おめでとうございます
よかったですね
それしか言えなかった。
奥さんとうまくいってなかったんじゃなかったの?私、いろいろ話聞いてたじゃない。
病院に行って?何?何の言い訳?ただ愛し合っただけでしょ?
いろんな感情は動くけど、そんなこと言えない。だって、私たちの関係はよくない関係だったから。
その日のことは、そこから全然記憶がなくて、泣いたかも、どうやって帰ったかも全く。
ただ、あの日のことを思い出して泣くことは何度かあったかな。
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先生、あれからも私たちは何度か顔を合わせてるけど、2人で出掛けたことは一度もないね。それに、電話も一度もかかってきてない。
あんまりにもひどすぎない?私はまだ、先生のことを思い出すと胸の中がきゅーって痛くなるよ?
あれからも何年も経ったのにね。
会わなくなった忘れるなんて、
新しい恋をしたら忘れるなんて、嘘。
一瞬は忘れられても、またすぐに私の心は先生のことを思い出してしまうの。
それは初恋だから?
秘密の関係だったから?
私がその関係に酔ってしまっていたから?
私は先生と結ばれたいなんて思ってなかったよ。
家族のことが1番で良かったの。
みんなは不幸だって言うかもしれないけど、私は2番目でもいい。ずっと先生の隣にいて、たまに私の方を向いてくれる時に、私のことをまた、好き、って言って欲しかったの。
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先生、今幸せ?
先生の中にはきっと、もう私なんて残ってないんだろうけど、
私の中にはもう少しだけ残しててもいいですか?
先生とのこと。
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