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10-02 想い想われ*
しおりを挟む身体を隅々まで撫でる手つきはいやらしく、敏感な場所を執拗に撫でては何度も高められる。けれどその場では最後まで追い詰めることはせず、彼は嬉しそうに喉で笑うばかりだ。
「……せまい」
「そうだよねぇ。女王の居城だっていうのに、このシャワールームだけはいただけない」
「あぅ」
中に入り込んでいた指がまた好き勝手に動き始める。何度も敏感な場所を押し込んで、じゅぷじゅぷと三本の指を出し入れしていく。
「んー、玩具とか、あったかなぁ。でも、トコエの身体に僕以外のものが入るのは嫌なんだよね」
「んっ、あ、はぁ……っん」
「でもでも、もっとトコエを気持ちよくしてあげたい」
このジレンマをどうしようか、とルザは呟く。中を蹂躙する指の動きに腰を揺らして良がるトコエの姿を見て、蕩けるような笑みを浮かべた。
「ねーぇトコエ、イきたい?」
「ん、はぁっ、う……っ、いきたい、いかせて、ルザ」
「はぁあ……っ!いっぱい気持ちよくなろうね……」
くいっと顎を持ち上げられたかと思えば唇が触れ合う。されるがまま舌を絡ませ、トコエも自分の意思で彼のそれを貪った。
「んむ、ぁあ、っんんぁ、きもちいっ、んんっ」
「トコエ好き、んっ、は……っ、セックスしたい……!」
「やぁあっ、いく……っ!」
ぎゅうっと彼の指を締め付け、甘い快楽の波に飲まれる。その頬にすり寄れば、ルザは深く笑ってトコエの唇を舐める。もはやお互いの身体で知らぬところなど無いとでもいうかのように、お互いを艶かしく擦り合わせる。
半勃ちのそれを優しく撫でてやれば切なそうに微笑み、ルザは彼女の手に自分の手を重ねた。
「こんなことなら絶倫に産まれたかったな……そしたら好きなだけトコエと交わって、いっぱいここ可愛がってもらうのに」
「ん……やわい」
「ごめんね。まだできないみたいだ……。はぁ、トコエ、好き好き、ずっと一緒にいようね」
ぎゅうっと胸元に顔を埋めてルザは彼女を抱きしめる。濡れた髪を撫でてやれば、また花も恥じらうほどの笑みを、彼は浮かべた。
「ルザ」
「んー?」
「……少し、髪伸びた」
同じように濡れた自分の髪を摘んで、そう彼女は言う。何を言おうとしているのかすぐに分かったルザは嬉しそうに頷く。
「うん、ちょっと切ろうか。大丈夫、絶対に可愛くしてあげるから」
「ん」
「ああでも、どんな姿でもトコエは可愛いし、何者よりも美しいよ。僕はずっと、何があっても君を愛している……永遠に」
ふとトコエは思う。好きだの愛してるだのとは言うくせに、彼は決してそれを自分に求めてこないのだ。
「(ふし、ぎ……)」
「はぁ、トコエ、大好き……」
ちゅ、と唇が触れ合う。角度を変えて何度も離れてはくっついて、柔らかい唇を喰まれたと思えばちゅうっと吸いつかれる。くち、と指がまた秘裂をなぞって、じわじわと責め立てられると同時に舌が混ざり合う。
心地よいその温度に微睡み、トコエは彼の頬を撫でる。
「もっと」
「ん、うん……っ」
「もっと、触って」
「もちろんだよ、トコエ」
「あっ、ルザ……」
堪えられないと言うかのように彼は性急に奮い立たせた自身を突き立てる。溺れて息もできないほどの快楽に喘ぎ、必死に彼の背に縋ってその精が中に吐き出されるのを乞うた。
この感情は、何だろう。
そう自身の中に答えを探し続けた。
◆
部屋の外をふらついていると、一人の男がいた。髪と髭が無造作に伸びた、お世辞にも清潔とは言えないような男。
見覚えはないはずなのになぜか、彼女は珍しいなと思った。
「……やあ、ベル。ご機嫌いかがかな」
「……どっかで会ったことある、気がする」
そう言えば男は微笑む。
「話すのは数年ぶりだ、“トコエ”。随分と、昔に戻ったみたいだ」
頭の中に名前が浮かぶ。それと同時に、彼がこの要塞の相談役のような扱いを受けていたことを思い出す。何か困ったことがあれば、的確な助言をくれたものだった。
「サンザ、あのね」
「ん?」
「ルザは、どうしてわたしに、愛してって言わないんだろう」
唐突の質問にもサンザは表情を崩さない。まるで子供の素朴な疑問を尊ぶかのように、優しい声色で答える。
「どうして、そう疑問に思ったのかな」
「なにか……一方的な気がする」
「そうだねぇ。愛情というものは相互的なものである方が望ましいよね」
そう、たしかにそうだ。こんなに愛されているのなら、彼に返してやるべきなのではないかと、そう思うのだ。
「でも、愛されたからといって、愛してやる義務っていうのは無いんだよ」
「無いの?」
「うん」
不思議だと首を傾げれば、サンザはくすくすと笑った。
「そういう反応するってことは、トコエはもうルザのことを愛おしく思っているんだよ」
「……そうなの?」
「ああ。だって、愛される分を返したいって思えるんだろう?」
鈍く頷く。
「おれも、トコエはルザのことが好きなんだと思うよ。思えば思わるるって言うし。彼の話を信じるのであれば、かつてそうであったように……」
「かつて?」
「ああ。それは君がゆっくりと思い出すべきことだけど」
曖昧なサンザの言葉に眉を顰めていると、彼はそれと、と言葉を続けた。
「“愛してる”っていう言葉はね、愛を伝える意味だけじゃない。寧ろ、“愛してください”っていう意味の方が強いと、おれは思うよ」
「そなの?」
「そうだねぇ。本当に思っていることって、はっきりと言葉に出難いものだと思うし」
言葉は存外不自由なんだよ、と意味のわからないことを言って、サンザは笑う。
「トコエは完全にそのタイプだ。まぁ、記憶を無くす前の話だけど……」
その視線がトコエの向こう側へと向けられる。何を見ているのかと思って振り返れば、そこには険しい表情でサンザを睨みつけるルザが居た。
「やぁルザ。いろいろと苦労をかけるね」
「……気安く彼女の名を呼ばないでくれるかな」
ぐいっと肩を引き寄せられる。いつも自分の目の前ではにこにこと機嫌よさそうにしている彼が、見たことないほどに苛立っているのが分かった。
「すまないね。けれど、いつまでも“警報”なんて、逆に失礼じゃないかと思ってね」
無言でトコエの手を掴み、サンザの言葉に返すこともなくルザは踵を返す。手を引かれるまま部屋に連れ込まれ、彼は重々しく扉の鍵をかける。
「ルザ」
ひょいっと身体を持ち上げられたかと思いきや、優しくベッドに下ろされる。すぐに覆いかぶさってくる彼に戸惑っていると、深く唇が触れ合う。
「……愛してるよ、トコエ」
「う、ん」
――寧ろ、“愛してください”っていう意味の方が強いと、おれは思うよ
「トコエ、僕だけのトコエ……」
するっとワンピースを脱がされ、首元にキスが落とされる。きつく吸われたかと思えば、その跡を見たルザは甘いため息をつく。
下着までも簡単に脱がされ、トコエは自身の腹に視線を向ける。まだデレイは完全に近い形で、供給はしばらく必要なさそうだ。
「する、の?まだ、おなかすいてない」
「おなかすいてなくても、こっちの方は渇いているんじゃないかな」
かちゃかちゃと小さな音を立てて、彼はベルトを取り去る。次々と自身の服を脱いでいき、既にやる気になった屹立を見せつけるように手で撫で付けた。
「ルザ……」
「君を愛せるのは僕だけだ」
急ぐように股座を弄られる。それにも随分と彼との行為に慣れた身体はいともたやすく発情して、早く雄を受け入れようと涎を垂らし始める。
「愛してる、愛してるよ、僕のトコエ」
ぬる、と濡れそぼった秘裂に男根が擦り付けられる。その熱さをはっきりと感じ、胎が喜びに震えているような気さえした。涎に塗れ、早く中に入りたくて堪らないというような動きで、ぐりぐりとそれを押し付ける。
「っ、ルザ」
「……どうしたの」
何度も名前を呼ばれることに喜びと、微かな違和感を覚えたルザは動きを止める。
指先でそっと彼の唇に触れる。するとちろちろと彼の赤い舌が指を舐めて、愛おしそうにゆっくりと口に咥え込む。艶かしく舌が絡み付いてくる感触に、また腹の奥が苦しいほどに疼いた。
「ん、ふ……んん、んぁ……」
だらりと涎が溢れて、胸元に滴り落ちる。潤んだ瞳も、熱っぽい表情も、なにもかもが煽情的だ。
指を口から抜き去れば、とろりとそれは糸を引いて離れる。そっと頬を撫でてやれば、すりすりと彼は手にすり寄るように頭を揺らした。
「……君は、何が欲しいの。ちゃんと言ってみて、教えて」
そう言えば苦しそうにルザは眉根を寄せる。
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