【完結作品】どうして僕達は出会ってしまったのだろう。二転三転していく三角関係。どんなに想っても、君は僕の……。『ほのかなひかり』

上条 樹

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可愛いお母さん

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 可愛いお母さん。

 それが彼女を見た最初の印象イメージであった。

 平日の穏やかな日差しの午前中、自転車の後ろに幼女用の補助用椅子を設置し、そこに二・三才位と思われる幼い女の子を乗せて保育園に登園させているようであった。

 そのお母さんは白い長袖のシャツ、そのシルエットがはっきりと解かる少し窮屈に見えるほどピッタリとしたジーンズ。

 出るところは出て絞まるところは絞まっている、その大人の魅力に俺の目はしばらく釘付けになってしまった。

 少しだけブラウンの入った長い髪が太陽の光で輝き、風にたなびいていて綺麗だ。

 小さな子供を乗せて自転車のペダルを一生懸命に漕ぐ為に体力も消耗したのであろうか、薄っすらと額に汗が浮かんでいる。

 保育園の前で自転車を止め、女の子を抱き抱かかえてから下ろすと二人は手を繋いで建物の中に入っていった。

 その微笑ましい後ろ姿に目を奪われて、しばらく彼女達が消えた辺りを見たまま俺は呆然となっていた。

 ふと我に返りこんなことをしていては変質者と間違えられるのではないかと思い、その場を後にすることにした。

 またあの人に会えたらラッキーだなと一人テンションを上げている。しょうもない事で愉しくなる年頃なのだ。

 今日は中間テスト終わりの試験休みで俺の通う学校は休みである。朝から派遣会社から斡旋されたアルバイトに向かっていた。

 本日は化粧品のピッキング。

 指示された紙を見ながら棚から取った商品をボックスに入れていくという非常に単調な作業ではあるが、アルバイト代がそこそこ良いのと自分の都合でシフトを組めるので重宝している。

 現地へ向かう専用のバスが手配されており、集合場所に集まって作業現場に向かう。

「光君、私を置いていくなんて酷いよ」隣の家に住む幼なじみの友伽里が走ってくる。迎えのバスの時間にはまだ余裕がある。

 一緒に列に並んでいたおばさんが気を使って、友伽里を列の真ん中に入れてくれようとするが、さすがに申し訳ないので丁寧にお礼を言ってから俺は友伽里と一緒に、列の一番後ろに並びなおした。

「お前が遅いんだよ。約束の時間をとうに過ぎているのにどうせ寝坊したんだろ」こめかみの辺りを、人差し指で掻かきながら彼女に向かって言い放つ。

「失礼ね。女子は男子と違って色々と準備があるんですぅ!」少し前のめりになって言い放つ。

「バイトに行くのに女子の準備なんてもの必要ないだろう。それにお前って朝から天婦羅でも食ってきたのか?お前の唇くちびるテカテカ光っているぞ!」言いながらポケットティッシュを差し出す。なんて優しいんだと俺は自己分析してみた。

「リップクリームを塗ってるのよ!このアホが!」顔を真っ赤にして怒っている様子だ。それこそアルバイトに行くのにリップなんて塗る必要無いだろうと言おうとしたが止めた。

 そんな俺達の様子を見て、先程のおばさんが笑っている。

「お二人さん仲が良いね。兄妹かい?それとも恋人さん?」

「違います!」二人でシンクロするように否定した。冗談ではない。

 そうこうしているうちに、送迎バスが到着した。

 列の先頭から順番にバスに乗り込んでいく。

 二人かけの窓際の席に俺が座ると、その横に友伽里が腰掛けてきた。
 
「わざわざ隣に座るなよ。いくらでも席は空いてるだろ」窓の縁に肘を突き頭を支えながら俺はため息をつく。

「いいじゃない、知ってる人少ないんだから……」彼女は少し膨れっ面で下を向いた。さすがに知らない人と座るのは嫌なようである。

 何度も言うが友伽里は、俺の隣の家に住む幼なじみ。

 俺達は同じ誕生日に同じ病院で生まれた。
 二人は小さい頃から兄妹のように育ってきた。

 俺の家が母親だけの片親と言うこともあってか、友伽里のお父さんも父親のように俺に接せっしてくれた。

 ちなみに、友伽里の母親と俺の母親は、学生の頃からの親友で彼女の父親と同様に俺に分け隔てなく面倒をみてくれる。

 俺にとっては母親が二人いるような錯覚を感じることもあるくらいだ。

 このアルバイトは、インターネットで探したのだが、俺の話を聞いて旨味でも感じたのか、友伽里ゆかりも同じように応募するようになった。女ならもっと楽して稼げるアルバイトがあるだろうにと少し呆れた。

 バスの中で十五分ほどの仮眠をとっていると、現場の駐車場にバスが侵入する瞬間、コンクリートとバスの底が擦れる音がする。この音がすると目的地に到着した合図である。

「光君、着いたよ」友伽里の声で目を開けて、バスを降りる準備をする。

 ああ、今日も一日バイト漬けで終わってしまうと思うと少し憂鬱ゆううつになった。



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