私を調べてどうするつもり?

上条 樹

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悪い事

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「ああ、頭が痛い・・・・・・」愛美は二日酔いらしく頭を抱えている。

「調子に乗ってカルアミルクを何杯も飲むからよ」馬淵は彼女の隣で持参の弁当を食べている。昼休み、2人は会社の屋上にある休憩場所に並んで腰かけている。昨晩の事が無ければ、このように愛美と馬淵が話をする事など無かったであろう。

「でも、まさか篠原と淳ちゃんが知り合いなんてね」言いながら箸でウインナーを掴んで口に入れた。彼女が食事をする姿を見て、愛美は少しえづきそうになった。

「馬淵さんは、いつもお弁当なの・・・・・・・・?」食べ物をみるとなんだか気持ちが悪くなるので目を逸らす。

「ええ、お金がもったいないからね。ずっと自炊よ。篠原は外食派?優雅ね」二人は同期入社で、どちらも取り立て出世している訳でもないので、給料なんてほぼ同じであろう。きっと、実家通いの愛美の方が、自由に使えるお金に余裕があるという事であろう。

 それにしても、昨晩の店での煌びやかな姿の馬淵からは、想像もつかない質素な感じであった。ただ、今の彼女の方がとっつきやすいと愛美は思った。

「あの、私の事、愛美って呼んでもらった方が、嬉しいかな。苗字だとなんだか型ぐるしくって・・・・・・・」愛美は少し遠慮気味に言ってみる。

「ええ、それじゃあ、私の事も明美って呼んでよ。会社で話せる人って特に要らないかって思ってたんだけど、最近ちょっとつまんなくてね」弁当を食べおわると弁当箱のふたを閉めた。

「わかったわ、明美」なんだかグッと距離が縮まったような気がした。

「そういえば、あんた田川と付き合ってるんじゃなかったけ?」おやつ用なのかビニール袋からミカンを二つ取り出して、一つを愛美に渡した。なんだか、ミカンは美味しそうに見えたのでありがたく頂戴する事にした。

「うーん、いいかなって思った時もあったんだけど・・・・・・・、なんだか、やる事だけが目的みたいな感じが・・・・・・・・、ねえ」愛美は少しだけ顔を赤くしながら言った。

「なに言っているのよ、男なんてみんなそれが目的なんじゃないの」明美は膝の上にハンカチを置きその上でミカンを剥く。

「えー、そうなのかな・・・・・・・、刈谷さんはそんな感じじゃないけどな・・・・・・・・」愛美も同じようにミカンの皮を剥くと口の中に一房放り込む。「甘ーい!」二日酔いには瑞々しいミカンがより甘く感じるようであった。

「ああ、淳ちゃんね・・・・・・・、いい人なんだけどね。鈍感だから、あの人。結構モテるのにね」明美はニヤリと笑った。

「えー、そうなの!?ま、まさか明美ちゃんも!でも、明美ちゃんこそ、嘉彦さんの事が好きだって・・・・・・・」愛美は横に目を逸らす。

「はあ!?やめてよ!私、ああいう奴が一番嫌いなのよ!」明美は猛烈な嫌悪感を顔に浮かべる。

「えっ、でも・・・・・・・」先輩の美和から聞いた言葉を思い出していた。明美が嘉彦に気があるようだと。

「私、社員の給与計算してるから、どの社員がどれくらいの給料をもらっているか知っているのよ。もちろん愛美、あんたの給料も知っているわ」そういわれると愛美は正直あまりいい気はしなかった。「あの田川の給料で、あの車・・・・・・・・レクサスや服は異常だわ。なにか悪い事してなければいいのだけれど・・・・・・・」明美は残ったミカンを一気に放り込む。片方の頬がハムスターのように膨らんでいる。

「悪い事・・・・・・・・・」正直、愛美にはピンとこなかった。
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