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ニール
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レオの姿が見えなくなったのを確認してから、祐樹は柵から手を離し後方の壁にもたれて座り込んだ。
「ご主人様・・・・・・」パンが心配そうに祐樹の顔を覗き込んだ。祐樹は少しだけ微笑んだから、パンの頭を優しく撫でた。
「有難う・・・・・・、パン。でも、少し・・・・・・御免な」頭を抱え込んで祐樹は寝転んだ。自分の今までの人生、生き様、両親の全てを否定された思い。祐樹には、母が本当の肉親でないと言われてもそれを受け入れる事ができなかった。優しい母の思い出が走馬灯のように頭の中を流れた。自然と祐樹の頬を涙が流れた。
「ダンお姉さま・・・・・・」パンは今にも泣きそうな顔でダンを見つめる。
ダンは人差し指を口に当てウインクをした。少し静かにしていようという合図のようだ。
ソラは、相変わらず壁との会話を続けていた。
祐樹達は兵士に連れられて、大きな部屋の椅子に座らされていた。
横一列に、祐樹、ダン、パン、ソラの順番で、その向かい側には、レイとレオが腰掛けている。
ダン、パン、ソラの首には、黒いチークが付けられている。どうやら、このチークが彼女達の力を封印しているようであった。祐樹は、何度かメタルガイダーに変身するべくシンクロを試みるが無駄であった。祐樹が彼女達の名を叫ぶとチークは邪悪な光を発して、彼女達の首を圧迫した。その苦しむ姿を見て祐樹は変身することを断念した。
祐樹達の前に、豪華な食材が運ばれてくる。ダンはその食材を見て、お腹を鳴らした。その音を誤魔化すように口笛を吹いた。
「ユーガ様が来られるから、もう少し待ってね」レイが微笑んだ。
しばらくすると、優雅な音楽が流れてきた。音が響くと同時にレイとレオが立ち上がった。周りに警護する兵士達も緊張の面持ちで、体を硬直させている。
部屋の正面の扉が開くと、手に持った籠の中から、花びらを撒きながら少女が入室してきた。少女達が撒いた花びらが、カーペットのように道を作る。
その上を、一人の中年の男が歩いてくる。美しい白色のスーツに身を包み、肩からライオンの剥製のような顔が付いたマントを羽織っている。少し長く美しい髪。その足取りは自信に満ち溢れていた。男の座る椅子を少女達は手馴れた動作で引き、男が座るタイミングに合わせて、椅子を前に移動させた。
「ようこそ、私の分身こと小松原 祐樹殿、フフフ」聞き覚えのある声に、パン達は驚愕した。
上座の席に座るユーガこと、ユーガラガー・ナユター。彼の顔は年齢を重ねているが、祐樹と瓜二つであった。
「オリジナルの、俺か・・・・・・」祐樹は自分がクローン人間であることを再認識させられる思いであった。自分が年を取るとこんな顔になるのかと少し複雑な気持ちになった。
ユーガが合図をすると、レイとレオも席に座った。
「永きに渡り大儀であった。今後はこの星に暮らすがよいぞ、フフフ」ユーガは、両肘を使って頬杖をついた。その手首に不似合いなリストバンドがつけてある。
「ユーガ様、それは・・・・・・お怪我でもされたのですか?」レイも祐樹と同じくリストバンドに違和感を持ったようだった。
「あぁ、これか・・・・・・、コアの紋章をこれ見よがしに見せびらかすのもどうかと思ってな、フフフ」ユーガは苦笑いを見せた。どうやら会話の度に笑うのが癖のようだった。祐樹は少し苛立ちを覚える。
「そうですか・・・・・・」レイを訝しげに返答をした。
「さあ、皆さん、ご遠慮なく召し上がれ! フフフ!」微笑むと右手を差し出した。食事開始の合図である。ダンは「いただきます! 」と言うと荒々しく食事を始めた。
「・・・・・・ダンお姉さま」パンがダンを制すように名前を呼ぶ。と同時にグ~!とパンのお腹がなった。パンは顔を真っ赤にして小さくなった。
その横で、ソラもモクモクと口に食事を放り込んでいる。
「どうして、俺達をこの星に呼び寄せたんだ」祐樹は食事には手を着けず口を開いた。
「そうだな・・・・・・、君を地球に置いておけば地球人に迷惑が掛かる。それに我が軍勢で私の命を十分に守ってもらえると安心できたからだ。それに私のクローン・・・・・失礼、分身にいつまでも不自由な暮らしをさせるのも忍びないのでな、フフフフ」ユーガはスープを口に流し込んだ。ズルズル鳴らして王様の風格など微塵も無い。自分はこんな男のクローンなのかと思うと祐樹は幻滅した。
「今更、迷惑って・・・・・・、一週間後に俺が奴らの前に出ないと地球は攻撃されるんだぞ!」机を両手でドン!と叩いて、祐樹は立ち上がった。それを見て兵士が槍を祐樹に向けた。パン達も身構える。
「よい!衛兵よ、落ち着け。祐樹殿、そなたも座りたまえ。フフフフ」ユーガが諭すように手の平を下に向けて上下した。
「アンドロメダの連中は、今も祐樹殿がコアだと思っているだろう。地球を攻撃して万一そなたが死ねば・・・・・・銀河が無くなると思っている。祐樹殿が、どこにいるのか分からないのに攻撃はしないだろう。フフフフ」今度は肩肘をついて口の辺りを覆っている。
「それは・・・・・・ 」祐樹が口籠る。
「陛下!祐樹さんを地球で今まで通り、地球人として生活させてあげて頂くことは出来ないでしょうか? コアでないのであれば自由にしてあげても良いのでは・・・・・・ 」立ち上げって言ったのはレオであった。彼女は少し緊張した面持ちを見せていた。
「レオ!出しゃばり過ぎよ。立場をわきまえなさい!」レイが激しくレオを叱咤した。
レオは苦虫を潰したような表情を見せた。
「ハハハハハ! レオは祐樹殿と生活して愛情でも芽生えたか? 私の決めた事は絶対だ!分かっているな? フフフフ」最後にユーガはレオを睨みつけた。
「申し訳ございません・・・・・・」レオはゆっくり席に腰掛けた。唇を噛締めるような表情を見せた。
「レオお姉さま・・・・・・」誰にも聞こえない声で、パンは呟いた。その表情は少し微笑んだかのように見えた。その後は、無言で会食が進んだ。
祐樹も長時間食事を取っていなかった為、空腹ではあったが思うように食事は進まなかった。目の前に出された食事を半分ほど残してから、祐樹達に用意された部屋に行くように指示された。今度は、牢屋ではない主賓用のゲストルームだそうだ。かなり待遇は改善されるが、パン達の首に巻かれたチークはそのままであった。
部屋までの通路を、兵士が案内する。その前を偉そうに妖精ニールが先頭を切って飛んでいく。「早く歩きなさい!」と振り向いた途端、ニールは天井から出た梁に頭をぶつけた。「痛い!」悲痛な表情を浮かべながら落下した。
「おっと、危ない!」落ちてきたニールを両手で祐樹が受け止めた。
「お前、オッチョコチョイだな!大丈夫か? 」言いながら祐樹は優しく微笑んだ。
「だっ、大丈夫よ!」ニールは顔を真っ赤にした。
「危ないから、ここに乗っておけよ。兵士さんが部屋まで案内してくれるみたいだから」祐樹はニールを自分の肩に腰掛けるように指示した。
「うーん、分かったわ。乗って欲しいなら、乗ってあげるわ!」ニールは少しはにかんだ表情を見せてから祐樹の肩に腰掛けた。
ダンが袖を捲くりあげて憤慨している。それをパンが「まぁまぁ」となだめた。その様子を見てニールはアカンベーをしてから、さりげなく祐樹の頭に軽く寄り添う姿勢を見せた。
「ご主人様・・・・・・」パンが心配そうに祐樹の顔を覗き込んだ。祐樹は少しだけ微笑んだから、パンの頭を優しく撫でた。
「有難う・・・・・・、パン。でも、少し・・・・・・御免な」頭を抱え込んで祐樹は寝転んだ。自分の今までの人生、生き様、両親の全てを否定された思い。祐樹には、母が本当の肉親でないと言われてもそれを受け入れる事ができなかった。優しい母の思い出が走馬灯のように頭の中を流れた。自然と祐樹の頬を涙が流れた。
「ダンお姉さま・・・・・・」パンは今にも泣きそうな顔でダンを見つめる。
ダンは人差し指を口に当てウインクをした。少し静かにしていようという合図のようだ。
ソラは、相変わらず壁との会話を続けていた。
祐樹達は兵士に連れられて、大きな部屋の椅子に座らされていた。
横一列に、祐樹、ダン、パン、ソラの順番で、その向かい側には、レイとレオが腰掛けている。
ダン、パン、ソラの首には、黒いチークが付けられている。どうやら、このチークが彼女達の力を封印しているようであった。祐樹は、何度かメタルガイダーに変身するべくシンクロを試みるが無駄であった。祐樹が彼女達の名を叫ぶとチークは邪悪な光を発して、彼女達の首を圧迫した。その苦しむ姿を見て祐樹は変身することを断念した。
祐樹達の前に、豪華な食材が運ばれてくる。ダンはその食材を見て、お腹を鳴らした。その音を誤魔化すように口笛を吹いた。
「ユーガ様が来られるから、もう少し待ってね」レイが微笑んだ。
しばらくすると、優雅な音楽が流れてきた。音が響くと同時にレイとレオが立ち上がった。周りに警護する兵士達も緊張の面持ちで、体を硬直させている。
部屋の正面の扉が開くと、手に持った籠の中から、花びらを撒きながら少女が入室してきた。少女達が撒いた花びらが、カーペットのように道を作る。
その上を、一人の中年の男が歩いてくる。美しい白色のスーツに身を包み、肩からライオンの剥製のような顔が付いたマントを羽織っている。少し長く美しい髪。その足取りは自信に満ち溢れていた。男の座る椅子を少女達は手馴れた動作で引き、男が座るタイミングに合わせて、椅子を前に移動させた。
「ようこそ、私の分身こと小松原 祐樹殿、フフフ」聞き覚えのある声に、パン達は驚愕した。
上座の席に座るユーガこと、ユーガラガー・ナユター。彼の顔は年齢を重ねているが、祐樹と瓜二つであった。
「オリジナルの、俺か・・・・・・」祐樹は自分がクローン人間であることを再認識させられる思いであった。自分が年を取るとこんな顔になるのかと少し複雑な気持ちになった。
ユーガが合図をすると、レイとレオも席に座った。
「永きに渡り大儀であった。今後はこの星に暮らすがよいぞ、フフフ」ユーガは、両肘を使って頬杖をついた。その手首に不似合いなリストバンドがつけてある。
「ユーガ様、それは・・・・・・お怪我でもされたのですか?」レイも祐樹と同じくリストバンドに違和感を持ったようだった。
「あぁ、これか・・・・・・、コアの紋章をこれ見よがしに見せびらかすのもどうかと思ってな、フフフ」ユーガは苦笑いを見せた。どうやら会話の度に笑うのが癖のようだった。祐樹は少し苛立ちを覚える。
「そうですか・・・・・・」レイを訝しげに返答をした。
「さあ、皆さん、ご遠慮なく召し上がれ! フフフ!」微笑むと右手を差し出した。食事開始の合図である。ダンは「いただきます! 」と言うと荒々しく食事を始めた。
「・・・・・・ダンお姉さま」パンがダンを制すように名前を呼ぶ。と同時にグ~!とパンのお腹がなった。パンは顔を真っ赤にして小さくなった。
その横で、ソラもモクモクと口に食事を放り込んでいる。
「どうして、俺達をこの星に呼び寄せたんだ」祐樹は食事には手を着けず口を開いた。
「そうだな・・・・・・、君を地球に置いておけば地球人に迷惑が掛かる。それに我が軍勢で私の命を十分に守ってもらえると安心できたからだ。それに私のクローン・・・・・失礼、分身にいつまでも不自由な暮らしをさせるのも忍びないのでな、フフフフ」ユーガはスープを口に流し込んだ。ズルズル鳴らして王様の風格など微塵も無い。自分はこんな男のクローンなのかと思うと祐樹は幻滅した。
「今更、迷惑って・・・・・・、一週間後に俺が奴らの前に出ないと地球は攻撃されるんだぞ!」机を両手でドン!と叩いて、祐樹は立ち上がった。それを見て兵士が槍を祐樹に向けた。パン達も身構える。
「よい!衛兵よ、落ち着け。祐樹殿、そなたも座りたまえ。フフフフ」ユーガが諭すように手の平を下に向けて上下した。
「アンドロメダの連中は、今も祐樹殿がコアだと思っているだろう。地球を攻撃して万一そなたが死ねば・・・・・・銀河が無くなると思っている。祐樹殿が、どこにいるのか分からないのに攻撃はしないだろう。フフフフ」今度は肩肘をついて口の辺りを覆っている。
「それは・・・・・・ 」祐樹が口籠る。
「陛下!祐樹さんを地球で今まで通り、地球人として生活させてあげて頂くことは出来ないでしょうか? コアでないのであれば自由にしてあげても良いのでは・・・・・・ 」立ち上げって言ったのはレオであった。彼女は少し緊張した面持ちを見せていた。
「レオ!出しゃばり過ぎよ。立場をわきまえなさい!」レイが激しくレオを叱咤した。
レオは苦虫を潰したような表情を見せた。
「ハハハハハ! レオは祐樹殿と生活して愛情でも芽生えたか? 私の決めた事は絶対だ!分かっているな? フフフフ」最後にユーガはレオを睨みつけた。
「申し訳ございません・・・・・・」レオはゆっくり席に腰掛けた。唇を噛締めるような表情を見せた。
「レオお姉さま・・・・・・」誰にも聞こえない声で、パンは呟いた。その表情は少し微笑んだかのように見えた。その後は、無言で会食が進んだ。
祐樹も長時間食事を取っていなかった為、空腹ではあったが思うように食事は進まなかった。目の前に出された食事を半分ほど残してから、祐樹達に用意された部屋に行くように指示された。今度は、牢屋ではない主賓用のゲストルームだそうだ。かなり待遇は改善されるが、パン達の首に巻かれたチークはそのままであった。
部屋までの通路を、兵士が案内する。その前を偉そうに妖精ニールが先頭を切って飛んでいく。「早く歩きなさい!」と振り向いた途端、ニールは天井から出た梁に頭をぶつけた。「痛い!」悲痛な表情を浮かべながら落下した。
「おっと、危ない!」落ちてきたニールを両手で祐樹が受け止めた。
「お前、オッチョコチョイだな!大丈夫か? 」言いながら祐樹は優しく微笑んだ。
「だっ、大丈夫よ!」ニールは顔を真っ赤にした。
「危ないから、ここに乗っておけよ。兵士さんが部屋まで案内してくれるみたいだから」祐樹はニールを自分の肩に腰掛けるように指示した。
「うーん、分かったわ。乗って欲しいなら、乗ってあげるわ!」ニールは少しはにかんだ表情を見せてから祐樹の肩に腰掛けた。
ダンが袖を捲くりあげて憤慨している。それをパンが「まぁまぁ」となだめた。その様子を見てニールはアカンベーをしてから、さりげなく祐樹の頭に軽く寄り添う姿勢を見せた。
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