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地球に還る

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 レオが部屋のドアを開けると、兵士が2人気絶していた。部屋に侵入する前にレオが2人を倒したようだ。

「どうするんだ。レオ」祐樹は小さな声で質問する。

「地球に戻りましょう。たぶん貴方がコアでないことは、アンドロメダにも伝わっているかもしれない。期限が来る前に、撃退しないと、奈緒さん達が・・・・・・」レオは奈緒の身を案じて不安な表情を浮かべた。

「俺の為なら、他のものは犠牲にするんじゃなかたっけ?」以前、レオが口にした言葉を思い出した。あの時のレオは非情な女を演じていた。

「すいません・・・・・・、私はそこまで非情にはなれませんでした」その言葉を聞いて祐樹は微笑んだ。

「おい、なんかあの2人ちょっといい感じじゃないか?」ダンが小さな声でパンに聞く。

「今は、良いじゃないですか。今だけは・・・・・・」パンの眉毛がピクピク動いている。

「・・・・・・なんだか。ずるい」ソラは相変わらず無表情であった。

 通路を進んでいく。先方に明かりが見えた所でレオは右手を横に伸ばし祐樹達に停止するように合図した。
 ゆっくり前方に進み明かりの場所を確認する。
 そこには、七色に光るヘブンズロードへの入り口が見えた。四人ほどの兵士が警備にあたっている。

「ソラ念力使える? 」レオが振り向きソラを見た。
 ソラは深い深呼吸をしてから目を見開いた。顔つきが完全に変わっている。

「任せて!」ソラはウインクをしてから、胸の前で両手を組むと前に突き出した。
 兵士達が一斉に頭を抱えて、苦しみだした。兵士達の被る兜を変形させて締め付けているようだ。そこに、レオ、ダン、パンが飛び出して兵士達の鳩尾にパンチをお見舞いした。
 兵士達は悶絶しながら、その場に倒れた。

「私達も行きましょう!」凛々しい口調で、ソラが祐樹を誘導した。
「ああ・・・・・・判った!」ソラの変わりようと、レオ達の手際の良さに感心しながら、ソラを追いかけた。

「そこまでだ!まがい物よ!」聞き覚えのある声が聞こえる。
 後方を見上げると、ユーガとレイ、その周りを多人数の兵士がいた。ヘブンズロードに飛び込もうかと考えるが、先ほどまで輝いていた光が消えていた。

「恋は、盲目ね・・・・・・。レオ」レイが呆れた口調で呟いた。

「またもや、私に歯向かうとは、レオ! それなりの処分は覚悟の上だな!」ユーガが怒りを全身に漲らしている。二度目の裏切りにユーガの怒りは頂点に達しているようだ。
 レイがナイフを斜めに構えたかと思うと、祐樹めがけて投げつけた。とっさの事で動けなかったが、祐樹はズボンの膝上を切る状態で助かった。

「姉さん!」レオが叫びながら祐樹を守る体勢になった。

「レオ!動かないで!」レイが叫ぶと、彼女の横から小さな物体が飛び出した。それは真っ直ぐ祐樹の下半身目掛けて飛んでいく。ナイフに切り裂かれた切り口を掴むと、飛んできたニールが生地を上下に開いた。祐樹の膝上が露出する。

「えっ!」レオが驚きの声をあげる。ニールが微笑んだかと思うと、祐樹の肩の上に飛び乗った。

「やはり・・・・・・ニールの言った通りね・・・・・・。」レイがため息をつく。

「姉さん・・・・・・一体どういうことなの? 」レオが驚きを隠せない表情を見せた。
「ユーガ様、大変申し訳ございませんが、リストバンドの下の紋章を見せていただけませんか?」ユーガは狼狽《うろた》えている様子である。

「な、何を言っている!今はそんな事より、この者達を捕らえるほうが重要であろう! レイ、お前もレオと一緒に私を裏切るつもりか? 」ユーガはワナワナと震えながらレイを指差した。食事会での威厳《いげん》が嘘のようである。

「失礼いたします!」そう言うとレイは勢いよくナイフを投げた。ナイフは真っ直ぐユーガの手首の辺りに飛んでいき、リストバンドを切り裂いた。

「う、何を・・・・・!」ユーガを警護する兵士達が、レイにお襲いかかってくる。突き出された槍を半身でかわし、兵士の腕を掴んで引き寄せたかと思うと顔面に肘打ちをお見舞いした。
 他の兵士達が、レオ達にも攻撃を仕掛けてくる。レオは後ろ回し蹴りで兵士の腹に一撃を食らわす。悶絶する顔面に膝蹴りを放った。その横では突進してくる兵士を跳び箱のように飛び越えるダンの姿があった。着地と同時に後方にジャンプして兵士の背後から蹴りを喰らわせる。パンは両手にトンファーを持ち、器用に回転させたかと思うと襲いかかる兵士の刀を左手で上段にかわして、がら空きになった鳩尾に一撃を叩き込む。兵士は腹を押さえながら、くの字になって倒れた。金縛りにあったように固まる3人の兵士がいる。その目の前には両手を前に差し出して念を込めるソラがいた。彼女は両手を勢い良く横に振り払った。同じように、3人の兵士は飛んでいき壁に激突して気絶した。
 祐樹の前に、レオ達が集まり牽制するように構える。

「祐樹さんは私達が守ります!」レオが元気よく叫ぶ。久しぶりにみる元気なレオに祐樹は自然と微笑みを見せた。その瞬間レオの髪の毛が逆立って真紅に輝いた。

「レオ、その姿は・・・・・・ 綺麗だ!」レオの変化に祐樹は驚きの声をあげる。

「ありがとうございます」レオは頬を赤らめて微笑を見せた。
 上空より大きな泣き声が聞こえ、祐樹達は上を見上げた。なにやら黒い影が見えた。
不意に天井から2匹の化け物が落下してくる。一匹は蟷螂《かまきり》、もう一匹は百足《むかで》、新しいバンカーであった。祐樹達は化け物と対峙した。

「あの2人は、バンカーの中でも相当のやり手よ。気をつけて!」祐樹の耳元でニールの声が聞こえる。

「ニール!危ないから離れていてくれ!」ニールは頷いて上空へ羽ばたいた。

「いくぞ!シンクロ・レオ!」レオの体が一瞬に宙に溶け込むように消えた。次の瞬間、祐樹の体は赤い粒子が渦まいたかと思うと、メタルガイダーへと変身した、
 今回の変身は、今までと比較して、赤いオーラが大量にあふれ出している。

「超爆檄神モード、スタート!」レオの声が響いたと思うと、赤いオーラは更に激しさを増した。祐樹が右手を上から振り下ろすと手に長剣が姿を現した。

「どりゃー! 」祐樹は叫ぶと、長剣でバンカーを切りつける。
 蟷螂が手に装備した大きな鎌で受けようとするが、その鎌をすり抜けて、蟷螂の体を真っ二つにした。蟷螂の体は二つに裂けて倒れた。
 祐樹は刀を左手に持ち替えてから、右手を百足に向けた。
 祐樹とレオが念を込めると、百足の体が後方に飛び壁に激突した。
 そのまま、百足は目の光を無くした。
 怪物達2匹が一瞬に撃退し、パン達は大きな歓声を上げた。
 その様子を魂が抜かれたかの如く、戦いを見ていた兵士達が、祐樹に向かって奇声を上げながら襲いかかってくる。祐樹は再び長剣を構える。

「兵士達よ!控えなさい!」レイが唐突に声をあげる。その声を聞いて兵士達は反射的に動きを止める。

 レイの言葉と同時に、祐樹は変身を解いた。

「なにをしている!私のコピー以外を皆殺しするのだ!」ユーガが声を荒げる。

「兵士達よ!ユーガ様の手首を見なさい!コアの紋章を確認するのよ!」いきなりの言葉に兵士達は一斉にユーガを見る。ユーガはリストバンドの無くなった手首を握り締めている。

「こちらを見るでない!早く戦え!その者たちを捕らえよ!」ユーガは精一杯大きな声で叫ぶ。
 兵士達は呆然として動こうとしない。どうすればよいのか判断に困惑している様子である。

「なにがなんだか・・・・・・?」祐樹は何が起きているのか全く理解出来ないでいた。

「貴方の足にある、その印はいつからそこにあるの?」レイが祐樹の足を指差した。ナイフで裂けたズボンから膝上が露出している。そこには、紋章のようなアザがあった。

「これは物心ついた時には、ここにあった」

「ユーガ様、失礼いたしました。ただ、貴方の紋章は、今もその手にございますか? 」言葉は丁寧ではあったが、レイの口調は激しいものであった。

「そ、それは・・・・・・」ユーガが言葉に詰まる。 そのまま膝を折ってその場に座り込んだ。

「昔聞いたことがございます。紋章は主を選ぶ。心悪しき主からは姿を消すと・・・・・・」
 祐樹の肩の上でニールが呟く。「えー!」と声をあげて、レオ達は座り込んで祐樹の膝元を凝視した。

「ちょっと、良く見えないよ!」ダンが前のめりになって、祐樹の下半身に顔を近づける。その顔がニヤニヤとイヤラシイ顔に見えた。パーンと一発、頭を叩く音が綺麗に反響する。

「久しぶり・・・・・・!」ダンが見上げると、スリッパを片手に持ったレオが立っていた。

「私は、夷敵から狙われ続ける生活にウンザリしていた。毎日、遊んで暮らしたかった・・・・・・・。そこで、思いついたのが、クローン人間を造って偽情報を流す事だった。コアが、この星から旅立ち異郷の星に姿を消したと。それで、私は助かる筈だった・・・・・・。」ユーガは愕然とした表情で床を見下ろしている。

「しかし、コピーである筈の小松崎君に紋章が現れたことによって、自分の紋章が消えた。そのことによって、自分がコアでなくなった事を理解して慌てた」レイが補足した。その顔は少し呆れ顔であった。

「私は・・・・・・、コアで無くなったら、唯の・・・・・・人間になってしまう」ユーガはくやしげに涙を流している。顔を上げると鼻水も流れて醜い顔になっている。祐樹はその顔が将来の自分の顔であることを想像して愕然としている。レイは振り返って、レオ達を見た。

「私は、貴方達が羨ましいわ。コアである小松崎君を守っているのではなくて、小松原君を守っていると言っていたわね」そう言うとレイはユーガに目をやった。

「私は、その境地に達するのは・・・・・・、たぶん無理だわ」不快なため息をレイは吐き出した。 無様にもがき続けるユーガの姿にレイは目をやった。
 ユーガはいつまでも情けなく鼻水を垂らしながら泣き続けていた。

「私は・・・・・、クローンを作った筈なのに、私の紋章が消えてしまった。子を授からなければ、コアの紋章は継承されない筈なのに・・・・・、なぜ、そのガキに私の紋章が!」ユーガはその場に崩れ落ちた。
 レイが目で合図すると数人の兵士達がユーガを取り囲んだ。ユーガは兵士達の顔を情けない顔で見上げた。たぶん、兵士達は、こんな男に顎で使われていたのかと思うとやるせないであろう。
 ユーガは、両脇を兵士に抱えられて何処かに連行されていった。

 唐突に一人の兵士が、祐樹の方を見て刀を床に置いて膝まずいた。その行動をきっかけに、周りの兵士達も一斉に同じ姿勢を取った。

「なんなんだ、一体・・・・・・? 」祐樹は戸惑いで顔を強張らせた。

「あれなんじゃないか・・・・・・、新しい王様誕生!みたいな」ダンがニンマリと笑う。

「銀河のコアは私達の主、つまり祐樹は、私達の王様になったのよ!」ニールが再び、祐樹の肩の上に飛び乗った。すべり落ちそうになるが首にしがみついて堪えた。

「・・・・・・、って、俺が王様だって!」祐樹は自分の顔を指差して驚愕の悲鳴をあげた。

「仕方がありません。代々、コアの紋章を持つ方が、王の地位を継承していく決まりです。ユーガ様は、自分の保身の為に、貴方を作ったのですが・・・・・・紋章の継承は、生殖行為で継承するものでは無く、真の心を持った王に受け継がれていくもののようです」言いながらレイも膝を床に下ろした。

「ちょっと、止めてくれよ!俺は、そんな器ではないし・・・・・・!」祐樹は恐縮している。

「ご主人様。良いじゃないですか!私達のご主人様が王様だなんて最高です!」パンが興奮した声を出した。

「・・・・・・最高」ソラが無表情で、パチパチと拍手をする。

「祐樹さん・・・・・ 」ソラが祐樹の名前を呼ぶ。

「レオ・・・・・・」祐樹は振り返る。

「どうします?地球に来ているアンドロメダの異星人達・・・・・・このまま、この惑星ナユターに滞在する事も可能ですが、地球を・・・・・・奈緒さん達を見捨てる事になりますが・・・・・・」レオが話題を変える。今なら自分の意思で地球に還ることも可能だ。ならば祐樹の中で答えは決まっている。

「俺は・・・・・・、地球に還る。奈緒を助けに行く」

ダン、パン、ソラが親指を立て、微笑みでOKの合図をした。
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