魔法使いだからって、女の子になるのは理不尽じゃねぇ?

上条 樹

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テレパシー

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「う、ううん・・・・・・」俺は体に少し痛みを感じながら、ゆっくりと目を開いた。目の前には大きな二つの物体が飛び込んでくる。さらにその上には直美の顔があった。

「あ、コウタロウ君、気がついたんだ」直美は嬉しそうに言った。どうやら俺は直美の膝枕で眠っていたようだ。

「あ、ご、御免! 俺」飛び上がるように俺は起き上がった。

「体に異常はなさそう?」詩織さんが少し心配そうに声をかけてくれた。

「はい、特に・・・・・・」自分の体に触れて女の体のままであることを再確認した。

「コウお姉ちゃん! 今晩もいっしょだね!」愛美ちゃんは能天気にはしゃぎながら、コウの体に飛びついた。

「い、愛美ちゃん、ちょっと?!」直美のほうを見ると、少し怒っているように見えた。

「愛美、離れなさい!」直美は俺と愛美ちゃんの体を引き離した。

「わー、直美お姉ちゃんはまた焼きもち焼いて! さっきまでずっとコウお姉ちゃんとくっついていたくせに!」愛美はプクーっと頬を膨らませた。

「とりあえず、家に帰りましょう」詩織さんはドタバタ劇を終了させるように呟く。俺達はその迫力に言葉無く頷いた。

「あれ、総持寺さん、勅使河原は一緒じゃないの?」聞きなれた声、北島が後方から歩いてきた。

「あ、幸太郎君は・・・・・・先に帰ったかな」直美は誤魔化すように言いながら俺の顔を見た。 俺は女の姿のままであった。

「あ、そ、その人は?!」北島は手に持っていた鞄を落とした。どうやら女の俺の姿を見て驚いたようだ。まさか、気づかれたのではと俺は驚いた。

「この人は私のお友達で・・・・・・・」直美の言葉を最後まで聞かずに北島は言葉を発した。

「ぼ、僕は北島と申します、結婚を前提にお付き合いしてください! ぐえっ!」俺は勢いよく北島の腹を蹴った。そのまま、家の塀に激突した。

「こ、この変態が!」俺は両手で胸の辺りを覆った。心なしか動作が女性っぽくなっているような気がした。

「あらそうかしら、至って正常だと思うけど。いいじゃない男の子に告白されて」詩織さんは少し笑いながら呟いた。

『勅使河原君』頭の中に声が響く。

『その声は・・・・・・・神戸か?』俺はテレパシーで返答する。

『他の皆に気づかれないように聞いて、今晩一時過ぎに大島神社の境内まで来てもらえるかしら・・・・・・少し話しがしたいの・・・・・・・』

『一体、なんの話だ?』

『それは・・・・・・・今晩、話すわ』そこで、テレパシーは途絶えた。

「どうかしたの?」直美が不思議そうな顔をして聞いてきた。

「いや、別に・・・・・・・考え事をしていただけだ」誤魔化すように両手で頭を抱えて口笛を吹いた。 その様子を詩織さんは静かな目で見つめていた。
 塀にもたれたまま北島はグッタリしていた。
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