11 / 47
悪党を成敗しても一向に構いません
しおりを挟む船旅はあっという間に終わり、グラーノ王国へ到着した。
「二人とも、足元に気をつけて降りて下さい」
初めての船旅は、とても楽しかった。名残惜しく思いつつ、船を降りて町を歩く。
はぐれないようにしましょう、なんて言ってルベルが手を繋いできたけれど、私は子供じゃないのよ。十六歳の立派なレディなんだから。
「わあ、市場があるよ!賑やかだね」
アンジェロが興奮気味に市場を指差す。
グラーノ王国に来るのは初めてだもの。はしゃぐ気持ちもわかるわ。
「今日の宿を見つけたら、後で行きましょうか。はぐれないように気をつけてね」
「うんっ!気をつけるよ」
大きく頷いて、アンジェロはニコッと可愛らしく笑って見せる。
「リヴ、あちらに宿屋が見えます。早速行ってみましょう」
私がアンジェロの可愛さにうっとりしている間に、ルベルが宿屋を見つけてくれたみたい。
「さすがルベルね。ありがとう」
お礼を言うと、ルベルが私の耳元に顔を近づけて小声で話しかけてきた。
「部屋が取れたら、市場を見に行きましょう。さっきから、市場が気になってしょうがない、という顔をしていますよ」
初めての場所にはしゃぐなんて子供っぽいと思われるかしら、と落ち着いているふりをしていたのに。見抜かれていたのね。恥ずかしい。
「私のこと、子供っぽいと思った?」
「ふふふっ、いいえ。可愛らしいとしか思いませんよ」
頬に熱が集まるのを感じる。不意打ちで、ドキドキさせるようなことを言わないでちょうだい。
「ねえ、アンジェロ……えっ?アンジェロ!?」
話題を変えようとアンジェロの方を見ると、そこにアンジェロの姿は無かった。
どうして?さっきまで、すぐそばにいたのに。
辺りを見渡しても、アンジェロはどこにもいない。
「落ち着いて下さい、リヴ。大丈夫です。必ず俺が見つけますから」
焦る私をルベルがなだめてくれた。
確かに、ルベルならアンジェロを絶対に見つけ出してくれるとは思うけれど。やっぱり、心配なものは心配なのよ。
「知らない土地で一人きりなんて……心細くて、今頃泣いているかも知れないわ。可愛い弟にそんな思いをさせて、姉として失格ね。ごめんなさい、アンジェロ」
私がちゃんと見ていなかったから、こんなことになってしまったんだわ。
「いいえ、完全に俺の落ち度です。リヴのせいではありません。こんなこともあろうかと、居場所を感知できる魔道具を渡してあるので、確認します」
「まあ!いつの間にそんなことを?」
用意がいいのね。
「どうやら、移動しているようです。馬車にでも乗っているんでしょうか?とにかく、追いかけましょう」
「ええ。勝手に一人で馬車に乗るとは思えないから、きっと連れ去られたんだわ。急がないと」
アンジェロ、待っていて。今助けに行くから。
「ーー大丈夫だよ。きっと、すぐに助けが来るから」
ガタガタと馬車に揺られながら、隣で怯えて震えている茶髪の少女を慰める。たぶん、僕と同じ歳くらいかな?
「私のせいで、巻き込んでしまってごめんなさい」
「気にしないで。僕が、勝手に君を助けようとして失敗しちゃっただけだから」
男達に連れ去られそうになっていたこの子が目に入った時、とっさに一人で助けに行った僕が悪いんだ。姉さんとルベルに声をかけて協力してもらっていれば、後ろから近づいて来た男に殴られて気絶するなんて、情けないことにもならなかったはず。
目が覚めると、手足が縛られていて。僕まで一緒に連れ去られてしまっていた。僕って駄目だな。
魔封じの魔道具まで付けられているみたいで、魔法も全然使えない。
姉さんもルベルも、何も言わずにいなくなったから怒っているかも。ごめんなさい。
「あの、良ければお名前を教えてくれませんか?」
気を紛らわそうとしているのか、少女が話しかけてきた。
「僕?僕は、アンジェロ。君は?」
「私は、チェーリアです。アンジェロさんは、とても優しい人ですね」
「優しい?そうかな?ありがとう」
チェーリアさんみたいな可愛い女の子にそう言われると、恥ずかしいな。
ガタンッ
「きゃっ!」
「!!」
突然、馬車が大きく揺れて止まった。
「何が起きたんですか?」
「わからない。でも、馬車が止まったみたいだ」
目的地に到着したにしては、止まり方が乱暴だ。きっと、何か別の理由で馬車は止まったんだと思う。
手足は縛られているし魔法も使えないけど、どうにかしてチェーリアさんを守りたい。
「ルベル、やっておしまいなさいっ!」
「姉さん!?」
警戒していると、外から聞こえてきたのは姉さんの声だった。
姉さんとルベルが助けに来てくれて、安心した。でも、それと同時に。
ドカッ バキッ ドーンッ
ずいぶん物騒な物音がし始めた。チェーリアさんが、さっきより怯えている。僕も怖い。
ルベルがやってるんだと思うけど、ちょっとやりすぎじゃないかな?
「アンジェロ!無事?あら、女の子もいるのね」
外の音に戦慄していると、馬車の扉を開けて姉さんが入ってきた。僕以外にも人がいるとは思っていなかったみたいで、驚いている。
「姉さん、助けに来てくれてありがとう。だけど……外では何が起きてるの?」
気になって、窓から外の様子を見ようとしたら。
「見ては駄目!教育に悪いわ」
目元を姉さんの手で覆い隠されてしまった。
見せられないようなことって何?ますます気になるよ。
「姉さん、手を離してよ」
「絶対に駄目。そちらの方も、どうか見ないで下さいね」
僕の目を手で覆いながら、姉さんはチェーリアさんに話しかけた。
「あっ、私は目が見えないので。心配しなくても大丈夫ですよ」
チェーリアさんはふんわりと微笑んだ。
「「えっ!?」」
「リヴ、全員片付け終わりました」
ルベルが外から話しかけてきたけど、驚き過ぎてそれどころじゃない。
チェーリアさんの目が見えていないなんて、全然気づかなかった。
11
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる