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第1章
声
しおりを挟むブランは暗闇にいた。
光のない世界で何も見えない。
まるで泥の中にいるような身体の重さと、熱風を吸っているかのような息苦しさ。
脳幹を針で刺すような痛みが永遠と続き、心臓は冷たく軋んでいるようだった。
ブランは痛みに耐えながらひたすらに暗闇を歩き続けた。
奥へと進むにつれ、ブランは誰かの声がすることに気づいた。それは意識を失う前に聞いた、あの形容しがたい気味悪くしゃがれた声だった。
——喰えなかった。あぁ、残念。腹が減って仕方がない。極上の獲物だったのに……。
——でも少しだけ味見ができた。凄まじい力だ。美しい獣。今は歯が立たない。
——あァ、キレイだったなぁ。喰いたいなァ。
(……何の話だろう?)
ブランは足を速めた。進むにつれ体の熱が大きく膨らんでいくように感じる。熱に比例して声も大きくなっていった。
——腹が減ったァ。獣を喰いたい。
——喉が渇いたァ。獣の血を飲みたい。
「お腹がすいてるの?」
ブランは問いかけた。声がとても可哀そうで仕方がなかった。
声はブランの問いに驚いて黙った。数秒の間沈黙がその場に落ちたが、やがて声はブランに語り掛けた。
——あァ。空いてる。ずーっとずーーっとお腹がすいてひもじい思いをしていたんだ。
「どこにいるの?君は誰?お父様にお願いして何か食べさせてもらおうよ」
——否、否。此方はお前のナカ。お前は喰えない。だからお前が喰うしかない。
「僕の中にいるの?僕が食べるしかないってどういうこと?僕がご飯をたくさん食べればあなたもお腹が膨れるの?」
——否。前までは毎日喰えたのに……。父親が帰ってきてからずっと喰ってない。腹が減ったァ。
「え?……お父様が帰ってきてからは沢山食べさせてもらってるよ。前までが辛かったんじゃないか」
——否。否。否。
ブランがしばらく歩き進めると闇の中に光があった。それは白く輝いていたが良く見れば水色の球体だった。
「……これは?」
——此方。
「これが、君?」
——お前の裏側にして本質。本能であり、決して満たされることのない飢餓。
ブランはそっとその球体に触れた。
両手で包み込めるほど小さなそれはブランの手に馴染んでいた。
「……僕がもっとご飯を食べれば、君も満足?」
——否。此方はすべてを喰うまで満足しない。すべてを手に入れても飢えるばかり。
「君は何を食べるの?何をあげればいい?」
声はしばらく考えて言った。
——魔獣。
皇太子の誕生祭の後、ブランは六日間目を覚まさなかった。
バルドロイはたいそう心配して片時も公務をおざなりにしてまでブランの看病をしていたが、反面にミランダや双子たちはそのまま死ねばいいと喜んで過ごしていた。
また、屋敷から出ることがなかったボナパルト家はまだ知らないが、帝都ではすでにブランの噂で溢れていた。
もちろん、いい噂ではない。多くはブランが貴族としての特権を受けることに反対している。
しかしあの会場で特級のドラコ・ダ・ルクがあからさまにボナパルト家の肩を持ったことに世間は動揺していた。
会場でブランを抱きかかえる来儀の姿が多数に目撃されており、楊家との関係もあるという噂も流れた。
三大将のうち2人が容認するならば海軍大将のフェリオ・マゼランもまた容認せざるを得ないだろう。しかし法の番人である最高裁判所長官チェイス・ロンブローゾ、太政大臣の織田信仁、神の声を聴く者である宮内庁長官ソラウ・アテナが反対しているという話も上がっている。貴族たちはどちらに肩入れすべきかを測りかねていた。
そうして迎えた洗礼式の前夜。
ブランは夕食の香りで目を覚ました。
呼吸と同じように自然に目を開き、ゆっくりと辺りを見渡した。
ここはバルドロイの寝室であった。ベッドサイドテーブルには果物や水が置いてあり、バルドロイが読んでいたであろう書類が積み重なっていた。
ブランが扉に目を向けるとちょうどバルドロイが夕食を受け取っているところだった。
「……おとう、さま?」
「! ブラン!!」
「お坊ちゃん……!」
ブランのか細い声にも気が付き、バルドロイとアルフレッドはすぐにベッドまで駆け付けた。
「ブラン、良かった……!体は大丈夫か?どこか痛いところはあるか?」
「いいえ、お父様。ありません」
「旦那様、すぐに神官様を呼んでまいります」
「あぁ頼む」
アルフレッド執事長はメイドたちにすぐにブランの夕食も用意するように伝え、自身はすぐにカラスを外に放った。
「もう六日も眠っていたんだ。昨日までは高熱も酷くて……。何度か成不殿にも診てもらったんだが、魔力の暴走は治癒魔法では抑えられないと言われてしまって。本当に心配したんだ」
バルドロイはブランを抱きしめて言った。
心臓がバクバクと大きく鳴っていて本当に気の抜けない数日を過ごしたんだと気づいた。
ブランもその大きな背中を抱きしめる。
「心配をお掛けしてすいません、お父様。もう大丈夫です」
「……本当に良かった」
「ところで、六日経ったということは明日が洗礼式ですか?」
ブランが問うとバルドロイは頷いた。
「あぁ、そうだよ。でも体調が回復しないなら明日は休んでもいい」
心配そうなバルドロイにブランは思わず飛び起きた。
「いえ!行かせてください。僕、ずっと楽しみにしていましたから……!」
「しかし……。本当に何日も苦しんでいて、また無理をしているんじゃないかと」
「本当に大丈夫です!ほら、おでこ触ってみてください。熱もないし動悸も正常ですよ」
「……むぅ、確かに」
バルドロイはブランの額や首を触って異常がないかを確かめた。
ブランの言う通り、この数日がウソのように元気に見える。
「では神官様に診てもらって問題なければ洗礼式は予定通り一緒に行こう」
「はい!」
「ほら。では今の内に夕食を食べてしまおう」
バルドロイはベッドサイドに置いてあった夕食をブランに手渡した。
それから20分ほど経ち、二人が食べ終えた頃に成不が侯爵邸に到着した。
「こんばんは。侯爵」
「こんばんは、お忙し所ご足労頂き感謝します」
「いえいえ。ブラン君の目が覚めて良かったです」
成不は寝室に入るとブランの顔色をみて安心したようだった。
「やぁ、ブラン君。こんばんは。体の調子はどうかな?」
「成不さん、こんばんは!元気になりました!」
「それは良かった。でも少しだけ確認させてね」
成不はそう言うとブランの手を取って神聖力を流した。
ミントのように涼しい感覚が指先から全身にかけて広がる。
(成不さんの神聖力だ……安心する)
成不の力が、かつて滄波も触れたブランの核の回りを周回するように近づく。触れはしないけれど様子を見るといった感じだ。
数秒経つと成不は満足そうに頷いた。
「問題ないね。よく頑張りました。魔力も制御されているし、これは明日の洗礼式が楽しみになりました」
成不の診断にバルドロイは「ふぅ」と安心のため息を溢した。
「ありがとうございます。本当に良かった」
「成不さん、ありがとうございます。僕が寝ている間も来てくれたって聞きました」
ブランがぺこりとお辞儀をすると成不は小さく笑った。
「いいんですよ。私も気になることがありましたから」
「気になることですか?」
「来儀さんから聞きました。あの“帝国の華”に魔力合わせをさせられたと」
「魔力合わせ、ですか?」
ブランが首をかしげるとバルドロイが答えた。
「お互いに触れあった部分から魔力をぶつけ合って凡その魔力量を測ることだよ。洗礼式の精度には劣るが実力者ならばある程度は把握できるんだ」
「……つまり、あの時滄波様が僕に魔力を流し込んだのは、僕の魔力を測るためだったんですか?」
(それにしてはあまりにも攻撃的だった……。まるで脳をかき回すような——)
ブランが覚えているのは滄波が目を覆ったことまでだった。
彼の力が身体のすべてを奪っていきそうで恐ろしくなり、ブランの何かに触れた瞬間に彼が苦しんだ。
ブランは直感的に滄波の行ったことが魔力合わせではないと感じた。
バルドロイと成不はおそらく来儀の言ったことを信じたのだろう。
「魔力合わせはとても繊細で難しくて実力者でも失敗することがあるんだ。今回のようにまだ魔力量が定かではないブラン相手に加減を間違えたんだろう。さすがの滄波様も自分の魔力が跳ね返ってしまって驚いていらっしゃった」
「……それで、そのあと滄波様はどうなったんですか?」
あの時、二人は滄波の魔力を通して繋がっていた。
滄波もあの声を聞いたはずだ。それに直前に囁いた「ずっと探していた人」という言葉も気になる。
「滄波様はあの後すぐに邸宅へ戻られ、休息の後回復したそうだよ。翌日には空軍本部にいらっしゃったようだから、大した不調ではなかったんだね」
「そうですか……それは良かった」
ブランは滄波に言われたことをバルドロイや成不にも話そうかと思ったが寸でのところで口にするのをやめた。
(今はまだ確証がない。……あの人が何を思ってスキルを使ったのか、わかるまでは大人しくしておかなきゃ)
チラリ、と時計をみると成不は「あ」と声を出した。
「どうされました?」
バルドロイが問いかけると成不は「しまった」と顔をしかめて頭を抱えた。
「すみません、用事をすっかり忘れていまして……。本日はこれでお暇させて頂きます。また明日、中央神宮で会いましょう」
「あぁ、そうでしたか。お忙しいところ本当にありがとうございました。お気をつけて」
成不は申し訳なさそうに頭を下げた。ブランにも微笑んで手を振り、急いで部屋を出ていく。
バルドロイはその様子をみて少し笑った。
「せわしない方だな。とても気のいい人だ」
「そうですね。成不さんはいつでも笑ってくれますから」
「あぁ」
バルドロイはベッドに腰かけるとブランに布団をかける。
「明日の朝は早い。もう眠って明日に備えようか」
「もうですか?僕は起きたばかりなのに……」
「明日、儀式中に居眠りしてしまっては大変だろう?」
「でもまだ眠くありません……。あ、そうだ!」
「ん?」
ブランは目を輝かせて言った。
「また、あの皇室議員の帳簿を見せてください」
バルドロイは「なるほど」と納得して頷いた。
「わかった。では私も眠る準備をしてから話をしてあげよう」
「はい!」
それから使用人たちを呼びバルドロイは軽く湯あみを済ませてからベッドへ戻ってきた。
いつもの就寝時間より少し早いが話をしているうちにあっという間に深夜になるだろう。
バルドロイは棚から皇室会議議員の帳簿を取りベッドへ潜った。
「さて。前回は楊滄波様まで話したな。では次が——ドラコ様だ」
バルドロイがページをめくる。
写真では本物のような威厳が薄れているような気がするが、それでも凛々しい顔をした人だ。穏やかな笑みを浮かべているように見えてその実、赤い瞳は鋭さを持っている。
目立った場所に傷はないが、眼帯の下にはあるのかもしれない。そういうところに軍人らしさが垣間見えた。
「ドラコ・ダ・ルク様」
「私たち陸軍の最高指揮官だ」
ドラコの説明欄には「リリーデインズ領・大公爵・帝国陸軍大将軍・“聖騎士”・ドラコ・ダ・ルク・序列2位」と書かれている。
「ドラコ様は序列2位って書いてあります。じゃあ帝国で2番目に偉いんですね」
「そうだよ。戦争でも大将の策略で勝てたんだ。俺はクロユリ戦争の英雄だって呼ばれてるけど、実際はドラコ様の作戦通りに部隊を動かしただけに過ぎない」
「頭も良くて強いんですね」
ブランは写真を指でなぞり、「そして優しい」と呟いた。
「あぁ。パーティー会場でも感じたと思うがあの方は弱い者の味方なんだよ。とにかく守る側の人なんだ。今までの戦争でも大将軍であるにも関わらず危険だと感じたら前線に立ち部下たちを一人も見捨てなかった。不利な戦況でもできる限り兵士を生きて返すために自分の命も顧みず助けに来て下さる」
「すごい方ですね……。ドラコ様はいったいどんな固有スキルを持っているんですか?謁見の時にはまるで嘘と本当を見抜いているような感じでしたけど」
「あぁ、ドラコ様の能力はね“神の声”。神の天秤を授けられていて真偽を知ることができるんだ。それだけじゃなく千里眼も持っていてね。少し先の未来を断片的に視ることができると言っていたよ」
ブランは「あぁ」と納得した。
「だから戦争では策略の天才なんですね。確かに、それは誰も敵わないや」
「そうだね。しかし固有スキルのおかげであの人が天才なんじゃない。固有スキルは強ければ強いほど跳ね返ってくる反動も大きい。だから特級の方々もできる限り使わない様にしているんだ。自分の身を亡ぼすかもしれない能力だからね」
「毎日使っているわけではないんですか?」
「そんなのは不可能だよ」
バルドロイは「聞いたこともない」と可笑しそうに笑った。
「私だってスキルを使った後は魔力消耗の反動で動けなくなるんだ」
ブランは「そうなんだ」と納得した後にハッとバルドロイを見た。
「そういえば、お父様の固有スキルはなぁに?」
「……特級の方々とは比べ物にならないから、ガッカリしないでくれよ?」
「まさか!」
バルドロイは少しだけ照れくさそうに頬を掻いた。
「俺の固有スキルは“強者の行進”。消費魔力量に応じて千~約一万の銃弾を降らせる能力だ。軍人向きだろう?」
「うわぁ!強そうです!」
「良かった。少年心には響いたか」
「はい!」
ブランは水色の目を大きく見開いて輝かせた。
「すごいな、すごいな!だからお父様は特攻隊に属しているんですね。前線に出て銃弾の雨を降らせるために」
「そうだよ。味方に当たるかもしれないから、誰よりも前に出て敵本陣に向けて発動しなければいけないんだ」
「そんな危険を冒してまで……。すごいや」
ブランは改めてバルドロイを誇りに思った。
命を懸けて戦争に参加している兵士たち。その中でも最も危険な前線で指揮を執るバルドロイはまさしく戦争の英雄だっただろう。
ふと、ブランは想像した。
(僕は戦争の最中、どこでお父様に見つけてもらえたんだろう。約束だって言ってたからきっと僕の本当の親と会話したんだ……)
戦争中に赤子を拾ってられるほど生易しいものではなかったという。激戦を繰り広げてやっとの思いで勝利したクロユリ戦争。
(ということは僕は終戦するときに拾ってもらえたんだな……。魔力があるってことはきっとバルカ国の貴族だったんだ。捕虜だったのかな?)
ブランは帳簿をめくる手を止め、バルドロイを見た。
「……お父様」
「ん?どうした」
「明日の洗礼式が終わったら、僕の出生を話してくれる約束でした」
「……そうだな」
「どんな結果でも僕はお父様の息子だって」
「あぁ」
ブランは不安げに眉を下げてバルドロイに抱き着いた。
「約束、守ってくださいね」
「もちろんだ」
バルドロイはその小さな体を強く抱きしめた。
二人はしばらく何も話すことなく抱きしめあった。
お互いの鼓動を聞き、温もりを感じ、時計の針の音を聞いていた。
——腹が減ったなァ。
ブランの脳内で声が響く。また腹を空かせているようだ。
(そうだ。声のこともお父様に聞かなきゃ。“魔獣”ってなんのことだろうって……)
そう思い、ブランが顔を上げてバルドロイを呼んだ。
「お父様」
「……んん?」
「あ」
しかし、緊張の糸がほどけたバルドロイは連日の疲れもあり既に眠りの中にいる。
ブランはバルドロイを起こしてはいけないと思い、そっと口を閉じた。
(また明日、たくさんお話しするからいっか)
——喉が渇いたなァ。
声はなおも脳に響いている。
ブランは目を閉じて少し考えた。先ほど六日ぶりに起きたおかげで眠気が全くやってこない。ただ体力が落ちていることから起き上がるには億劫だ。
(君、僕の頭の中で会話はできるの?)
——あァ。
ブランの問いかけに声は答えた。
(君は夢じゃなかったんだね)
——お前のナカに居ると言っただろう?
(君は僕だって言ったよね)
——あァ言った。
(じゃあ君に名前は無いの?)
——否。
声は少し不服そうだった。ブランが声をかけようとすると声の方が先に言った。
——お前は自分の本当の名前すら知らない。
——お前は無知だ。無知とは飢えだ。
——お前はもっと喰わねばならない。
(……一体何を喰うの?)
——魔獣の心臓。
(魔獣って何?僕は食べなきゃいけないの?)
ブランの問いかけに声はブランの首を横に向けた。
目の前にはバルドロイの顔がある。
バルドロイの寝息を聞いて声は楽しそうに言った。
——これが魔獣。
「……え?」
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