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第28羽 価値観
しおりを挟むバサリ、バサリと羽音が降りてくる。
太陽に反射して黒光りする鱗。全身には所々にイナズマのような黄色い線が走り、力強い羽音は翼竜の強靱なパワーを嫌でも想像させられる。翼竜なんて見るのは魚の焼き身以来ですね。
それはゆっくりと降りるのを止めると全員を上空から睥睨した。
見つめられた全員に緊張が走り、私を抱き上げるフレイさんの腕にも力が籠もる。
――あれ?あの、なんでまた私は抱き上げられているんですか?
目にもとまらない早業でした。私では反応できないくらいの。困惑しているとなんと翼竜が言葉を投げかけてきた。
『おい人間ども!!ここら辺で変な奴を見かけなかったか!?隠すとタダじゃ置かないぞ!』
かなりの上から目線。なんだか不思議といたずら好きの幼い少年のような印象を受けました。
翼竜から目線を切らないようにしながらログさん達は静かに話し合い始めました。
「おい、念話だ。厄介だぞ」
「もしかしたらタダのグレーターワイバーンじゃないかも知れないんだな」
「ああ、逃走を前提に考えた方が良いかもね」
『おい!無視するな!早く答えろ!!』
「いや、見てないよ!」
『本当だろうな!嘘だとコワいぞ!』
「嘘じゃないさ!あんたに嘘をつく理由がない!」
その答えに考えるように黙った翼竜と目が合った。
僅かな間の後、
『……なんだお前。人間に捕まったのか?折角だ助けてやろう!』
言うや否や、私を抱き上げるフレイさんに向けて火球を放った。違いますよなんて否定する時間もない。
フレイさんはすぐさま背中の杖を片手で取り出し、障壁のようなものを張ったが強度が足りていない。このまま直撃すれば、大火傷を負うことになってしまう。
――この、馬鹿!!
腕の中から飛び出し、かつて翼竜と戦ったときのように火球を投げ返した。
「な!?」「嘘だろ!?」「凄いんだな……」
背後で驚く三人とは裏腹に、まるで予想していたかのように驚くことなく翼竜は火球を避けた。
不思議な事になんだかうれしそうだ。
『やっぱり!お前、あのときの白いのか!?』
――まさか……、貴方はあのときの翼竜?
嘘でしょう!?どんな偶然ですか!?逃げた翼竜が今ここにいるなんて。当時の翼竜よりも一回りも大きくなっているので気づきませんでした。前はあんな黄色の線もありませんでしたし。それによくわかりましたね。私今青いのに。
『なんでお前が人間なんかに捕まってたんだ?』
――捕まっていたのではありませんよ。一緒に行動していただけです。
『なんだ!そうだったら早く言えば良いのに!』
――言う暇もありませんでしたが??
ジトッとした目を送れば、翼竜はサッと目を逸らした。気まずさくらいは感じるようですね。
そんな私達の様子に、後ろから声が聞こました。
「……会話してるのか?」
「そうみたいだね……」
「念話は双方向のものなんだな。でも鳥さんの声はボクたちには聞こえないんだな……」
『さあ、ここであったが百年目!われと勝負しろ!!』
――何故に?
今までの流れから勝負をすることになるか全く理解できないんですが。
――そんなことより何かを探していたのではないですか?そちらを優先した方が良いのでは?
フレイさん達も何かを調査しているようですし何か関係があるのでしょうか。
『そ、それは……』
思い出したようにオロオロしだす翼竜。この様子なら捜し物に注力させて戦わずに済みそうですね。と思ったのが間違いだったのでしょうか。突如として動きを止めると、カラッとした思念を伝えてきました。
『面倒だからイイや!お前と戦う!!』
か、軽い、軽すぎる!!本能で生きているのではでしょうか。それぐらいノリで動いています。
厄介きわまりないです。思わずゲンナリしてしまいます。私は別に戦いたくないのですが。
『嫌ならそこの人間を襲っちゃうぞ!それでも良いのか~!』
いっそ清々しいほどに無邪気。悪気など何もないのでしょう。単純に価値観の違いが出てしまった形ですね。魔物である彼からすれば当たり前に事なのでしょう。
チラリと後ろを窺えば三人が体を強張らせていた。彼女たちは強いですが、先ほどの様子を見るにこの翼竜ほどではありません。襲われてしまえば危険です。
「なあ、流石のあんたでも無理だ!あれを一人で相手取るならAランク級の実力がいる……!あたい達がなんとかするから一緒に逃げるよ……!」
「マジかよ……!?」「や、やるしかないんだな……!」
フレイさんはこう言ってくれていますが、残りの二人の焦ったような様子から有効な手はなさそうです。何よりここは森から外れた、木々が少ない林のような場所。広範囲が見渡せるここで、空を飛ぶ翼竜から人の足で逃げ切るのは無理な話です。
前を見ればわくわくと言った様子の翼竜。純粋に私との戦いを楽しみにしているさまは、捉えようによってはかわいいとも思えるでしょう。
だからといって許せるかどうかは話が別ですが。
「お、おい……!?」
フレイさん達に向け首を横に振り、前に一歩進む。
――……少々お仕置きが必要な様ですね!良いでしょう、その勝負受けます!!後悔させてあげますよ。
『わはは、そう来なくっちゃ!われは龍帝の末の息子なり!!いざ勝負ー!!』
――私は天帝の、恐らく長女、メルシュナーダです。忘れて貰って構いませんよ。……覚悟!!
そして双方が同時に飛び出し、翼爪と鉤爪が激突した。
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