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第36羽 襲撃
しおりを挟む「マズいね。確かにこっちはパルクナットの方角だ。早く追いかけた方が良い」
この中で一番速いのは私です。私が飛んでいけば追いつけるかも知れません。
「待った」
そう思い至り、飛び上がったところフレイさんに止められてしまいました。
「あんただけで行くのは危険すぎる。全員で移動するよ」
―――そんな……!私なら大丈夫ですから!!
「なんて言ってるかはわからないけど……、これはあんただけのために言ってる訳じゃないよ。こんなかで一番強いのはおそらくあんただ。そんなあんたが先行して負けるような危険な奴がいたら、私達だけじゃ対処できない可能性がある。もし、もう街に到達していたとしても、今は夕方だ。Aランク越えの冒険者がいないとはいえ、遠出している奴以外は大多数の冒険者が戻ってきている筈。防衛戦力くらいあるよ。手遅れになっている可能性もあるけど、まだ痕跡は比較的に新しい、間に合うはずだ。冷静になりな。こういうとき焦った奴から死んでいく。良いね?」
――……わかりました。確かに理に適っています。従いましょう。
「良し、まともに戦える体力を残したまま全速力で移動するよ、急ぐよ!」
「おう」「わかったんだな」「了解した」
―――ええ、急ぎましょう……!!
不要な荷物を捨てて、フレイさんが言う最大速度で移動を始めた。
地面を削りながら移動している魔物の影はいつまで経っても見えない。ジリジリと焦燥感が募る中、願いも虚しく遂に城壁が目に入った。
「マジィぞ。城門が壊されてる!」
「煙が……!!」
「焦るな……!!きっと大丈夫だよ!!」
皆が冷静さを欠こうとする中、フレイさんは冷静でした。しかしその表情は焦りを必死に押し隠そうとするもので。
その表情を見て他の皆が、頭に冷水をかけられたように逆に冷静になったのは必然だったと言えるでしょう。
たどり着いた壊された城門で見たものは思わず息をのんでしまうようなものでした。
「ガード……!!」
「うそだろ……」
―――そんな……!!
そこには門番であるガードさんだったものが転がっていました。
正確にはガードさんの姿をした石像が。ただの石像だったらどれほど良かったでしょう。しかしその石像は一瞬前まで生きていたのではないかと思うほどリアルだったのです。魔物という存在がいる以上、これがただの石像であると考えるのは楽観視が過ぎます。
魔物に石にされたと考える方が妥当です。
「ごめん……、ガード」
歯を食いしばったフレイさんがガードさんの石像の横に膝を突いて、なにかを確かめるように手を触れていました。その姿はまるで懺悔をしているようで。
――私達は貴女の意見に納得して従いました。自分だけを責めないでください。
そっと頬に翼で触れ、なだめるように首を振りました。
「メル……、ありがとう」
フレイさんの瞳に力が戻ったとき、ジョンさんが思い出したように言いました。
「待て、ガードはまだ死んでいないかも知れない」
「何だって!?じゃあガードは助かるのかよ!?」
「あくまで希望的観測だけど、俺は石化を解くための薬ってやつを貴族に届けたことがある。直接見てないけど、後でそこの貴族の娘が貴族社会に復帰したって噂を聞いた」
「ほとんど噂話のレベルだけど……、今はそれに賭けるしかなんだな……!!」
「ともかくこの石像が割れたらマズいと思う。どこかに移動させよう……!」
半壊した詰め所に無事だったベットがあったので、とりあえずそこにガードさんを寝かせました。必ず助けますのでそこで待っててください。
壊れた町並みが道のように続く中、所々に冒険者らしき姿の石像が堕ちていました。確認したところ誰も割れていない。助かりましたが魔物は何をしたいのでしょうか。
流石にこの人数を全て移動させるわけに行かないので、瓦礫などが落ちてきそうな場所の真下や倒れそうな石像だけひとまず移動させて先を急ぎます。
角を曲がったところで冒険者の一団が群れになっているのを発見しました。そこにログさんが声をかけます。
「おい!どうしたんだ」
「ああ、お前ら帰ってきたのか!助かった」
そう言った冒険者は視線の先を指さしました。
「あそこ見ろ」
冒険者が指さした先には蠢く巨大な影が。首が三つあり、胴体は蛇のような姿です。
また鱗ですか……。
「あいつはヒドラって言うらしい。だいぶ昔に見た奴がいたんだが、その時はAランクが数人とSランクがいてようやく討伐できたって話だ」
「マジかよ……」
「門番のガードが時間を稼いでくれたおかげでこっちの区画の避難は済んだ。住民の死者はゼロだ。Cランク以上の冒険者をかき集めて足止めに徹したおかげで、別の区画の奴らも街を脱出した。兵士や着いて行かせた冒険者と一緒に今はよその街に避難している途中だ」
フレイさんの予想通りですね。流石です。
「……だがガードは石にされて殺された。他にも石にされた奴がいる。クソッ!!」
「それなんだが石化した奴は戻せるかも知れない」
「何だと!?」
「詳しくは省くが可能性はあるはずだ」
それを聞いて喜びの声が上がる。今まで仲間が死んでいたと思っていたのに可能性が出てきたのです。当然でしょう。
そいつは行幸だと頷いた冒険者が話を続ける。
「どうもあいつは腹が減っているようでな。ああして露店の肉や魚を貪っているんだ。人も食おうとするんだが、幸か不幸か自分が石にしたやつには目もくれない。石化が治せるなら、今のところ死者はゼロの筈だ」
――不幸中の幸いですね。石にしたら食べられないから皆放って置かれたと。生態としては謎ですが助かりました。
「ともかくあいつは強い。まともに戦うのは愚策だ。どうにか追い出すか、増援が来るまで持たせるしかない」
――賛成です。補填の利く食料や、物資で済むならそれで済ませるべきでしょう。命には代えられません。
その時ヒドラのすぐ側の家の扉が開いた。ヒドラを暢気に見上げて目を擦っているのは小さな子供。
母親らしき人物扉から出てきたと思ったらヒドラに驚き、子供を引き戻そうとするが思わず腰を抜してしまった。
このままでは危険です……!!
「おい!誰だあそこを確認した奴は!!避難が済んでないじゃないか!!」
「ノックしたけど反応が無かったんだ!いないと思ったんだよ!!」
「馬鹿野郎!あそこの親子は夜遅くまで地下室で作業してるので有名だろうが!大方寝落ちしてたんだろうよ!」
想定外の事態に一気に大混乱に陥る。
そんな言い争いをしている間にも親子に気づいたヒドラが首を後ろにもたげた。母親は子供を家に戻そうとしていますが、子供は離れようとしません。三つのうち一つの首がガパリと大口を開けた。
――ッ!!間に合って!【側刀】!!
地面を砕いて踏み込み、長距離を一息で跳躍して親子の前に躍り出る。闘気を爆発させ眼前に迫った灰色のブレスを斜めに引き裂いた。まさか止められると思いもしなかったのか、ヒドラは目を見開いて固まってしまっている。
後ろの二人は……抱き合って震えていますが無事です。良かった。
「メル!!無事かい!?」
――ごめんなさい。認識したときには体が勝手に動いていました。
駆けつけてくれたフレイさんに思わず謝る。しかしフレイさんは笑って許してくれました。
「この馬鹿!!冷静さを大事にて言っただろうに!……まったく、しょうがないね!!でも良くやった!あたいはあんたの魔物っぽくないそんなところが気に入ったんだ。グチグチ言うしかできない男共の何倍もマシさ!こうなったらとことん付き合ってやるよ」
――フレイさん……!!
「全部終わったら抱き枕の刑だからね!!」
――フレイさん……。
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