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第十ニ羽 孤児院もズブズブ
しおりを挟む「あら、初めて見る子ね。はじめまして、お名前はなんですか?」
「……えっと、メルシュナーダ、メルと呼んでください」
「ご丁寧にありがとう。ワタシはクレア。白蛇聖教のシスターよ」
身を屈めて笑顔でこちらに目線を合わせてくるエルフのお姉さん。
う~ん。扱いが完全に子供に対するそれですね。さすがにさっきの男の子よりは大きいのですが。
「遅刻しちゃったのかな? 迷子になっちゃった?」
「いえ、そうではなく……」
「外で話すのもなんだし、まあとりあえず入ろっか」
「わわっ」
手を引っ張られて孤児院の敷地に連れて行かれてしまった。そのまま門を閉めて鍵を掛けるクレアさん。
「最近物騒だから勝手に開けちゃダメよ? 来たとき門が閉まってたら表のボタンを押してね。誰か行くから」
「あ、はい、わかりました」
手を引いて建物の方へと歩いて行くクレアさんに首肯する。その間敷地内で子供達が遊んでいる様子が散見される。ジャングルジムやシーソー、ブランコに鉄棒など、まるで公園みたいで皆楽しそうに遊んでいます。
いや、そうではなく……。
「あの、私の友達が孤児院出身だそうで少し気になったので見に来ただけなのですよ」
「あら、そうなの? その子はここ出身?」
「いえ、王都にある孤児院だと言ってました」
別大陸ですけど。
「そっか。それなら友達に会いに来たとかじゃなくホントにのぞきに来ただけ?」
「はい、なので私はここに入るべきではないとは思うのですが……」
「ううん、それは全然問題ないわよ」
「え?」
「ここは孤児院だけど親がいる子も昼間は預かってもいるの。ここなら広いし、思いっきり遊べるからね」
なるほど、ここは保育園や幼稚園のような場所なのでしょうか。なら公園というより校庭ですか。
「白蛇聖教が支援しているから危険人物なんかは滅多に近寄らないの。白鱗騎士団の巡回ルートにも入ってるしその点でも安全」
……シスターさんがいる時点でそんな気はしていましたがここでも出てくるのですね、白蛇聖教。ここの孤児院はその財力で支えられているわけですか。いえ、もしかしたら全土でそんなことを……? それなら本当にすごい事です。尊敬します。
子供達は笑顔ですし、良いことしてるとは思うのです。がそれはそうとして苦手意識が先行してどうにも……。
「今日は用事があるの? お使いとか?」
「いえ、特にはないですけど……」
これからクエストを受けに行こうとしていた所ですし。
「なら折角だし、今日はここで遊んで行けば良いんじゃないかしら。その子も喜ぶと思うわよ?」
彼女の目線の先を釣られて見れば、キラキラ目を輝かせている男の子が。期待でいっぱいと顔に書いてあります。
こ、断りずらい……。
「わ、わかりました……」
「やった! お前! こっちで遊ぶぞ!」
「わわっ!?」
突然引っ張られてバランスを崩してしまう。クレアさんは微笑ましそうに手を振って見ているだけ。助けは期待できそうにありませんね。
「ほら、ちょっと待ってください」
ぐんぐん進んでいく男の子の腕を引いて止める。
「私はお前じゃなくてメルですよ。あなたの名前は?」
「……クルーク」
「よろしくお願いしますね、クルークくん。何をしますか?」
「それじゃあ―――」
子供と遊ぶわけですから、さすがに加減が必要ですよね。そう意識して一歩踏み出したところで盛大にずっこけた。
……ふぎゅ!? な、なにもないのに!?
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