無限の転生~今世でついに人間卒業!? こんな人生こりごりだとは言ったけど、人間辞めたいとは言ってない~

ねむ鯛

文字の大きさ
173 / 207

第45羽 顔合わせ

しおりを挟む
「悪かったわね、少し急ぎ過ぎたわ」

「ほんとだよ! メルったら泣きそうになってたじゃん!」

「全然泣いてないですが??」

 ……本当ですよ?
 あのあと、ヴィネアさんに連れられて、ちょっとおしゃれなレストランに来た。性急過ぎたお詫びだそうです。
 依頼を受けてからご飯をどうするか決めるつもりだったため、渡りに船と承諾しました。押しは強いですが、悪い人ではなさそうでしたし。
 少しお話をする事になりそうなので、今日の依頼は無理でしょうね……。

 明日またギルドに行くの、お腹痛い……。
 ヴィネアさんが、良い香りの紅茶を口に運び、音もなくカップをソーサーに戻した。

「改めて紹介するわ。わたしがヴィネア、魔法使いよ。水の魔法が得意ね。それ一本でここまで来たわ。それで、こっちがうちのパーティーメンバー」

 ヴィネアさんが背後に控える2人を紹介してくれた。
 冒険者ギルドの外で合流した人たちだ。

「執事です」「メイドです」「「お嬢様がお世話になっております」」

「いえ、お構いなく……って、あの……パーティーメンバー……? 従者ではなく?」

「どちらも違いないわ。基本的に冒険者活動は3人でやっているけど、戦闘は基本的にわたしが担当。彼らには雑務や露払い、それと身の回りの世話を任せてるわ。私、そういうの嫌いなの」

「なるほど……」

 そういうパーティーの形も見たことはあります。基本的に推奨はできないですけどね……。信頼とか安全面とかで。
 とはいえ、ヴィネアさんはSランクまで上がっているので、問題はないのでしょう。
 
 相手の紹介が終わったので、こちらも名乗る。

「メルです。槍を使って戦います。魔術を補助として使います」

「あんたは槍使いね。そのマジュツってなに?」

「少し変わった系統の魔法……という理解で構いません」

「ふ~ん……、わかったわ。あんたは?」

「えっとミルです。魔法使いで、水と火が得意だよ。雷もすこしできて、土と風は一応使える……かな? 最近は薬を作って売ってるよ」

「魔法使いで、属性は色々。薬の知識あり……と。わかったわ」

 ヴィネアさんの視線が、じっとこちらを値踏みしてくる。
 まるで人材査定でもしているような眼差しだ。そんなに品定めしないでほしいのですが……。
 
「……ヴィネアさんは貴族なんですか?」

 思わず尋ねると、彼女はやや誇らしげに顎を上げた。

「ええそうよ。海の物流の大半を担っているのがオケアニス家。出身は西の大陸、ウェイストリアよ。白蛇聖教ですら大陸間の渡航をするときにうちの船に依頼をする……って言えば凄さが伝わるかしら?」

「あ、あたしも聞いたことある……」

 ミルがぽつりと呟いた。どうやら、とんでもなく有名な名家らしい。
 つまり、本物の“お嬢様”……。しかも単なる自信家ではなく、実力があるタイプ。
 そして私は目をつけられている……。
 泣きたい……。いや泣きませんが??

「さて。幸運な出会いに感謝をするのはこのあたりにして……、そろそろ本題に入りたいのだけど……」

 そう言って、私たちを見ながらヴィネアさんが顔を綻ばせた。
 
「ますは食事にしましょうか。さ、どれでも好きなものを選んで」

「そういうわけには……」

「なに、遠慮? 巫山戯ないで頂戴。わたしはオケアニス家の淑女として貴女達をもてなす用意があるの。 ぐだぐだ言わずに受け取っておきなさい」

「メル……」

 困った顔で見つめてくるミルに、そっと頷いた。

「ミルさん、これ以上断るのはむしろ失礼にあたります。ヴィネアさんのご厚意に甘えさせていただきましょう」

「あら、ものわかりが良いじゃない。そういうの嫌いじゃないわ。注文なんて、選ばずに欲しいもの全部にしたって良いのよ?」

「あはは……、さすがにそれは……」

「――――ねえ」

 発せられたのはたった一言だったが、それには言葉を止めざるを得ない何かが込められていた。
 紅茶を口に運んだヴィネアさんが流し目を送ってくる。

「わたし、2度同じことを言うのは嫌いなの。それとも――――わたしにあんた達の要望すら受け止められない度量しかないって……そう言いたいわけ?」

「……わかりました。そこまで言うのなら精一杯、ご相伴しょうばんに預からせていただきます」

「ええ、最初から素直にしておけばいいのよ」

 貴族として客人をもてなすのは家の力を示す行為。
 できないとむしろ他の貴族から侮られることになりかねない。ここで下手な遠慮はむしろ不敬かもしれません。
 ならば、私も全力で応えさせていただきます。

「では――――ここからここまで、全部ください」

「元気な注文ね。嫌いじゃな――――は?」

 満足げな表情を浮かべていたヴィネアさんが目を見開いた。

「あ、あんたそれ、全部食べられるの……?」

「もちろんです。自慢ではありませんが、食事を残したことはありません」

「そ、そう。元気で良いことね……」

 心なしか、彼女のカップを持つ手が震えている気がした。

「ああ……トメラレナカッタ……」
 
 そして横でミルはどこか遠い目をしていた。
 ミル、遊んでないであなたも早く選んでください。お店に迷惑になってしまいますよ?
 
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...