かん子の小さな願い

にいるず

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かん子のある日 その後のその後

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 かん子は家に帰り、披露会場でもらったいなり寿司や紅白饅頭をしっかりといただいた。
 もれなくついている、残念兄俊史と。

 しかも以前録画してあった映画を見ながらである。兄はもちろん自分もSFは好きなので、今日見ているのももちろんSFだ。いいお年頃の女の子が残念な兄とふたり、こんないいお天気の中映画を見て過ごすというのもいかがなものかと思ったのだが。
 今日見た映画は面白かったので、この時間は無駄ではなかったと自分に納得させた。

 迎えまでにはまだ時間があるので、夕御飯の下ごしらえをする。

 今日は、炊き込みご飯と煮物そして汁物だ。父親は釣りに行っているが、たぶん成果はないだろう。仲間と一杯やってくるかもしれない。
 母親もきっと帰ってきたらぐったりして、食事作りどころではないだろう。たぶん自分もそう思っているのか、わざわざ今日の夕飯の献立をかん子に告げてから出かけた。

 (私に作っておけっていうことよね)

 下ごしらえをしながらリビングを見ると、残念兄はスエットのままでだらしなく寝そべり、まだテレビのバラエティーを見ていた。

 (お前、暇じゃん。迎えに行けよ!)

 心の中でついさけんだら、残念兄がじろっとこちらを見た。

 「かん子~。今、飛ばさなかった~?」

 「そんなわけないじゃん。今日、炊き込みご飯だからね」

 残念兄は、まるでかん子の心の中を読んでいるかのようで身震いした。かん子は弱みがあるので、残念兄に逆らえない。でもいってやりたいし、見せてやりたい。
 あの残念兄に恋する乙女たちに。リビングにいるあのだらしない姿を。あんな姿を見たら、100年の恋もいっぺんに冷めるだろう。

 (あ~あ、私ってプチかわいそう~!)

 下ごしらえがあらかたすんだ頃、母親から電話が来た。

 「迎えに行ってくるからね~」

 「わかった~」

 だらしないかっこうのままの姿で、返事が来た。



 かん子はホールに着くと、車の中から外をうかがった。

 ここへ向かう途中朝起きたことを思い出した。朝会ったあのへんなやつにまた遭遇しないかドキドキした。それにしてもなんでここまでドキドキするんだろう。やっぱりへんなやつだったから、身の危険を感じて警戒してドキドキするのかしらとかん子は勝手に解釈した。

 車から降りて、ロビーに向かうときにもなぜか緊張していた。会いたくないはずなのに、視線を感じなくてほっとするより残念がってる自分に気づき、誰も見ていないのにそう考えた自分がなぜか急に恥ずかしなってひとり顔を赤くした。

 (これって他の人が見たら、変な人って思うよね。なんであんな奴のこと考えてるのよ!)

 かん子は、そう考えた自分に妙に腹が立ったので忘れることにした。


 ホールにつくと、ロビーの椅子に母親美絵子ともう一人女の人が座っていた。

 「お待たせしました」

 もう一人いるので、かん子はちょっとよそゆきの声で挨拶した。

 「あら、かん子ちゃん。しばらく見ないまに、またきれいになって」

 母の横に座っていたのは、母親のサークル仲間の佐和子さんだった。かん子が無事就職できたのも、この佐和子さんのおかげだ。なぜか他のサークル仲間は、知らないのだけれど。

 佐和子さんは、とっても上品な人でかん子の憧れだ。見た目だけでなく所作もすばらしい。
 正直このサークルには似合わない人だとかん子は思っている。こんな上品な人が、演歌に合わせて派手な着物で踊りを踊る?のだ。佐和子さんに似合うのは、ちゃんとした日舞だろう。
 しかし母の話では、すごく楽しそうにしているらしい。まあボランティア活動をするという点だけは、佐和子さんにふさわしいところだろう。それくらいかん子は佐和子さんを素敵な人だと思っている。

 佐和子さんのようにお上品になりたいものだと思うが、今は見るだけで満足しているかん子であった。

 「正也も迎えに来るはずなんだけど遅いわねえ。この状況見たらとっても残念がると思うわ」

 佐和子さんは、なぜかいたずらっこのような顔をして、かん子の母親美絵子にいった。二人で顔を見合わせて、いたずらの相談でもしているような様子だ。

 (何のこと?)

 かん子は一人首をかしげた。

 そうこうしているうちに、朝のさわがしいメンバーがやってきたので、帰ることにした。

 「それじやあまたね、佐和子さん」


 「こちらこそよろしくね、美絵子さん」

 そうかん子の母親とあいさつし合ってから、佐和子さんがすぃ~とかん子のところに来ていった。

 「かん子ちゃん、4月からいよいよ会社員ね。またあの子のことよろしくね!」

 かん子が何のことかと思いめぐらしている間に、佐和子さんはロビーを抜けて行ってしまった。


 帰りの車の中は、朝と一緒でかけている曲も聞こえないほどの勢いで、会話している母親と仲間たちの姿があった。


































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