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キャスリンの使命
キャスリンはそう言った後、なぜか遠い目をしているスティーブにいった。
「今は夜よね」
時計の針は真夜中を指している。
「今日はまず寝てちょうだい。また来るわ。そうね、明日の夜。今度はちゃんと時間を決めてくるわ。何時に来ればいい?」
「そうですね。この部屋に戻ってくるのは夜の9時すぎですね」
「じゃあ、明日また来るわ。お休みなさい」
犬のキャスリンは冷たい鼻の先をスタンプのようにスティーブの頬に押し当ててぱっと消えた。
キャスリンはスティーブに寝るように言ったが、先ほどまでのアシュイラ皇国の民の悲惨な出来事を見せつけられて寝られるわけがない。
ただあの悲惨な状況をのこの目で見ることができたのは、きっと今後アシュイラ皇国を助けるのに役立つだろう。今の自分は、どんなことをしても助けたいと思っているのだから。生半可な決意では国ひとつを助けることはできない。自分も冷血にならなくはいけないことも出てくるだろう。ただそれにキャスリンを巻き込むのは心苦しかった。ただキャスリンの協力なくては、ままならないことも確かだった。スティーブは、いろいろ考えているうちにいつの間にか眠ってしまっていた。
次の日、キャスリンは言った通り夜の9時きっかりに現れた。スティーブは軽装ながらも、動きやすい服装をしている。この家にはスティーブだけしかいないので、魔法の練習にはうってつけだった。
「スティーブ、今日から魔法の特訓よ。まず魔法で王家に伝わる箱を出しましよう。この世界にもあると思うのよ。ただ私が使っている箱と同じだと出ないのかしら?」
「確か父さんも言っていました。私が所有するものがあることを」
「そう、マークが言っていたのね。じゃあマーク私と手をつないで!」
「手ですか?」
スティーブは犬のキャスリンの全身を眺めていった。
「失礼ね。じゃあ私を抱っこしてよ」
キャスリンの声の様子からちょっと怒っているのを感じてスティーブは笑いながら抱っこした。
「じゃあ行くわよ」
キャスリンは呪文を唱える。
キャスリンとスティーブがいる部屋全体が白い光に包まれた。しばらくすると徐々に光は消えて一つの箱が現れた。キャスリンは急いではこの前に飛んでいった。
「ねえねえ、スティーブ。箱のふたを早く開けてみて!」
キャスリンのお知りについているしっぽがブンブン揺れている。キャスリンは自分で開けたそうだったが、犬の足では開けられない。スティーブを食い入るように見つめて催促してきた。
スティーブは、おもむろに箱に近づいて箱のふたを開けた。キャスリンが箱の前に飛んで行って、前足で箱に足をかけて中をのぞいている。過去の中にはもう一つ小さな箱と一冊の本が入っていた。キャスリンが先に小さな箱を開けるように言うので、スティーブは小さな箱を取り出し蓋を開けた。中には王冠と腕輪が一つ入っていた。スティーブが腕輪を手に取った。キャスリンに見えるようにスティーブがかかんでくれた。近くで見るとキャスリンがはめている腕輪と同じだった。きれいな飾り模様の真ん中にキャスリンのより緒と大き目な黄色い石がはまっている。
「ねえ私の腕輪とおそろいね」
キャスリンが楽しそうに前足の片方の足を上げる。確かにスティーブが持っている腕輪とそっくり同じだった。大きさは違うが。スティーブは改めて腕輪を見ようとするといつの間にかスティーブの腕に腕輪がはまっている。
「えっ」
「スティーブ、今度は腕輪を取るイメージを頭の中に描いてみて」
スティーブが頭の中で思い浮かべると、いつの間にか腕輪が手の上にのっていた。もう一つ箱に入っていた王冠もきれいな飾り模様に包まれた黄色い大きな石とその周りにきれいな色の石が周りを取り囲んでいた。スティーブは感嘆しながらも小さな箱を大きな箱に戻した。
「ねえスティーブ、私の箱の中にはきれいなネックレスとおそろいのイヤリングがあったのよ」
そういいながらもキャスリンはもう一度大きな箱の中を確認している。
「ないわねえ~」
「何がですか?」
「魔法の鏡よ。私のところだけに入っていたのかしら」
「そうですね。この中にあるのは、あとはこの本だけですから」
「じゃあスティーブ、本を取り出して見て。気を付けてね、いってらっしゃい」
スティーブは本を取り出した。傍らでキャスリンは変なことを言うなあと思いながら、スティーブは本を1ページめくった。たちまちスティーブの体が部屋から搔き消えた。
「スティーブ行っちゃったわ。私の時と同じあの女性の頭の中に入るのかしら。魔法の鏡もないんなら、スティーブに魔法を教えるのが私の使命ね」
そうひとりごとを言っていたとき、スティーブがまた部屋にポッと現れた。スティーブの体がぐらりと揺れる。キャスリンは魔法でスティーブの体を支えベッドに移動させた。スティーブが持っていた本は、空中を飛んですぽっと箱の中に入った。すると箱は瞬く間に消えた。
「スティーブおやすみなさい」
キャスリンは静かにスティーブの部屋から消えたのだった。
「今は夜よね」
時計の針は真夜中を指している。
「今日はまず寝てちょうだい。また来るわ。そうね、明日の夜。今度はちゃんと時間を決めてくるわ。何時に来ればいい?」
「そうですね。この部屋に戻ってくるのは夜の9時すぎですね」
「じゃあ、明日また来るわ。お休みなさい」
犬のキャスリンは冷たい鼻の先をスタンプのようにスティーブの頬に押し当ててぱっと消えた。
キャスリンはスティーブに寝るように言ったが、先ほどまでのアシュイラ皇国の民の悲惨な出来事を見せつけられて寝られるわけがない。
ただあの悲惨な状況をのこの目で見ることができたのは、きっと今後アシュイラ皇国を助けるのに役立つだろう。今の自分は、どんなことをしても助けたいと思っているのだから。生半可な決意では国ひとつを助けることはできない。自分も冷血にならなくはいけないことも出てくるだろう。ただそれにキャスリンを巻き込むのは心苦しかった。ただキャスリンの協力なくては、ままならないことも確かだった。スティーブは、いろいろ考えているうちにいつの間にか眠ってしまっていた。
次の日、キャスリンは言った通り夜の9時きっかりに現れた。スティーブは軽装ながらも、動きやすい服装をしている。この家にはスティーブだけしかいないので、魔法の練習にはうってつけだった。
「スティーブ、今日から魔法の特訓よ。まず魔法で王家に伝わる箱を出しましよう。この世界にもあると思うのよ。ただ私が使っている箱と同じだと出ないのかしら?」
「確か父さんも言っていました。私が所有するものがあることを」
「そう、マークが言っていたのね。じゃあマーク私と手をつないで!」
「手ですか?」
スティーブは犬のキャスリンの全身を眺めていった。
「失礼ね。じゃあ私を抱っこしてよ」
キャスリンの声の様子からちょっと怒っているのを感じてスティーブは笑いながら抱っこした。
「じゃあ行くわよ」
キャスリンは呪文を唱える。
キャスリンとスティーブがいる部屋全体が白い光に包まれた。しばらくすると徐々に光は消えて一つの箱が現れた。キャスリンは急いではこの前に飛んでいった。
「ねえねえ、スティーブ。箱のふたを早く開けてみて!」
キャスリンのお知りについているしっぽがブンブン揺れている。キャスリンは自分で開けたそうだったが、犬の足では開けられない。スティーブを食い入るように見つめて催促してきた。
スティーブは、おもむろに箱に近づいて箱のふたを開けた。キャスリンが箱の前に飛んで行って、前足で箱に足をかけて中をのぞいている。過去の中にはもう一つ小さな箱と一冊の本が入っていた。キャスリンが先に小さな箱を開けるように言うので、スティーブは小さな箱を取り出し蓋を開けた。中には王冠と腕輪が一つ入っていた。スティーブが腕輪を手に取った。キャスリンに見えるようにスティーブがかかんでくれた。近くで見るとキャスリンがはめている腕輪と同じだった。きれいな飾り模様の真ん中にキャスリンのより緒と大き目な黄色い石がはまっている。
「ねえ私の腕輪とおそろいね」
キャスリンが楽しそうに前足の片方の足を上げる。確かにスティーブが持っている腕輪とそっくり同じだった。大きさは違うが。スティーブは改めて腕輪を見ようとするといつの間にかスティーブの腕に腕輪がはまっている。
「えっ」
「スティーブ、今度は腕輪を取るイメージを頭の中に描いてみて」
スティーブが頭の中で思い浮かべると、いつの間にか腕輪が手の上にのっていた。もう一つ箱に入っていた王冠もきれいな飾り模様に包まれた黄色い大きな石とその周りにきれいな色の石が周りを取り囲んでいた。スティーブは感嘆しながらも小さな箱を大きな箱に戻した。
「ねえスティーブ、私の箱の中にはきれいなネックレスとおそろいのイヤリングがあったのよ」
そういいながらもキャスリンはもう一度大きな箱の中を確認している。
「ないわねえ~」
「何がですか?」
「魔法の鏡よ。私のところだけに入っていたのかしら」
「そうですね。この中にあるのは、あとはこの本だけですから」
「じゃあスティーブ、本を取り出して見て。気を付けてね、いってらっしゃい」
スティーブは本を取り出した。傍らでキャスリンは変なことを言うなあと思いながら、スティーブは本を1ページめくった。たちまちスティーブの体が部屋から搔き消えた。
「スティーブ行っちゃったわ。私の時と同じあの女性の頭の中に入るのかしら。魔法の鏡もないんなら、スティーブに魔法を教えるのが私の使命ね」
そうひとりごとを言っていたとき、スティーブがまた部屋にポッと現れた。スティーブの体がぐらりと揺れる。キャスリンは魔法でスティーブの体を支えベッドに移動させた。スティーブが持っていた本は、空中を飛んですぽっと箱の中に入った。すると箱は瞬く間に消えた。
「スティーブおやすみなさい」
キャスリンは静かにスティーブの部屋から消えたのだった。
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