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スティーブの魔法
キャスリンは次の日も昨日と同じ夜9時にスティーブのもとに言った。スティーブはキャスリンが来るのを待ち構えていたように思えた。
「スティーブ。体の調子はどう?異常ない?」
「はい。大丈夫です」
「よかったわ。でどうだった?」
キャスリンの問いにスティーブは何やら微妙な顔をした。
「どうだったの?あの女性の頭の中に入ったの?」
「いえっ、私はなぜか彼女を上から見ていました」
「上から?どういうこと?」
「気が付いた時には彼女、アシュイラ皇国の初代王妃のそばにいたのです。上に漂っている感じでした」
「そうなの?私の時とちょっと違うのね。じゃあ彼女がいた国を見てみた?」
「いえっ、私が見たのは彼女がこの世界に飛ばされたときからです」
「そう~。で、どうしてそんな顔をしているの?」
「そんな顔とは?」
スティーブは自分でどんな顔をしているのかわかっていないらしい。
「なんだか『びみょう~』っていう顔ょ!」
「なるほど...」
スティーブはそう答えるだけで話すのをやめてしまった。
「どうしたの?」
キャスリンはスティーブの反応が気になって仕方なかった。キャスリンの聞きたそうな様子がわかったのだろう。スティーブはぽつぽつと話し始めた。
「彼女、アシュイラ皇国の初代王妃はすごい破天荒な人だとお見受けしました。やることなすこととても私では考えられないことばかりで。まず木にいろいろ実らせるってところからですけど」
「あ~あ、確かにそうかもね」
キャスリンもはじめびっくりしたが、彼女がいた国を見てからは驚かなくなった。彼女のいた国ではいろいろ当たり前だったから。ただ彼女がいた国を見たことのないっスティーブならその反応も普通なのかもしれない。もしかしたら彼女の中に入ったことのある人は、キャスリンしかいないのかもしれないと思い至った。確かマークも言っていた。スティーブの父親である先代の王も微妙な顔をしていたと。
でもなぜなのだろう。なぜキャスリンだけなのだろう。考えてからはっとした。彼女の思考が理解できるキャスリンは思い至ったのだ。スティーブや歴代の王は皆彼女からしたら子孫だとしても異性だ。恥ずかしかったのかもしれない。あともう一つ、やはりキャスリンに何か使命があるのだ。キャスリンはそう結論付けてスティーブに別なことを聞いてみた。
「スティーブ?何か魔法は使ってみた?」
「はい!ちょっと空を飛んでみました」
「空?飛んだ?」
キャスリンはスティーブの言葉に思わず驚いて叫んでしまった。
「キャスリン様がやったトウメイニンゲンの魔法をかけて空を飛んでみたんです。ちょっとですけど。あと今からちょっとやってみたい魔法があるんですけどいいですか?」
「もちろんよ。見せて!」
キャスリンの答えに気を良くしたスティーブはあろうことかキャスリンに向かって呪文を唱えた。するとキャスリンの体が光に包まれたかと思うと犬だったキャスリンが今現在の12歳のキャスリンになった。
キャスリンは急に自分の見ている景色の高さが変わったのに驚いて、自分の体を見た。まず手を、そして全体をくまなく見ている。そして自分が人間に変化したのを確信してスティーブに飛びついた。
「スティーブ!」
キャスリンの喜びようにスティーブも自分の背丈よりずいぶん小さいキャスリンを抱きしめていった。
「どうですか?私の魔法!」
「すごいわ!さすがスティーブね。一日で使いこなすなんて」
「いえっ」
スティーブはそっけなく言ったが、キャスリンに褒められてまんざらでもないようだった。ただキャスリンははっとした。
「まだあなたの世界にはコルトがいるわよね。見つからないようにしていてね」
「はい、防御も極めておきます。映像で見たサイモクが使った魔法、あれはいろいろ役に立ちそうですから」
「そうね」
キャスリンは一日で魔法を極めてしまったスティーブに感動を覚えた。と同時にちょっとだけ疑問を持った。もしスティーブがこんな魔法を使えていたら、キャスリンはあんなことにならなかったのではないかと。キャスリンがちょっと考え込んだのを見てスティーブがキャスリンに聞いてきた。
「キャスリン様?何を考え込んでいるんですか?」
さすがスティーブである。キャスリンの考えることはみんなお見通しなのかもしれない。
「えっとねえ、こんなにスティーブが魔法を使いこなせるなら、私の前の人生はあんなことが起こらなかったのかもって思ったの」
「そうですね。私も思いました。実際魔法を使ってみて、こんなに力があるならキャスリン様をあんな目に合わせることはしなかったと」
「そうよね~。やっぱり私を戻したのは、彼女のおかげなのかしら」
「そうかもしれませんね。キャスリン様を助けるために、彼女が私に力を貸してくれたのかもしれません。ただあの時には彼女もそれが精いっぱいだったのかもしれないと思います。じゃなければ彼女の性格ならこんな中途半端なことはしなかったでしょうから」
キャスリンはスティーブに疑問をぶつけながら自分でももう一度考えた。
「どうなのかしら。私が一度死ぬこと、スティーブの存在が一度なくなることは彼女にとって、それとも私にとって必要だったことなのかもよ。だってそうでもなきゃあ過去に戻るなんてこと考えないもの。復讐するのはすごいエネルギーがいるわ。前の人生のキャスリンだったらできたかしら。所詮お嬢様だったもの。死ぬほどつらいことを経験したからこそできるのかもしれないと思うわ」
「確かにそうでしょうけど、それでもキャスリン様がつらい目にあったことが私にはつらいのです」
「ありがとう、スティーブ。私スティーブとならなんだってできる気がする。やっぱりひとりじゃないっていいことよね」
キャスリンはもう一度スティーブに抱き着いた。しばらくそうしていたが、スティーブが犬の時のようにキャスリンの背中をさすっているのを感じてキャスリンは急に恥ずかしくなった。
「スッ、スティーブ、まっまた来るわね」
キャスリンは慌てて消えたのだった。
「スティーブ。体の調子はどう?異常ない?」
「はい。大丈夫です」
「よかったわ。でどうだった?」
キャスリンの問いにスティーブは何やら微妙な顔をした。
「どうだったの?あの女性の頭の中に入ったの?」
「いえっ、私はなぜか彼女を上から見ていました」
「上から?どういうこと?」
「気が付いた時には彼女、アシュイラ皇国の初代王妃のそばにいたのです。上に漂っている感じでした」
「そうなの?私の時とちょっと違うのね。じゃあ彼女がいた国を見てみた?」
「いえっ、私が見たのは彼女がこの世界に飛ばされたときからです」
「そう~。で、どうしてそんな顔をしているの?」
「そんな顔とは?」
スティーブは自分でどんな顔をしているのかわかっていないらしい。
「なんだか『びみょう~』っていう顔ょ!」
「なるほど...」
スティーブはそう答えるだけで話すのをやめてしまった。
「どうしたの?」
キャスリンはスティーブの反応が気になって仕方なかった。キャスリンの聞きたそうな様子がわかったのだろう。スティーブはぽつぽつと話し始めた。
「彼女、アシュイラ皇国の初代王妃はすごい破天荒な人だとお見受けしました。やることなすこととても私では考えられないことばかりで。まず木にいろいろ実らせるってところからですけど」
「あ~あ、確かにそうかもね」
キャスリンもはじめびっくりしたが、彼女がいた国を見てからは驚かなくなった。彼女のいた国ではいろいろ当たり前だったから。ただ彼女がいた国を見たことのないっスティーブならその反応も普通なのかもしれない。もしかしたら彼女の中に入ったことのある人は、キャスリンしかいないのかもしれないと思い至った。確かマークも言っていた。スティーブの父親である先代の王も微妙な顔をしていたと。
でもなぜなのだろう。なぜキャスリンだけなのだろう。考えてからはっとした。彼女の思考が理解できるキャスリンは思い至ったのだ。スティーブや歴代の王は皆彼女からしたら子孫だとしても異性だ。恥ずかしかったのかもしれない。あともう一つ、やはりキャスリンに何か使命があるのだ。キャスリンはそう結論付けてスティーブに別なことを聞いてみた。
「スティーブ?何か魔法は使ってみた?」
「はい!ちょっと空を飛んでみました」
「空?飛んだ?」
キャスリンはスティーブの言葉に思わず驚いて叫んでしまった。
「キャスリン様がやったトウメイニンゲンの魔法をかけて空を飛んでみたんです。ちょっとですけど。あと今からちょっとやってみたい魔法があるんですけどいいですか?」
「もちろんよ。見せて!」
キャスリンの答えに気を良くしたスティーブはあろうことかキャスリンに向かって呪文を唱えた。するとキャスリンの体が光に包まれたかと思うと犬だったキャスリンが今現在の12歳のキャスリンになった。
キャスリンは急に自分の見ている景色の高さが変わったのに驚いて、自分の体を見た。まず手を、そして全体をくまなく見ている。そして自分が人間に変化したのを確信してスティーブに飛びついた。
「スティーブ!」
キャスリンの喜びようにスティーブも自分の背丈よりずいぶん小さいキャスリンを抱きしめていった。
「どうですか?私の魔法!」
「すごいわ!さすがスティーブね。一日で使いこなすなんて」
「いえっ」
スティーブはそっけなく言ったが、キャスリンに褒められてまんざらでもないようだった。ただキャスリンははっとした。
「まだあなたの世界にはコルトがいるわよね。見つからないようにしていてね」
「はい、防御も極めておきます。映像で見たサイモクが使った魔法、あれはいろいろ役に立ちそうですから」
「そうね」
キャスリンは一日で魔法を極めてしまったスティーブに感動を覚えた。と同時にちょっとだけ疑問を持った。もしスティーブがこんな魔法を使えていたら、キャスリンはあんなことにならなかったのではないかと。キャスリンがちょっと考え込んだのを見てスティーブがキャスリンに聞いてきた。
「キャスリン様?何を考え込んでいるんですか?」
さすがスティーブである。キャスリンの考えることはみんなお見通しなのかもしれない。
「えっとねえ、こんなにスティーブが魔法を使いこなせるなら、私の前の人生はあんなことが起こらなかったのかもって思ったの」
「そうですね。私も思いました。実際魔法を使ってみて、こんなに力があるならキャスリン様をあんな目に合わせることはしなかったと」
「そうよね~。やっぱり私を戻したのは、彼女のおかげなのかしら」
「そうかもしれませんね。キャスリン様を助けるために、彼女が私に力を貸してくれたのかもしれません。ただあの時には彼女もそれが精いっぱいだったのかもしれないと思います。じゃなければ彼女の性格ならこんな中途半端なことはしなかったでしょうから」
キャスリンはスティーブに疑問をぶつけながら自分でももう一度考えた。
「どうなのかしら。私が一度死ぬこと、スティーブの存在が一度なくなることは彼女にとって、それとも私にとって必要だったことなのかもよ。だってそうでもなきゃあ過去に戻るなんてこと考えないもの。復讐するのはすごいエネルギーがいるわ。前の人生のキャスリンだったらできたかしら。所詮お嬢様だったもの。死ぬほどつらいことを経験したからこそできるのかもしれないと思うわ」
「確かにそうでしょうけど、それでもキャスリン様がつらい目にあったことが私にはつらいのです」
「ありがとう、スティーブ。私スティーブとならなんだってできる気がする。やっぱりひとりじゃないっていいことよね」
キャスリンはもう一度スティーブに抱き着いた。しばらくそうしていたが、スティーブが犬の時のようにキャスリンの背中をさすっているのを感じてキャスリンは急に恥ずかしくなった。
「スッ、スティーブ、まっまた来るわね」
キャスリンは慌てて消えたのだった。
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