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つぎはクミールあなたの番です※ご注意ください。虫が出ます。食事に関することです。
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キャスリンは、父であるスコットにあるお願いをした。午前中の勉強を一週間休ませてほしいといったのだ。キャスリンは前回の人生で、17歳には完璧に勉強やマナーをマスターしていた。12歳に戻った今も勉強やマナーはすっかり覚えている。だから少しぐらい休んでも問題ないのだ。今学んでいる家庭教師の先生方からもお墨付きをもらっている。
こちらでのいろいろをかたずけたら、スティーブと過去へ飛ぶつもりだ。そうなったらどうやっても未来は変わってしまうだろう。キャスリンが過ごしてきた人生ではなくなってしまうかもしれない。
とにかく今はできることをしたい。父のスコットは、すべてをわかっていてキャサリンがしたいことを応援してくれるようだ。
とりあえずキャスリンは、病気ということにして部屋にこもることにした。身の回りの世話はバーバラに任せることにした。ほかに人を入れないようにする。母のミシェルだけは、そんなことをしたら変な噂が広まってしまうわよと貴族社会ならではの心配をしてくれた。
「お母様、どうせ今のままでは未来は第二王子の婚約者になって、私殺されてしまいますのよ。そんなのつらいわ」
母のミシェルには泣き落とし作戦でごまかした。母にそんなことを言ってる最中、うつむいた父の肩が揺れているのを見て、母にばれないかと心配したが、母のミシェルは父のスコットもつらい思いをしているんだわと思惑通りの解釈をしてくれて事なきを得た。
準備が整ったところで、キャスリンはまずクミールのところに夜転移した。クミールはぐっすり眠っていた。キャスリンはふんと鼻で笑って、魔法で夢の中に入り込む。そして自分に都合のいい夢を見せた。
クミールはなぜか夢の中で高位貴族しか入れないレストランにいた。自分はどうやら貴族になったようだった。
「伯爵様、こちらはいかがですか?」
給仕の女性が二つの皿を差し出した。自分好みのきれいな女性だった。俺が伯爵?といったよな。いい響きだ!あとで名前でも聞くかなと思いながら、料理を見るとどちらもおいしそうな料理だった。
「どちらとは?」
クミールが給仕の女性にそう聞くと、女性は輝かんばかりの笑顔で言った。
「どちらか一方に毒が入っております。でももう一方は安全ですよ」
クミールは女性のいった言葉が一瞬意味がわからなかったが、理解したとたん腹が立った。
「何を言ってるんだ」
クミールは怒って席を立とうとした。しかし体が動かない。女性がもう一度聞く。
「どちらになさいますか?」
「なに言ってるんだ。こんな料理食べられるわけがないだろう!」
そういってはねのけようとしたが、体ばかりか手も足も動かなかった。料理の皿が目の前に二つ並べられる。クミールは思わず給仕の女性を見てびっくりした。先ほどまで美しく見えた女性の顔は骸骨だったのだ。クミールは絶句した。
「これは夢だ。夢だ。早く覚めてくれ!」
それでもクミールの目の前の皿はまだあったし、給仕の骸骨はまだそばにいる。
「早く食べないと腐ってしまいますよ」
骸骨の顔をした給仕はそういった。声は先ほどまでの女性の声でよけい不気味だった。クミールがそのまま呆然として料理の皿を眺めていると、クミールの目の前でそのおいしそうな料理が急激に腐っていった。いろいろな虫がたかり始め、蛆まで湧き出てきて料理の中を踊っている。クミールは体が動かないので、そのまま見つめ続けなくてはいけなかった。
「ご自分で食べれないようでしたら、食べさせて差し上げましょう」
給仕の骸骨はそういってテーブルに並べてあったスプーンを骸骨の指でとり、腐った蛆だらけの料理をすくいクミールに差し出してきた。
「やめてくれ~」
もう少しで料理が口のところにつくというところでクミールは目が覚めた。寝汗をびっしりとかいていた。その日、調子は悪いままでいつものように愛想よくできずに情報収集もできなかった。
ただ夢はその日だけではなかった。眠るたびに同じ夢をいつも見るようになった。そしていつももう少しでスプーンが口にあたるというところで目が覚めるのだ。
それが続き、クミールは次第に体の調子が悪くなっていった。まず食事がとれなくなったのだ。料理を見ると、夢を思い出し食事が入らない。ついには料理を見ただけで気持ち悪くなってしまうようになった。
そうするともう人に愛想は言えない。人の手助けをするどころか、自分の体もままならなくなってきた。げっそりして顔つきまで変わってきて、いままでクミールを見るやすぐに寄ってきた女たちが遠巻きにするようになった。
「クミール最近変じゃない?」
「そうね。変な病気なんじゃないの?」
「いや~怖~い。うつされたくないわね」
クミールがいる前で、そんな言葉まで飛びだす始末だった。
そんな中、いつものように厨房の人がクミールを呼んだ。
「悪いが荷物頼むよ」
クミールは返事もできないままそちらに向かった。この前クミールとしゃべっていた男は、クミールの顔を見るなり驚いた。
「クミール、どうした?顔色ずいぶん悪いぞ。変な病気じゃないだろうな。俺にうつすなよ」
そういうなりとっとと荷物を運んで行ってしまった。クミールはといえばもう動きたくないほど体が衰弱しており、倉庫を出て自分の部屋に戻っていった。まだ自分の仕事時間なのだが、どうしようもなく体がだるい。クミールはばたりと倒れた。そしてそのまま呼吸を止めたのだった。
一方クミールの仲間の行商に扮した男は、先ほどのクミールの様子にびっくりしていたが、いいことを思い付いたとばかりにニヤッとした。
ークミールの奴、死相がでていたぜ。あれはもうながくないな。でもこれは使えるかもしれないぜ。さっそくハビセル侯爵様に報告しなくては。ダイモック公爵家の下男が変な病気で亡くなったと噂を流せばいいかもな。
行商の男はクミールの心配より、自分の手柄になるかもしれないことにワクワクして次の屋敷に荷物を卸しに行くことにしたのだった。
こちらでのいろいろをかたずけたら、スティーブと過去へ飛ぶつもりだ。そうなったらどうやっても未来は変わってしまうだろう。キャスリンが過ごしてきた人生ではなくなってしまうかもしれない。
とにかく今はできることをしたい。父のスコットは、すべてをわかっていてキャサリンがしたいことを応援してくれるようだ。
とりあえずキャスリンは、病気ということにして部屋にこもることにした。身の回りの世話はバーバラに任せることにした。ほかに人を入れないようにする。母のミシェルだけは、そんなことをしたら変な噂が広まってしまうわよと貴族社会ならではの心配をしてくれた。
「お母様、どうせ今のままでは未来は第二王子の婚約者になって、私殺されてしまいますのよ。そんなのつらいわ」
母のミシェルには泣き落とし作戦でごまかした。母にそんなことを言ってる最中、うつむいた父の肩が揺れているのを見て、母にばれないかと心配したが、母のミシェルは父のスコットもつらい思いをしているんだわと思惑通りの解釈をしてくれて事なきを得た。
準備が整ったところで、キャスリンはまずクミールのところに夜転移した。クミールはぐっすり眠っていた。キャスリンはふんと鼻で笑って、魔法で夢の中に入り込む。そして自分に都合のいい夢を見せた。
クミールはなぜか夢の中で高位貴族しか入れないレストランにいた。自分はどうやら貴族になったようだった。
「伯爵様、こちらはいかがですか?」
給仕の女性が二つの皿を差し出した。自分好みのきれいな女性だった。俺が伯爵?といったよな。いい響きだ!あとで名前でも聞くかなと思いながら、料理を見るとどちらもおいしそうな料理だった。
「どちらとは?」
クミールが給仕の女性にそう聞くと、女性は輝かんばかりの笑顔で言った。
「どちらか一方に毒が入っております。でももう一方は安全ですよ」
クミールは女性のいった言葉が一瞬意味がわからなかったが、理解したとたん腹が立った。
「何を言ってるんだ」
クミールは怒って席を立とうとした。しかし体が動かない。女性がもう一度聞く。
「どちらになさいますか?」
「なに言ってるんだ。こんな料理食べられるわけがないだろう!」
そういってはねのけようとしたが、体ばかりか手も足も動かなかった。料理の皿が目の前に二つ並べられる。クミールは思わず給仕の女性を見てびっくりした。先ほどまで美しく見えた女性の顔は骸骨だったのだ。クミールは絶句した。
「これは夢だ。夢だ。早く覚めてくれ!」
それでもクミールの目の前の皿はまだあったし、給仕の骸骨はまだそばにいる。
「早く食べないと腐ってしまいますよ」
骸骨の顔をした給仕はそういった。声は先ほどまでの女性の声でよけい不気味だった。クミールがそのまま呆然として料理の皿を眺めていると、クミールの目の前でそのおいしそうな料理が急激に腐っていった。いろいろな虫がたかり始め、蛆まで湧き出てきて料理の中を踊っている。クミールは体が動かないので、そのまま見つめ続けなくてはいけなかった。
「ご自分で食べれないようでしたら、食べさせて差し上げましょう」
給仕の骸骨はそういってテーブルに並べてあったスプーンを骸骨の指でとり、腐った蛆だらけの料理をすくいクミールに差し出してきた。
「やめてくれ~」
もう少しで料理が口のところにつくというところでクミールは目が覚めた。寝汗をびっしりとかいていた。その日、調子は悪いままでいつものように愛想よくできずに情報収集もできなかった。
ただ夢はその日だけではなかった。眠るたびに同じ夢をいつも見るようになった。そしていつももう少しでスプーンが口にあたるというところで目が覚めるのだ。
それが続き、クミールは次第に体の調子が悪くなっていった。まず食事がとれなくなったのだ。料理を見ると、夢を思い出し食事が入らない。ついには料理を見ただけで気持ち悪くなってしまうようになった。
そうするともう人に愛想は言えない。人の手助けをするどころか、自分の体もままならなくなってきた。げっそりして顔つきまで変わってきて、いままでクミールを見るやすぐに寄ってきた女たちが遠巻きにするようになった。
「クミール最近変じゃない?」
「そうね。変な病気なんじゃないの?」
「いや~怖~い。うつされたくないわね」
クミールがいる前で、そんな言葉まで飛びだす始末だった。
そんな中、いつものように厨房の人がクミールを呼んだ。
「悪いが荷物頼むよ」
クミールは返事もできないままそちらに向かった。この前クミールとしゃべっていた男は、クミールの顔を見るなり驚いた。
「クミール、どうした?顔色ずいぶん悪いぞ。変な病気じゃないだろうな。俺にうつすなよ」
そういうなりとっとと荷物を運んで行ってしまった。クミールはといえばもう動きたくないほど体が衰弱しており、倉庫を出て自分の部屋に戻っていった。まだ自分の仕事時間なのだが、どうしようもなく体がだるい。クミールはばたりと倒れた。そしてそのまま呼吸を止めたのだった。
一方クミールの仲間の行商に扮した男は、先ほどのクミールの様子にびっくりしていたが、いいことを思い付いたとばかりにニヤッとした。
ークミールの奴、死相がでていたぜ。あれはもうながくないな。でもこれは使えるかもしれないぜ。さっそくハビセル侯爵様に報告しなくては。ダイモック公爵家の下男が変な病気で亡くなったと噂を流せばいいかもな。
行商の男はクミールの心配より、自分の手柄になるかもしれないことにワクワクして次の屋敷に荷物を卸しに行くことにしたのだった。
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