なぜか水に好かれてしまいました

にいるず

文字の大きさ
6 / 80

5 気分は孫悟空?

散歩から戻った敦子は、まだドキドキしていた。
さっきの出来事が、頭から離れないのだ。

そのままの気持ちで、洗面所でうがいをしようとして、蛇口から水を出したその時、水が玉のようになって敦子の周りをまわりだした。

敦子は、急いで水を止めた。

玉は、この前のように集まって、球となって敦子の前を浮かんでいる。

「この球って移動できるのかなあ。 」

敦子は、意識して、キッチンの流しをイメージした。

するとどうだろう。

球は、自分の意思があるかのように、ゆらゆらと洗面所を出て、キッチンのほうに行くではないか。
敦子もあわててついていく。

キッチンに行くと球は、待っていて敦子の周りをまた回り始めた。
敦子が、両手を差し出すと、球は手の上にのった。
敦子が、静かに流しにおくと、球ははじけて水になって流れていった。

「 またできるようになった。なんで? 」

キッチンの洗い桶に水を張った。
今度は、池で見た時のように、細長くなるか実験してみた。
敦子は、心の中で、思い描くと、桶の中の水がどんどん長く縄のようになっていき、敦子の周りを回り始めた。
そして、それはどんどん増えていった。
敦子が、周りを見ると、滝の内側から外を見るような、まるで水のトンネルの中にいるように見えた。

「 きれい! 」

どれくらい時間が、たっただろうか。あまりの美しさに、つい見とれてしまっていた。

敦子がふと我にかえると、縄のような水は、どんどん桶の中に戻っていく。
気が付けば、すべての水が桶の中に戻っていた。

「 これってすごいよね~。 」

ひとり感動していたが、時間を見れば、またもや夕方になっている。



敦子は、気を取り直し、明日から着ていく洋服を、ワードローブから選び始めた。

敦子は、月曜から金曜までの着ていく洋服を選んでおくのだ。
会社に入ったばかりのころは、朝着ていく洋服を選んでいたばかりに、遅刻しそうになったこともあった。
その時の教訓だ。
まあ敦子が持っている洋服は、どれも似たような色、紺とかグレーとか白とか黒など、華やかさに欠ける色が多い。
キレイめな色の服は、あまり持っていないのだ。

コスパと機能性が一番。洋服や靴などを買う時に、敦子が心がけている言葉だ。

会社に入ったばかりのころは、目についたものを買っていたのだが、流行りがあったり、実際自分が着てみると、なんとなく残念だったりして、今の心境にいきついた。

今までは、それで満足していたのだが、今日は、なぜか月曜から着ていくため選んでいる洋服に、少し物足りなく感じた。
もっちょっと別な色もいいかも。
敦子は、そう思ってしまった。
もしかしたら、非日常体験をしたからなのかなあ、そう思いながら、いつもの洋服を選んだ敦子だった。




簡単に夕食をとり、お風呂に入る。
お風呂で、これまた実験したいことがあった。

「 水の上に立てるかなあ。ついでに移動できたらいいなあ。 」

そう思うとたまらずに、今日も勇んでお風呂に入った。

体や髪を洗うのもそこそこに、バスタブの前で意識を集中した。
バスタブの中に足を入れる。

「 あ______、立った_________!!! 」

思わずガッツポーズをしてしまった。

水の上に立っている。今度は歩いてみた。水の上を歩ける。
小さいバスタブの上を何往復もしてみた。ジャンプもしてみる。

「 そうだ!これはできるかなあ。 」

敦子は、バスタブから出て、また意識を集中した。

今度は、バスタブの水から玉が出てきて、敦子の目の前で集まって球になった。
大きな球になった水は、今度は、ボードのようにぺたんこになって、敦子の足元にいった。


「 いいねえ、孫悟空の金斗雲みたい! 」

われながらイメージ通りにできて、気を良くした敦子は、その金斗雲もどきに、恐る恐る乗ってみた。

敦子がそれに乘ると、それはゆっくりと上に上がっていく。
そしてお風呂場の天井に手がつくまで、上がっていった。

「 なにこれっ。すごくない! 」

敦子は、興奮して何回も浮いたり降りたりして、楽しんだ。

繰り返すことに飽きて、気持ちが落ち着いた時には、体が冷たくなっていた。
仕方なく、もう一度お風呂に入りなおした。


寝るときには、あの金斗雲もどきで、やってみたいことが、いろいろ思い浮かんだ。
 
「 金斗雲もどきに乗って、空に浮かんでみたいなあ。 」

「 いろいろなところに行きたいなあ。夜景見たいかも。あ~、あのテーマパークの夜景もいいかも。
ハワイの夕日や、ニューヨークの夜景なんかもみたいなあ。 」

あまりにいろいろ想像しすぎて、眠れなくなってしまい、寝たのは、明け方だった。





おかげで、次の日月曜日の朝は、寝過ごしてしまった。
急いで、朝食用のパンをかじり、身支度して、玄関の扉を開けた。


   ガタ______________ン

すぐお隣のお部屋から、大きな物音がした、気がした。
お隣のドアを開ける音がする。

敦子の部屋は、お隣を通らなくてはいけないので、少し会釈しながら通り過ぎようとしたとき、挨拶された。


「 おはようございます。」


聞こえたのは、涼やかな声だった。

いい声だなあと思いながら、敦子は声のほうを見て、固まった。



声の主は、あの『 エレベーターの貴公子 』さんだった。












感想 2

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在 唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話 中山加恋(20歳) 二十歳でトオルの妻になる 何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛 中山トオル(32歳) 17歳の加恋に一目ぼれ 加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する 加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる 会社では群を抜くほどの超エリートが、 愛してやまない加恋ちゃんに 振り回されたり落ち込まされたり… そんなイケメンエリートの ちょっと切なくて笑えるお話

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。