悪役令嬢(未遂)による魔法ありきの防災訓練。

Taka多可 (お米)

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1章、お嬢様になっちゃった?

10.料理長の思い出③

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ここから先は、お嬢とセンセーから聞いた武勇伝だ。

研究所へ突撃したお嬢は、センセーに暑さを打破する方法をひらめいたからと協力を要請。
センセーはノリノリで承諾し、研究員たちとともにお嬢のひらめきをあーでもないこーでもないとまとめ上げ、設計図を作成する。
そう、お嬢のひらめきは、風魔法と水魔法だけではなく、火の魔法も使って、冷風を作ることだった。
冷たくする魔法がないのなら、作ればいい。そう言い放ったそうだ。

魔法とは別に、魔法技術というものがある。

魔法技術の発達によって、例えば火の魔法が使えなくても、魔法技術が込められた道具を使えばコンロに火をつけられるし暖炉に着火ができる。
複数の魔法を組み合わせる技術はあったが、お嬢の発想はそこで止まっていなかった。
魔法を使って、現象を打ち消す方法はないのか、を考えたそうだ。
水をかければ火が消える。
壁を作れば風を遮れる。
窓がない室内に光は届かない。
涼しくする方法、冷たくする方法、水はどうしたら凍らせられるか。
彼らが見つけた答えは「物体から熱を奪う」ことだった。

火の魔法を込め、熱を放出するように作られた乾燥機という魔道具に書かれた公式を、あえて逆転させて書き直した状態で発動させることにより、火の魔法は熱を発するのではなく熱を奪うように作動することを突き止めた。
ところが物体から奪った熱はそのままでは一気に噴出されてしまい、お嬢とセンセーたちは危うく大やけどを負うところだったらしく、旦那様から特大の雷を食らったが、それでもお嬢はあきらめない。
熱を奪った物体(洗濯物)は、きちんと冷えていた。
奪った熱を、安全に屋外へ放出する方法があれば、室内を冷やせることは間違いなかった。
風の魔法で空気を吸い上げ、火の魔法で空気から熱を奪い、水の魔法の中に入れて温水にして生活用水に使うか風の魔法で屋外へ放出、そうして冷えた空気を室内へ風の魔法で送りこむ。
二年がかりの大仕事を、彼らはやり遂げた。
冷たい空気を吐き出す冷風機、食品を冷やして保管する保冷庫、それをさらに強化させ水を凍らせることに成功した凍結庫。
キンキンに冷えたミルクと、冷えた果汁をかき混ぜながら凍らせてを繰り返して完成したシャーベット。
そして、働く人々の休憩所に設けられた冷風機と冷たい飲み物を低価格で提供する大型ポット装置、冷たい水が霧のように降り注ぎ道行く人々にやさしく降り注ぐ霧吹き装置。

氷の魔法使い誕生の瞬間だった。

温かいスープやシチューしかなかった時代は終わった。
冷たいスープ、冷えた麺類、冷えた汁と氷を乗せた雑炊。
我々料理人は切磋琢磨し、コンテストまで開かれるほど料理人はあこがれられる職業になった。
料理の幅がどんどん広がっていく。世界は広がっていく。

本当に、本当にお嬢が食いしん坊でよかった。
氷の魔法技術が使われた装置には、必ず組み込むよう定められた公式がある。
【命を奪ってはならない・危険があれば緊急停止せよ】
氷が、使い方を誤れば人の命を奪うことを、お嬢は知っていたって事だ。
あれから三年、様々生みだされる装置によって、人命が奪われた事件は一件もない。
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