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第四章 「恋するフォーチュンクッキー」
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「センセ。こんなとこにいた」
三十分くらい経っただろうか。
入り口を出たところで座り込んでいた原田のところに、愛里一人がやってくる。
「何してんの?」
「だから僕は人混みが駄目なんだ」
その言葉ではどうもピンとこないらしい。
「女性が多い」
「あー」
やっと沖愛里は原田の症状を思い出してくれたらしい。
「ごめんね。一緒に暮らしてて平気っぽいからすっかり忘れちゃってた」
「あのな」
もう文句を言う気力もない。
そもそも人を避けて生活するのに慣れ過ぎた所為か、男女関係なく、人が多いというだけで三半規管が狂ってしまう。原田は如何に自分が社会生活をするのに向いていないかを、こうして何度も自覚してしまうのだ。
「愛里ー、先生ー」
今度は桜庭美樹だった。
小走りに原田たちのところへとやってくる。
「どうしたの? 先生気分が悪いの?」
「例のヤツだよ」
愛里がそう言うと、美樹はハンカチを取り出してそれを原田に渡してくれる。
「あの、そんなに酷いなんて、全然思わなかったんです。愛里が水族館なら大丈夫だよって……もう愛里。だから言ったでしょ。もっとゆっくりできるような場所の方がいいって」
「こんなに人が多いって思わなかったの。なんで平日の昼間にペンギンやクラゲ見に来るのよ。ねえ」
愛里たちも他人のことは言えないだろう、と思ったが、それを口にする元気は原田にはない。
「とにかく、フードコートにでも行って少し休もうよ」
美樹の提案に、原田は力なく右手を挙げて賛成した。
「話が違う……」
席取りを任された原田は、次々にテーブルを埋めていく他人に戦々恐々としながらも、やっと戻ってきた愛里と美樹がそれぞれ手にたこ焼きとソフトクリームを持っている姿を見て、僅かだか胸を撫で下ろした。
「なんかあっという間に埋まっちゃったね」
四人席の対面に愛里と美樹が座る。原田の隣には彼女たちのバッグが置いてあったが、最初にそれを退けて愛里が隣席になろうとしたので、これ以上自分に迷惑を掛けないでくれと懇願して諦めてもらった。
なんだか普段よりも数字で二十くらいは血圧が上がってそうだ。
「先生。どうですか?」
「ああ、良い冷たさだ」
冬場にソフトクリームというのも案外悪くない。
桜庭美樹も原田と同じように舌先でぺろぺろとソフトクリームを舐めていた。その彼女と目が合って微笑されると、急に恥ずかしくなって俯いてしまう。
「ねえセンセ。こっちは食べないの?」
「冷たいもの食べてる時に熱いものは勘弁だよ、愛里君」
「そう」
何故か彼女は膨れ面になって湯気を上げるたこ焼きを次々と口に突っ込んでいく。
どうも原田がデートを楽しめていないのが気に食わない様子だ。
ただ当初からこんな状態になることを、原田は想定していた。そもそも一人で出歩くことすら気が重かったのだ。その上村瀬ナツコ以外の女性、それもこんなに若い子たちと一緒にデートスポットを出歩くなど、まだまだ自分には荷が重かったのだと、今のところ痛感している。
「やっぱお姉ちゃんの言ってた通りになった」
そう言って、愛里はたこ焼きで膨らんだ口のまま原田を睨みつけた。
三十分くらい経っただろうか。
入り口を出たところで座り込んでいた原田のところに、愛里一人がやってくる。
「何してんの?」
「だから僕は人混みが駄目なんだ」
その言葉ではどうもピンとこないらしい。
「女性が多い」
「あー」
やっと沖愛里は原田の症状を思い出してくれたらしい。
「ごめんね。一緒に暮らしてて平気っぽいからすっかり忘れちゃってた」
「あのな」
もう文句を言う気力もない。
そもそも人を避けて生活するのに慣れ過ぎた所為か、男女関係なく、人が多いというだけで三半規管が狂ってしまう。原田は如何に自分が社会生活をするのに向いていないかを、こうして何度も自覚してしまうのだ。
「愛里ー、先生ー」
今度は桜庭美樹だった。
小走りに原田たちのところへとやってくる。
「どうしたの? 先生気分が悪いの?」
「例のヤツだよ」
愛里がそう言うと、美樹はハンカチを取り出してそれを原田に渡してくれる。
「あの、そんなに酷いなんて、全然思わなかったんです。愛里が水族館なら大丈夫だよって……もう愛里。だから言ったでしょ。もっとゆっくりできるような場所の方がいいって」
「こんなに人が多いって思わなかったの。なんで平日の昼間にペンギンやクラゲ見に来るのよ。ねえ」
愛里たちも他人のことは言えないだろう、と思ったが、それを口にする元気は原田にはない。
「とにかく、フードコートにでも行って少し休もうよ」
美樹の提案に、原田は力なく右手を挙げて賛成した。
「話が違う……」
席取りを任された原田は、次々にテーブルを埋めていく他人に戦々恐々としながらも、やっと戻ってきた愛里と美樹がそれぞれ手にたこ焼きとソフトクリームを持っている姿を見て、僅かだか胸を撫で下ろした。
「なんかあっという間に埋まっちゃったね」
四人席の対面に愛里と美樹が座る。原田の隣には彼女たちのバッグが置いてあったが、最初にそれを退けて愛里が隣席になろうとしたので、これ以上自分に迷惑を掛けないでくれと懇願して諦めてもらった。
なんだか普段よりも数字で二十くらいは血圧が上がってそうだ。
「先生。どうですか?」
「ああ、良い冷たさだ」
冬場にソフトクリームというのも案外悪くない。
桜庭美樹も原田と同じように舌先でぺろぺろとソフトクリームを舐めていた。その彼女と目が合って微笑されると、急に恥ずかしくなって俯いてしまう。
「ねえセンセ。こっちは食べないの?」
「冷たいもの食べてる時に熱いものは勘弁だよ、愛里君」
「そう」
何故か彼女は膨れ面になって湯気を上げるたこ焼きを次々と口に突っ込んでいく。
どうも原田がデートを楽しめていないのが気に食わない様子だ。
ただ当初からこんな状態になることを、原田は想定していた。そもそも一人で出歩くことすら気が重かったのだ。その上村瀬ナツコ以外の女性、それもこんなに若い子たちと一緒にデートスポットを出歩くなど、まだまだ自分には荷が重かったのだと、今のところ痛感している。
「やっぱお姉ちゃんの言ってた通りになった」
そう言って、愛里はたこ焼きで膨らんだ口のまま原田を睨みつけた。
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