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第十章 「恋」
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タクシーでマンション前まで戻ってくると、原田貴明は支払いを済ませようとして財布が入っていないことに気づいた。
「あの……取ってくるんで待っててもらえますか?」
どんな顔をされるだろう。
不安な気持ちで運転席を見やると、白髪の運転手は真っ白な手袋の指を原田の足元に向ける。見ると自分の長財布が落ちていた。
「すみません……」
「いいんですよ。何かお急ぎなんでしょう?」
病院からわずか十分ほどの時間で気取られるほど、今の自分は焦っているのだろうか。
「これでお願いします」
五千円札で支払いを済まし、お釣りと共に、
「そういう時は足元に気をつけて下さいよ」
よく分からない人生の助言のようなものを貰った。
玄関に飛び込み、電子ロックを解除する。
エレベータで時々見る同じマンションの住人と一緒になったが、会釈を交わしただけで特に挨拶もしなかった。
まだ夕闇は迫ってこない。
それでも時間がないとしか感じられなかった。
鍵を差し込んでドアを開けると、靴も揃えないまま脱ぎ捨て、リビングに急ぐ。
明かりを点け、上着を脱ぐよりも早くパソコンを起動させる。
それから。
「とにかくコーヒーだ」
「あの……取ってくるんで待っててもらえますか?」
どんな顔をされるだろう。
不安な気持ちで運転席を見やると、白髪の運転手は真っ白な手袋の指を原田の足元に向ける。見ると自分の長財布が落ちていた。
「すみません……」
「いいんですよ。何かお急ぎなんでしょう?」
病院からわずか十分ほどの時間で気取られるほど、今の自分は焦っているのだろうか。
「これでお願いします」
五千円札で支払いを済まし、お釣りと共に、
「そういう時は足元に気をつけて下さいよ」
よく分からない人生の助言のようなものを貰った。
玄関に飛び込み、電子ロックを解除する。
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それから。
「とにかくコーヒーだ」
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