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第十章 「恋」
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小説恋愛教室は、准教授の室尾久嗣とその大学の生徒である優木美郷の物語、として表面上は描かれているが、実は原田貴明の告白に対する、沖優里からの長い長い返答の文章だった。
そのことに気づけたのは沖愛里が言っていたと村瀬ナツコから聞いた「優里は探し物をしていた」という謎の伝言だ。
物語全体を優里の物語として考え直す、という観点は事前に気づいていたけれど、てっきり彼女と彼女の父親の物語として読み直せばいいのだとばかり思い込んでいたから、大事なことを見落としていたのだ。
事実はとても単純だった。
原田貴明は卒業の日、彼女に告白をした。
それに対して彼女は彼に「小説を書いてみないか」と尋ねてきた。
その返答に完全にはぐらかされたのだとばかり思ってしまい、その言葉がまさか原田に対する返事の一部になっていたとは考えなかったのだ。
というか、そんな宇宙経由で東京駅から有楽町に向かう、みたいな常人には理解し難いことを咄嗟にやってしまうのが、沖優里という人間なのだ。そのことに当時の原田も、今の原田も、おそらく五十年後の原田ですらも、思い至れないだろう。
主人公の室尾は沖優里であり、生徒として色々なことを教わることになる優木美郷こそが、原田貴明だったのだ。
優里のプロットでは最終的に病気であることを美郷に知られた室尾は何も言わずに関係を絶ち、彼女の前から永遠に姿を消してしまう。
これは沖優里が原田の気持ちに対して何も答えることなく去ってしまおうとしているのと同じなのだ。
ただ、沖優里は彼女の気持ちの仔細を恋愛教室という小説に託している。
作中では内容こそ出てこないが、優木美郷は同じように室尾が彼の研究室に残したその研究論文を紐解きながら、彼がどう考えていたのかを探ろうとする部分が登場する。けれど美郷はそこに書かれたことを半分以上理解出来ないまま、悲しみにくれて街中を歩き彷徨う。
一月、三ヶ月、半年と時間だけが経ち、やがて美郷は街中ですれ違っても彼に気づくことがなくなってしまっている、というのが優里が提示した作品の答えであり、彼女の原田に対する返答なのだ。
――忘れて下さい。
ただ、それだけのことを、これだけ手間を掛けて彼女は原田に伝えようとしていたのだ。
それを原田は書き換えた。
失意のまま、美郷は街で彼とすれ違う。
横断歩道を渡ってしまった彼に対して「好き」でも「愛している」でもなく、ある言葉だけを叫ぶ。
それこそが、原田の彼女に対する気持ちだった。
そのことに気づけたのは沖愛里が言っていたと村瀬ナツコから聞いた「優里は探し物をしていた」という謎の伝言だ。
物語全体を優里の物語として考え直す、という観点は事前に気づいていたけれど、てっきり彼女と彼女の父親の物語として読み直せばいいのだとばかり思い込んでいたから、大事なことを見落としていたのだ。
事実はとても単純だった。
原田貴明は卒業の日、彼女に告白をした。
それに対して彼女は彼に「小説を書いてみないか」と尋ねてきた。
その返答に完全にはぐらかされたのだとばかり思ってしまい、その言葉がまさか原田に対する返事の一部になっていたとは考えなかったのだ。
というか、そんな宇宙経由で東京駅から有楽町に向かう、みたいな常人には理解し難いことを咄嗟にやってしまうのが、沖優里という人間なのだ。そのことに当時の原田も、今の原田も、おそらく五十年後の原田ですらも、思い至れないだろう。
主人公の室尾は沖優里であり、生徒として色々なことを教わることになる優木美郷こそが、原田貴明だったのだ。
優里のプロットでは最終的に病気であることを美郷に知られた室尾は何も言わずに関係を絶ち、彼女の前から永遠に姿を消してしまう。
これは沖優里が原田の気持ちに対して何も答えることなく去ってしまおうとしているのと同じなのだ。
ただ、沖優里は彼女の気持ちの仔細を恋愛教室という小説に託している。
作中では内容こそ出てこないが、優木美郷は同じように室尾が彼の研究室に残したその研究論文を紐解きながら、彼がどう考えていたのかを探ろうとする部分が登場する。けれど美郷はそこに書かれたことを半分以上理解出来ないまま、悲しみにくれて街中を歩き彷徨う。
一月、三ヶ月、半年と時間だけが経ち、やがて美郷は街中ですれ違っても彼に気づくことがなくなってしまっている、というのが優里が提示した作品の答えであり、彼女の原田に対する返答なのだ。
――忘れて下さい。
ただ、それだけのことを、これだけ手間を掛けて彼女は原田に伝えようとしていたのだ。
それを原田は書き換えた。
失意のまま、美郷は街で彼とすれ違う。
横断歩道を渡ってしまった彼に対して「好き」でも「愛している」でもなく、ある言葉だけを叫ぶ。
それこそが、原田の彼女に対する気持ちだった。
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