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リリーシェ王国・婚約編
波乱の提案
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「本気、で言ってるの?」
冗談? と聞き返すと真面目な顔で首を振られた。
何年も掛けて身につけた淑女教育が全て何もなかったかのように、顔が熱くなっていく。
……どうしよう。恋愛的なことが、あの小さい頃からの婚約が原因で今まで一切なかったせいで耐性がそこまでないからだろうか。胸が高鳴って仕方ない。
いやいや、向こうは政略かもしれないし、打算的なことに違いないし、と自分に言い聞かせるけれど、顔の熱は引いてくれない。
元々トールのことが嫌いじゃなくて、むしろ好感が高いせいも相まって。
「別室で話そうか。まだ時間は……あるね」
「……分かった」
次の授業の教室へ向かっていたところを、方向転換して談話室の方へ向かう。
「手前の部屋で大丈夫?」
「ぁ、ええ。勿論大丈夫よ」
プレートをひっくり返して空室から使用中に変えてから、彼は中に入る。ちょいちょい、と手招きされて私もそれに続いた。
「座ろうか」
向かい合って、座る。ぼうっと目の前の彼を見ていると、じっと見つめられて微笑まれたせいで、なんとなく目を合わせるのが恥ずかしくなって私はすっと目線を逸らした。
「じゃあ、話していこうか。まず、一つ秘密にしていたことがあるんだけど、言ってもいいかな?」
「……まぁ、トールが話しても大丈夫なら」
「分かった。……実はね、僕さ、隣国の第三王子なんだよね」
「……え、嘘」
「いや本当。もっと魔法の勉強がしたくて、専門機関のあるこの学院に留学させてもらってたんだ。王子だとバレると命を狙われるリスクがあるから、この国の王以外にはそのことは秘密だったんだ」
王子。……王子だったなんて。確かに所作は驚くほどきちんとしていたし、成績も良かった。そういえばブルーグレーの瞳はフェルシアの王族によく見られる色だったと今更ながら思い出す。
……王族相手に私、今まで軽口叩いたり色々としてたってことよね?
「……今まで大変なご無礼を……」
すっと頭を下げようとすると、慌てて止められる。
「いやいや、王子らしくない僕も悪いし、いいって。むしろこれからも今まで通りでお願いしたいというか。……王子として振る舞って、王子として対応されるのはあんまり好きじゃなくてね……」
明後日の方向を向いて乾いた笑みを浮かべる彼。確かに嫌いそうだな、とついくすくすと笑みがこぼれてしまう。そういえば確か、初めて一緒に組んだときも、堅苦しいのは好きじゃないから敬語をできれば外してほしいって言ってきたような気がする。
「なら、今まで通りに話すわね」
「助かる。……で、ちょっと本題に入るね」
「うん」
彼は襟を正して、向き直る。
「ずっと、好きだったんだ。……一緒に、話すようになってから。真面目で、努力家で、優しい君が素敵だなって思うようになってた」
頬が熱い。真面目な顔を、と思っても、表情は正せても熱くなって赤いであろう頬はどうにもならない。
「真っ赤だよ」
「……うるさい」
「あはは。……で、ね。好きになったのはいいんだけどさ、ある日王太子の婚約者だってことを知っちゃってね。もう諦めようと、思ってたんだ」
ぐっと言葉に詰まって、どうすればいいのか分からなくなり、つい下を向いてしまう。彼はそんな私に優しく微笑みかけて、話を続けた。
「でも、婚約解消したってさっき聞いて。チャンスだって、そう思って。勿論、断ってくれても構わないし、そんなすぐ結論も出ないだろうから、返事は2週間後の卒業パーティのときでいいから」
じゃあ、先に戻ってるね、と彼は部屋を出ていった。
冗談? と聞き返すと真面目な顔で首を振られた。
何年も掛けて身につけた淑女教育が全て何もなかったかのように、顔が熱くなっていく。
……どうしよう。恋愛的なことが、あの小さい頃からの婚約が原因で今まで一切なかったせいで耐性がそこまでないからだろうか。胸が高鳴って仕方ない。
いやいや、向こうは政略かもしれないし、打算的なことに違いないし、と自分に言い聞かせるけれど、顔の熱は引いてくれない。
元々トールのことが嫌いじゃなくて、むしろ好感が高いせいも相まって。
「別室で話そうか。まだ時間は……あるね」
「……分かった」
次の授業の教室へ向かっていたところを、方向転換して談話室の方へ向かう。
「手前の部屋で大丈夫?」
「ぁ、ええ。勿論大丈夫よ」
プレートをひっくり返して空室から使用中に変えてから、彼は中に入る。ちょいちょい、と手招きされて私もそれに続いた。
「座ろうか」
向かい合って、座る。ぼうっと目の前の彼を見ていると、じっと見つめられて微笑まれたせいで、なんとなく目を合わせるのが恥ずかしくなって私はすっと目線を逸らした。
「じゃあ、話していこうか。まず、一つ秘密にしていたことがあるんだけど、言ってもいいかな?」
「……まぁ、トールが話しても大丈夫なら」
「分かった。……実はね、僕さ、隣国の第三王子なんだよね」
「……え、嘘」
「いや本当。もっと魔法の勉強がしたくて、専門機関のあるこの学院に留学させてもらってたんだ。王子だとバレると命を狙われるリスクがあるから、この国の王以外にはそのことは秘密だったんだ」
王子。……王子だったなんて。確かに所作は驚くほどきちんとしていたし、成績も良かった。そういえばブルーグレーの瞳はフェルシアの王族によく見られる色だったと今更ながら思い出す。
……王族相手に私、今まで軽口叩いたり色々としてたってことよね?
「……今まで大変なご無礼を……」
すっと頭を下げようとすると、慌てて止められる。
「いやいや、王子らしくない僕も悪いし、いいって。むしろこれからも今まで通りでお願いしたいというか。……王子として振る舞って、王子として対応されるのはあんまり好きじゃなくてね……」
明後日の方向を向いて乾いた笑みを浮かべる彼。確かに嫌いそうだな、とついくすくすと笑みがこぼれてしまう。そういえば確か、初めて一緒に組んだときも、堅苦しいのは好きじゃないから敬語をできれば外してほしいって言ってきたような気がする。
「なら、今まで通りに話すわね」
「助かる。……で、ちょっと本題に入るね」
「うん」
彼は襟を正して、向き直る。
「ずっと、好きだったんだ。……一緒に、話すようになってから。真面目で、努力家で、優しい君が素敵だなって思うようになってた」
頬が熱い。真面目な顔を、と思っても、表情は正せても熱くなって赤いであろう頬はどうにもならない。
「真っ赤だよ」
「……うるさい」
「あはは。……で、ね。好きになったのはいいんだけどさ、ある日王太子の婚約者だってことを知っちゃってね。もう諦めようと、思ってたんだ」
ぐっと言葉に詰まって、どうすればいいのか分からなくなり、つい下を向いてしまう。彼はそんな私に優しく微笑みかけて、話を続けた。
「でも、婚約解消したってさっき聞いて。チャンスだって、そう思って。勿論、断ってくれても構わないし、そんなすぐ結論も出ないだろうから、返事は2週間後の卒業パーティのときでいいから」
じゃあ、先に戻ってるね、と彼は部屋を出ていった。
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